第五話 遊ぶ範囲と兎達その9

 縁は自分を呼ぶ波動を感じ歩く。


「ここか」


 砦の一番奥にその部屋はあった。

 縁は扉を開けて、中に入ろうとした時、部屋の中から槍が飛んできた!


「ふむ」


 避けもしなかったが槍は刺さらない、槍は地面に落ちる。


「ほう? 地下での茶番を見ていたが……」


 部屋の中には椅子に座り机に足を乗っけている男が居た。

 その男はショートヘアーな赤色の髪で、えらそうな軽装備の鎧に身を包んでいる。


「神を殺す槍でも殺せないか」


 男はニヤリと笑う、縁はそれを見てため息をしながら槍を拾った。


「面白いじゃないか、どいつもこいつも弱い奴らで退屈だったんだよ」


 縁は黙って喋っている男を見ている。


「さっさと本国に帰ってイチャイチャの続きをしたいから、ちゃっちゃと終わらせるか」


 男はいやらしく笑っている。


「人間、我をなめ……」


 縁は一歩前に出たと同時に、男は喋り出した。


「いやいや、神様ぽく振る舞わなくていいよ? あんたの事は調べさせてもらったからさ、この短時間にな」


 男は机にある書類を見た。


「十年前に世界と戦った神なんだろ? はた迷惑な神様って奴だ」


 首を横に振りながら書類を見ている。


「命乞いするならいまのうちだぞ?」


 男は縁を見た。


「ま、世の中に迷惑かける神様なんざ居なくなった方がいいか」


 縁はその言葉を聞いて震えだした。


「お前、今なんて?」


 拾った槍を男に投げた!


「ハッ! 少々煽られたくらいでぷるぷる震えちゃってさ」


 男は机を叩きながら手を叩いている、縁が投げた槍は男に当たらずに何かに弾かれた。


「……」


 縁は深呼吸した。


「無理しちゃってさ、もう一回言ってやろうか? 世の中に迷惑かける神様はいらないからさ!死んでしまえよ!」


 縁はゆっくりと男に向かって歩き始めた。


「あらあら、怒った? 事実だろ? 人様に迷惑かけている神様は死んだ方がいい」


 男は足を机に乗っけてるのを止めて、立ち上がった。


「……お前を幸せにしてやるよ」


 縁は最高の笑顔を男にした。


「はぁ!? 何言ってんだコイツ、殺してやるじゃなく『幸せ』にしてやるだって!」


 男は手を叩いて大笑いしている。


「アーグルア・レトン・ゼーブ、覚悟しろ」


「かっこいいな神様、フルネームで言ってくれるとはさ」


 アーグルアはニヤニヤと笑っている。


「命乞いしないなら死ね!」


 縁に対して右手を突き出した。


「来たれ消滅の光よ! イレイザー・シャイン!」


 しかし何もおこらなかった。


「ほう? 何をしたか知らないが俺の魔法詠唱を止めたか」


 アーグルアはニヤリと笑いながら、袖に隠していたナイフで縁の腹を刺そうとした。

 しかし、パキッという音と共にナイフは壊れた。


「どうなっているんだ?奴のステータスは俺より下のはずだ」


 縁をジロジロ見ているアーグルア。


「……お前なにいってんの?」


「ふん、神様のくせに知らないのか? 相手の実力を数値化するスキルがある事をな!」


 アーグルアは剣を素早く抜いて縁を斬るが、縁に怪我を負わせる事も衣服も斬る事も出来なかった。


「お前動くな」


 縁はアーグルアの肩に手を置いた。


「身体が動かない!? だがな……」


 アーグルアが何か言いそうになった時、縁の鞄が震えだした。


『手紙だよ、手紙だ手紙だ手紙よ、博識いずみから手紙だよ』


 機械で合成されたような声が鞄から発せられる。


「はぁ……」


 縁は嫌そうな顔をしながら鞄を開けた、すると手紙が飛び出してきて、部屋中を駆け巡った後縁に頭上で止まった。

 封筒がひとりでに開き、中から手紙が出てくる、手紙は二つ折りになっていて、手紙は光と共に開いた。

 魔法陣が浮かび上がって、二等親にデフォルメされた女性が現れた。


「はいはーい! こんにちは! こんにちは! 今日はお元気でしょうか? が短くなった言葉のこんにちは!」


 デフォルメされた女性の姿は茶髪のショートヘアーでメガネをしている、スーツ姿の一言で言えばOLである。


「手紙に書かれた魔法陣を通じて、デフォルメされた私を映像として送ってマース!」


 ただデフォルメキャラクターらしくほほを染めていた。


「茶番と余興でおなじみで! お節介と押し付けがましい私は縁さんの親友で……」


 どこからともなく音楽が聞こえてきた。


「説明と解説の加護を持っている……」


 いずみはしゃがみだした。


「可愛い可愛い私は! 博識いずみです!」


 いずみはジャンプをした、それと同時にクラッカーやら祝福を感じさせるような効果音が響いた。

 縁はそれを見てため息をしアーグルアは空気に飲まれている。


「あらあら、メガネ、メガネは何処ですか?」


 ジャンプしてメガネが鼻と口の間までズレたようだ。


「おや、こんな所に! シャキン!」


 いずみはメガネのズレを直す。


「いずみ、なんの用だ」


「あらあらあら、縁さんが本気だしてますな!」


 いずみは魔法の絨毯のように手紙を操り、縁の目線に降りてきた。


「お前なら全て知ってるだろ」


 縁はため息をした。


「確かにそうですが『自分で見て感じないと生きた感想』にならないじゃないですか」


 いずみはデフォルメキャラクターらしく怒りマークと文字でプンプンと出ている。


「援軍か? 随分と可愛いじゃないか」


 アーグルアは動けないが喋れるようだ。


「あ、森田太郎さん、ちょっと黙っててくださいね?」


 いずみはウィンクをした。


「な!?」


 いずみの言葉を聞いてアーグルアはビックリしている。


「はいお口にチャックありがとう!」


 いずみはまたウィンクをした。


「縁さんに時間がかかりましたが、裏がとれた事を話したいと思いまして!」


 いずみは舌を出しながら、可愛いと思われるポーズをしている。


「わかった、聞こうか」


 縁はいずみを見た。

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