第五話 遊ぶ範囲と兎達その5

「おじゃまいたしますわ」


 絆は砦の入り口を蹴っ飛ばして入ってきた。


「な、なんだ!?」


「敵襲か!」


「なんかきたー!」


 中に居た兵士達はビックリして絆を見ている。


「問答無用であなた方にをぶち殺しにきましたわ」


 絆はニヤリと笑った。


「ヘッヘッヘ! 何処の誰か知らねーが俺達を殺しにきただと? やってみろや!」


 好戦的な兵士が絆に銃を向けた。


「あらあら、絶体絶命ですわ」


 絆はクスクス笑っている。


「死ねや!」


 兵士は銃を絆に向けた。


 バン!バン!


 と絆に向かって発砲する。


「ぐっ」


「ひっ!」


 絆に向かっていた弾丸は、何かに吸い寄せられるように曲がり別の兵士に当たって血を流している。


「ばっ、バカな!」


 銃を撃った兵士は再び絆に向かって発砲した。


「あらあら、あなたは運が悪いですわね? この距離で私に当たらないとは」


 絆は楽しそうに笑っていて、弾丸はまた別の兵士に当たる。

 曲がった弾は額に当たり即死だった。

 残っているのは剣を持っている兵士と腰を抜かしている兵士だけだ。


「ば、化け物が!」


 兵士は銃を投げ捨て剣を抜いた。


「私、これでも神ですよ? 半分ですが……」


 絆は自分の発言にハッとし、振り向いて縁を見た。


「お母様の方のおじい様とおばあ様はどちらが神でしたっけ?」


「お爺ちゃんの方だな」


「なるほど」


 絆は再び前を向いた。


「半分以上神ですわね」


 絆はドヤ顔をした。


「ふざけやがって!」


 兵士は絆に対して剣を構えて突撃してくる!


「あなた方が言えまして?」


 絆は深いため息をした。


「死ねや! クソガキ!」


 兵士は絆を切り捨てようと剣を振り上げた!


「自己紹介かしら?」


 絆は鼻で笑う。

 振り上げられた剣は勢いを付けすぎたのか、兵士の手から離れて真上にすっぽぬけた。


「んな!?」


「さようなら」


 絆がそう言うと、剣は真っ直ぐ落ちてきて兵士の背中に刺さった。


「ぐふぁ!?」


 背中から刺さった兵士はその場に血を流して倒れた。


「な、ななな、なんだよ! コイツ!」


 腰を抜かしていた兵士は立ち上がり、剣を抜いたが足が震えていた。


「あら貴方? 逃げたければ逃げればいいじゃないですか?」


 絆はニッコリ微笑んだ。


「ひっ!」


 兵士は剣を投げ捨てて、近くの階段へ走って逃げ出した。

 上り階段を駆け上がる兵士。


「た、助け……うわ!」


 足を踏み外したのか転げ落ちてきた兵士、その辺のテーブルに頭をぶつけて動かなくなった。


「私、立っていただけですのに」


 絆は笑っている。


「絆、遊び終わったか? さっさと地下に行くぞ」


 色鳥はスタスタと奥へと歩いていった。


「誰もいなくなりましたわ」


 絆はスキップで色鳥を追いかけた。


「人間達よ、ここで死んだお前達は幸せだ」


 縁は手を合わせた。

 

「お兄様、お早く……ふふふ」

 

 色鳥を先頭に奥へと歩いて行く3人、厳重な扉を見つける。


「ここが地下に続く扉らしいが」


 色鳥は扉を開けた。


「鍵がかかってなかったな」


 縁は地下へと続く階段を見る。


「さっさと地下へ行きましょう?」


 絆は舞傘で遊んでいる。


「遊んでいたお前が言うな」


 色鳥達は地下へと降りた。


「ひでぇ臭いだ」


 色鳥は舌打ちをした。

 地下は薄暗く、色鳥達からたくさんの牢屋が見える。


「ここに居た者達は何処かに連れて行かれたようだな」


 縁はため息をした。


「って事はここに敵襲が来るとわかっていたのか?」


「どうだろうな、色々な可能性がある」


 縁は辺りを見回した。


「まあ居ないもんはしょうがねーか」


「お兄様、ここに居た人達の不幸は私にお任せ下さいまし」


 絆は縁に優雅に一例する。


「いや、一人まだ残っているようだ」


 縁は奥を睨んだ。


「そうなのか? ここは胸くそ悪い遊びのせいで感覚が可笑しくなりそうだ」


 色鳥はイライラからか右手が震えている。


「こっちだ」


 縁は歩き出し、しばらく歩くと明かりが灯っている牢屋があった。

 色鳥は何かを感じ取ったのかいきなり走り出した。


「おいおいおい、なんだこりゃ!」


 色鳥は牢屋の扉を蹴飛ばして開けて中に入った。

 中に居た人物は人魚だった、右腕が切り落とされている傷跡、身体にも切り傷があり下半身の魚の部分は焼け焦げている。

 その人魚の口元は動いており、まだ生きているようだ。


「あ……」


 人魚の目は虚ろで色鳥をみている。


「わりぃなお嬢さん、ちょっと触れさせてもらうぜ」


 色鳥はそう言って人魚の頭に手を置いた。


「これなら俺に救えるな」


 色鳥は目を閉じた。


「我が守護神であり遊びの神『ことば』よ、我の祈りを聞き届けてまえ」


『おやおや色鳥や、お前から祈りを……』


 どこからともなく、優しいおばあちゃんの声が響いてきた。


『色鳥や! この子はどうしたんだい!?』


「遊ばれたんだよ、婆さんの力で治せるよな?」


 色鳥は人魚から手を離した。


『こんなめんこい子が可哀想に、私に任せなさい』


 人魚が優しい光に包まれる。

 なんと切り落とされた右手が元通りになり、焼け焦げていた箇所も切り傷も無くなり、褐色もよくなる。


「婆さん、怒りを我慢しすぎてよ、ことばもうまくよ、うまく、しゃべれねーわ」


 色鳥は自分の刀を握り締めている。


『色鳥や、禁忌の遊びを許す』


 聞こえている声に力強さが伝わる。


「ああ、ありがとうよ」


 色鳥はため息をした。


『この子はどうするんだい?』


 聞こえる声はまた優しい声になる。


「絆に任せる」


『ああ、絆ちゃんが居るのかい?なら安心だ』


「またな、婆さん」


『はいよ』


 声は聞こえなくなった。


「相変わらず何が起こったのかわからないわね」


 絆は人魚に近寄った。


「説明なら後でいくらでもしてやる」


「楽しみにしていますわ、ではこの人魚さんを安全な場所へ連れて行った後、捕らえられていた人達を探しますわ」


「ああ」


 色鳥は右手を上げた。


「では失礼しますね、色鳥、お兄様」


 絆は優雅にお辞儀をすると、絆と人魚はうっすらと消えていった。


「縁、残りは遊んでもいいやつらか?」


「ふむ、一人違う気配を感じる」


 縁は少し驚いている。


「ほう?」


 色鳥はそれを聞いてニヤリとした。


「近くに人が多い場所に出る扉があるな」


「なるほど、そこで色々と楽しんでると」

 

 色鳥は楽しそうに笑っている。


「俺も遊びに混ぜてもらおうか」


 色鳥と縁は歩き出した。

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