第五話 遊ぶ範囲と兎達その4

「砦周辺に到着っと」


 縁は辺りを見回した。


「随分と高い壁だな」


 国境にそうように高い壁が左右に広がっている。

 縁達の少し前方の壁は綺麗に切り取られていて、向こうへ続く道があった。


「入り口は一カ所なのかね?」


 色鳥も壁を見る。


「ええ、不幸が一カ所に集まっていますわ」


 絆はため息をした。


「とりあえず、関所とやらに行ってみようぜ」


 色鳥を先頭に歩き始めた一行、関所の入り口へ。


「なるほど、内部はこうなってると」


 壁を超えた色鳥は辺りを見回した。

 真っ直ぐに進めば隣の国への道があり左手には見かけは小さい砦があった。

 通り道の真ん中で複数の兵士と家族連れが話をしていて、縁達からは少し距離がある。

 縁達は巡回している兵士の数を確認していた。


 その時!


「ちゃんと通行書を持っているだろ!」


 男性が兵士に抗議をしている。

 

 「縁、行くぞ」


 「ああ!」


 色鳥と縁はそれを見て走り出し、絆は傘を銃のように構えた。

 縁は走っている最中にウサミミカチューシャを外した、ジャージ姿ではなく、神々しい衣装と共に髪の毛が白くなり白いウサミミが頭に生える。

 絆もウサミミを外した、するとゴスロリドレスから高そうな黒い着物になり、白い色の兎のガラがある。

 構えていた紫色のゴスロリに似合いそうな傘は、和風の舞傘へと形を変えた。

 黒い髪の毛に黒いウサミミが生えている絆は赤い目で獲物を狙っている目をしている。


「ヘッヘッヘ、偽物の通行書とは言い度胸じゃねーか」


 兵士は通行書らしき紙を見ている。


「偽物!? いいがかりだ!」


「うるせぇ! ルシファント国に逆らうってか!」


 兵士は男性に剣を突き付けた!


「ひっ!?」


 男性は尻餅をついて倒れた。


「これは身体検査が必要だな、ヒヒヒ」


「へへへ、上玉じゃねーか」


「楽しくなりそうだな」


 近くに居た兵士数人が女性の手を引っ張って何処かに連れて行こうとしている。


「いや! 離して!」


 女性は暴れているが、兵士のに羽交い締めにされそうになっている。


「や、止めろ! お母さんに触るな!」


 女性の近くに居た少年は兵士を突き飛ばそうとするが、体格差があり何もおきない。


「このクソガキが!」


 少年は殴られて少し吹き飛んで、持っていたオルゴールが地面に落ちた。


「!?」


 それを見た縁は兎のように上にではなく、真横にジャンプした。


「さっきからピロピロピロピロうるさかったんだよ!」

 

 少年を突き飛ばした兵士がオルゴールを踏み潰そうとした!


「人間、お前の方が五月蝿いぞ?」


 縁はオルゴールを踏み潰そうとした兵士を、ジャンプした勢いで思いっきり蹴っ飛ばした。


「ぐへぇ!」

 

 空高く飛んでいった兵士は、一筋の流れ星のように何処かへ落ちていった。


「て、てめぇ!な……」


 剣を持った兵士が縁に向かってくるが。


「お前ら弱いな」


 色鳥が背後から忍び寄り首を折った、兵士はなすすべなく死んだ。


「な、な!?」


「こいつら!?」


「て、敵しゅ!?」


 混乱している兵士達に対して絆が構えていた舞傘の先から銃弾が発射される。

 実弾ではなく魔法の弾のようで、混乱している兵士達の頭を狙い撃ち、兵士達は次々と倒れた。


「あらあら、心臓狙ったのに頭に当たってしまいましたね、やっぱり私は運が悪いですわ、これじゃ殺せませんわね」


 絆は舞傘を開いた、傘には二匹の兎のガラがある。


「ひっひ……」


「し、しん……しん」


「あわわ……」


 男性と女性は震えていて、少年もガタガタと震えていた。

 縁は少年が持っていたオルゴールを拾った。


「少年、おじいちゃんとの思い出は大事にするんだぞ?」


 縁はそういうと震えている少年にそっと渡した。


「へ!? な、何でしってるの!?」


 少年はハッとして縁を見た。


「それよりお父さんとお母さんと一緒に、ここを早く離れなさい」


 縁は少年を優しく立たせた。


「う、うん!」


 少年はオルゴールを大事そうに抱いて、両親に駆け寄った。

 縁が少年と話している間に両親は少し落ち着きを取り戻したようだ。

 

「あ、あの……ありがとうございます! 妻と息子を守っていただいて!」


 男性は平謝りのように頭を下げている。


「ここは危なくなるから、さっさと関所を通りな」


 色鳥は欠伸をしている。


「は、はい!」


「ありがとうございます!」

 

 両親は縁達が来た方向へと歩き出した。


「兎のおじちゃん、ありがとう!」


 少年は縁にお辞儀をして両親の元へと走る。

 縁達は家族が壁を超えるまで見ていた。


「さてと」


 縁は砦を見た。


「力を解放したらわかったが……なんだこれは」


「お兄様、これがジャスティスジャッジメントでしてよ」


 絆は砦を睨んでいる。


「あの神がやはり糸を引いているようだが、この中に居る人間は操られているとかじゃなく腐っている奴らだ」


 縁は砦から何かを感じ取っている。


「ああ、俺も感じるぜ胸くそ悪い『遊び』をな」


 色鳥はため息をした。


「……」


 縁はウサミミカチューシャを握った。

 その顔は殺意にみちている。


「お兄様?」


 絆は普段あまり見せない縁の顔に少し驚いている。


「俺も平和ボケしてたな」


 縁はウサミミカチューシャを握って壊した。


「信念どうの言ってられん」


 真っ白の縁の髪の毛や服装に血が滲んでくる。

 縁が出血してるようではなく、まるで返り血を浴びたような姿になった。


「生きる者よ、今幸せを届けようぞ」


 縁はニヤリと笑った。


「お兄様、砦の地下から不幸が溢れ出ています、ますば砦に捕らわれている者を助けましょう」


 絆は舞傘を畳んだ。


「だな、被害者達が居ると俺も遊べないからそうしようぜ」


 色鳥は楽しそうに笑っている。


「お兄様、私が先頭を」


「では参ろうか」


 絆を先頭に縁と色鳥は砦に入っていった。

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