第四話 桜と祝福の鐘その9

 一行は村を出た、軽く舗装された道を歩く。

 車まで来た一行、そこに2人の男達がフォルクの車を見ていた。

 服装を見れば、先ほどの村の村人と解る、車のフロントガラスとワイパーの間に紙切れが挟まっていた。



「ん? あんた達がこの車の持ち主?」


 男の人がフォルク達に気付いた。


「はい、ワシのですじゃ」


「あれ? あんた方は村を救ってくれた……」


「まあ、今回は注意にしとこうぜ?」


「そうだな、助けられたしな」


 男達は何やら相談をしている。


「次から決められた場所に駐車してくださいね?」


「申し訳ない、気をつけますじゃ」


 フォルクは頭を下げる。


「じゃ、もういいよ」


 男達は村へと歩いていった。


「え? 何々?」


 風月は車をあちこちを見回した。


「まさか、駐車違反切られるとはな」


 斬銀は苦笑いした。


「駐車違反?」


 風月は首を傾げた。


「決められた場所に車を止めないと違反したとして、罰せられるんだよ」


「ほほ~」


 風月は頷いた。


「厳重注意されてしまいましたな! ハッハッハ!」


 フォルクは満足そうな笑みで高笑いをしている。


「あ! そうでしたわ!」


 シンフォルトがいきなり手を叩く、縁達はシンフォルトに注目した。


「報酬を払いませんといけませんね」


 シンフォルトはニコニコした。


「失礼ながら、教会まで来ていただけますか?あ、転送は私がいたしますので」


 シンフォルトはニコニコしている。


「車どうすんの?」


 風月は車を見ている。


「自動で家に戻る機能があるでござるよ」


「おお~お前お利口さんだな!」


 風月は車を撫でた。


「では参ろうか?」


 青桜はシンフォルトを見る。


「俺は縁から貰いたいね、一生懸命受け止めたからねぇ」


 斬銀はジト目で縁を見た。


「じゃあ、当たり付きのお菓子を買ったら当たる幸運を」


「ちっさ! 幸運ちっさ!」


 斬銀はベシベシと縁を叩いた。


「痛い! か弱い兎を叩くな! 筋肉!」


 縁は斬銀にシッシッと手で仰ぐ。


「少しは鍛えな」


 斬銀は自前の筋肉を見せびらかしている。


「あらあら、積もる話は私の私室でしましょう」


 シンフォルトは笑いながら、手を天にかざした!


「道徳転移! 道徳の有る者に翼を!」


 縁達は光に包まれた、そしてそれぞれの背中に羽が生えている。


「ブッ!? 斬銀! それないわ!」


 風月が指差した。


「あ? 何がだよ」



 上半身裸で、下半身が腰のみに見えなくもない鉄の鎧のムキムキマッチョメンに翼が生えたのだ。

 小さく可愛らしく羽がパタパタと羽ばたいていた……



 その姿の斬銀を縁達は直視出来ない!

 


「あら? 愛くるしい天使みたくて可愛いですわね」


 シンフォルトだけニコニコしながら斬銀を直視している。


 

 斬銀の姿を直視できないまま、縁達は光に包まれて消えた。


 

 縁達はシンフォルトの私室前に移動していた。

 辺りは教会らしく神聖な雰囲気に包まれている。




「道徳転移……なんて恐ろしい技なんだ」


 縁は神妙な顔でそう言った。


「さあさあ、こちらです」


 シンフォルトは目の前の扉を開けた。

 シンフォルトの私室はシンプルで、ベッドにタンス、本棚にテーブル、椅子だけだった。


「さ、皆様座って下さいな」


 私室へ入る縁達、シンフォルトは扉を閉めた。

 それぞれ椅子に座った、縁達はお互いに目で合図をした。




「「「「「「ロールお疲れ様でした!」」」」」」




 一斉に頭を下げる縁達。


「最後卑怯だよ!斬銀に翼はねーわ!」


 縁はテーブルを叩いて笑っている。


「失礼な! 斬銀エンジェルモードだぞ!」


 ドヤ顔の斬銀。


「誰が特すんだよ!」


 縁は机を叩いている。


「まあまあ、落ち着いてね?」


 シンフォルトは苦笑いした。


「あらら、駐車違反より強烈なオチに持ってかれたな」


 フォルクは苦笑いした。


「いやはや、残念でござるなフォルク」


 青桜は少し嘲笑うように笑っている。


「皆さん、シナリオ参加ありがとうございます、用事で遅れてしまい、申し訳ありませんでした」


 シンフォルトは立ち上がり、お辞儀をした。


「用事ってボランティアの手伝いだろ?仕方ないんじゃないか?」


 縁は苦笑いした。


「ありゃ? リアルシスター?」


 風月は首を傾げた。


「一般人ですよ、ボランティアは趣味と言うか、性分と言うか」


 シンフォルトは椅子に座った。


「やだ、やっぱりこの娘、リアルシスターじゃん」


 おばさんみたいに右手をパタパタしている風月。


「縁、ゴメンね、ボスの相手してもらって」


 シンフォルトが言っているボスとは恐らく隷属の神だろう。


「ああ、大丈夫大丈夫、気にすんな、縁の本気の一端を出せて良かったからさ」


「ボスも変更になったが、まあ、可笑しくなかったよな?」


 フォルトは青桜を見た。


「うむ」


 青桜は頷いた。



 都合によりプレーヤーの増減や、シナリオの変更がある場合、運営がシナリオの大筋から外れないようにサポートしてくれるのだ。

 



「個人的にあの村どうなるか気になるな」


 フォルトはシンフォルトを見た。


「実はあの村は縁のお母さんの時代からある村らしいのです」


「ん? どゆこと?」


 風月が首を傾げた。


「あ、ごめんなさい、縁のお母さんが現役プレイヤーの時に出来た村らしいんです」


「そうなん?」


 風月は縁を見た。


「俺もビックリだよ、知らなかったしな」


 縁は苦笑いした。


「まあ、別にいいじゃねーか、細かい事なんざさ、後付けサクサクだよ」


 斬銀は笑った。



 ほとんどのシナリオが1話完結である、続きが有るものは有るが、無いなら無いでいいのだ。



「続くかは置いといて、やっぱり青桜さんの居合い凄いっすね!」


 縁は興奮している。


「あれな、コントローラーが反応しきれない速度の居合いだったな、改良が必要だ」


 斬銀がマジトーンだ。


「運営乙」


 風月はジト目で斬銀を見た。


「って、凄さで言ったらシンフォルトのインパクトがヤバいって」


「そうでしょうか? 私より風月さんの方が凄いと思います」


「いやいやいや! 空から現れて、道徳心植え付けるとか凄いから!」


「いえいえいえ! ロール中に設定を見させていただきまして、私は魂を揺さぶられました!」



 お互いに言いたい事を言っている風月とシンフォルト。



 反省会はまだまだ続くのである。


 続く。

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