第三話 演目 フレビィレンスののど自慢!

 意気揚々と自信満々で楽器を構えている縁達だが、誰も音を鳴らそうとしない。


「スファーリアさん、テキトーに吹いていいのかい?」

「大丈夫縁君、音楽をする人達は滅茶苦茶でいいから心から楽しく演奏して、楽器が答えてくれる」

「なるほど」

「フレビィレンスは好きなように歌っていいからね?」

「は~い! あ! 太陽を出すの忘れてた……太陽! カモン!」


 そう言うとフレビィレンスは両手を掲げねと花畑の真上に小さい太陽が現る。


「私が最初の音を出すから続いて」


 スファーリアはトライアングルに乗り空中へと移動した。


「他の人達は自分のタイミングとノリを大事にしてね? じゃあ、さん、はい!」


 トライアングルビーダーを指揮棒のように振った!

 それを見たリッシュは、我先にとほらがいを思いっきり吹くと『ぶおおおおぉぉぉぉ!』と、ほらがいの音が響いた。


「わたくしも、負けていられませんわ!」

 

 絆はマラカスをジャグリングのように扱い始めた。

 空中に投げたりサッカーのリフティングみたく蹴り上げたりもしている。

 シャカシャカと鳴るマラカスと絆もマラカスも楽しそうに遊んでいるようにも見えた。


「なかなか面白いな」


 フッと笑った縁は、心のままに吹いてみる事にした。

 『プァプァ、プァープァプァ、プァプァプァー』

 

「ッハイ! ッハイ! ッハイ!」


 そんな3人を見てフレビィレンスはニコニコしながら身体を揺らしてリズムをとり、音楽に合わせて手を叩き始める。

 スファーリアの彼女の周りを漂っている様々な楽器達は意志があるかのように動き音を奏でて。

 今響いている音は統率も無く滅茶苦茶な音だが、祭りのように楽しい音が沢山鳴っていた。


「私はフレビィレンス、愛称はフレビィ! 太陽関連のイカした名前、フレア、プロミネンス、合わせてフレビィレンス! お母様がくれた名前、太陽を受け継いだ名前、目指すは一人前! 太陽の吸血鬼、血を吸う衝動は狂気? ノー! 血は吸わない正直」


 ラップを始めたフレビィレンスはノリノリでダンスをし始めた。


「私がするのは日光浴、お母様は森林浴!? 親子で楽しむは海水浴! お父様は魔法使い、植物愛する魔法使い、私が欲しいのはお小遣い! お父様の異名は月の向日葵、不思議がるのは聞いた周り、神にお願いはレッツ! 御参り?」


 日光浴、森林浴、海水浴でそれぞれポーズをした後、右手でお金のマークを作りつつ縁と絆に向かって拝んだ。


「両親の出会い太陽と月の出会い、ここから2人の大事な話し合い! 向日葵は月を見れない吸血鬼は太陽の下出れない、いい考えが思いつかない! 2つを支えるマブダチ、どうするか考える人達、その中には加護を得た者達! お母様聞いた縁の話、これぞまさに絆に縁、陣英サンとは初めてあったし」


 縁、絆を指差し、陣英にはお辞儀をした、陣英は座禅しながらもつられてお辞儀した。


「色々あってついに太陽と月の結婚式、吸血鬼が教会で結婚式? 常識には捕らわれない形式! 神の下太陽と月は誓いのキスをした、それ見届けた道徳のシスター」


 十字に手を切り祈りを捧げる。


「遊びと余裕、説明と解説、私が知らぬ加護達に賞賛! そろそろ終わる私の歌、終わらないのは命の歌、命を冒涜する奴は悪魔に魂を売った! 私はフレビィレンス、実はお姫様太陽と月の姫様、その姿は夏のようなサマー、兎のような愛くるしいさま!」


 フレビィレンスが決めポーズをしながら歌い終わると、彼女が作った小さい太陽は優しく強く正に本物の太陽の同じ生命の象徴のように輝きを放つ!


「す、凄い! 命を感じる輝き! 小さくてもお母様が作る太陽と同じ輝きだ!」

「フレビィレンス! 俺が天井までジャンプするから俺に向かって太陽を移動させてくれ!」

「わ、わかった!」


 陣英は天井に向かって空高く舞うようにジャンプした。


「昇れ! 生命の輝きの象徴よ!」


 フレビィレンスは太陽を思いっきり蹴り上げようと右足を後ろに伸ばす!

 そして思いっきり太陽を蹴り上げたが、太陽は反発している。


「たぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃよぉぉぉぉぉうぅぅぅぅぅぅ!」


 気合いの入ったフレビィレンスの声、蹴り上がった太陽は陣英へと真っ直ぐに飛んでいく!


「っしゃ! こい!」


 陣英は右腕に描かれている不死鳥の模様で太陽を受け止めようとしている。

 バン!と大きな音共に陣英の右腕に当たると陣英の髪の色が白髪から徐々に黒くなる。


「いい生命の輝きだ! 俺の魂にも火を付けたぜ!」


 右腕に刻まれた鳥の模様が太陽を取り込み炎の鳥となる!

 炎の鳥は陣英の身体を離れ空中を羽ばたき巨大化した!


「とう!」

 

 陣英は炎の鳥に乗り炎の鳥はゆっくりと地面を見た後、地面を目掛けて急降下!


「これぞ『奥義! 転生! 命の炎が燃える時、草花も萌える!』だ!」


 炎の鳥が地面に接触して形を崩し炎は花畑へと広がっていく!

 燃え上がる業火の中で陣英は太陽の花を見ている。

 枯れたり折れている花達はみるみるうちに元通りになっていった。


「お前達はまだ死すべきではない」


 徐々に炎が消えていき陣英の髪の色も白髪になっている。

 業火にさらされた太陽の花達は名前負けしないくらいオレンジ色の輝きを放ちながら咲いていた。

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