第三話 幕切れ お礼は太陽の花

「すごい! すごーい! 花が蘇った!」

「任務完了だな」


 フレビィレンスは太陽の花畑の周りを嬉しそうに走った。

 陣英は力強く咲く花達を見て満足そうに笑い、縁が近寄ってきた。


「陣英お疲れ様、報酬は何がいい?」

「いらんな、あの子の笑顔で十分だ」

「そうか、で、少々ツッコミがあるんだが」

「ん?」

「お前の力だけで花は復活できたよな?」

「『復活だけ』ならな、重要なのは『彼女が自分で救った』という事実だ」

「そういう事か」

「他には?」

「お前のダサいネーミングセンスについて」

「はっ! ネーミングセンスなんてのは歴史の重みと流行りじゃないか」

「言われてみればそうかもな」

「あ、そうだ」


 走り回っていたフレビィレンスは陣英に近寄より見上げた。


「お兄ちゃん達、お花を綺麗にしてくれてありがとうございます、お礼は何がいいですか?」


 それを聞いた陣英はしゃがみフレビィレンスと目線を合わせる。


「君の大切にしいてる太陽の花を一本頂けるかな?」

「うん! いいよ!」


 その会話を聞いていた絆達は太陽の花を見る。


「あら? 私達も素敵なお花を頂きたいですわ」

「おっ! いいねぇ、俺の執務室はちと寂しいから貰えるならありがたいぜ」

「お兄ちゃん、まずは借りた楽器を綺麗にしてからですわよ?」

「ああそうだな、縁にクリーニングクロスでも借りるか」

「それなら大丈夫、このこ達は自動洗浄機能付き」

「高性能なのはスゲーがどういった原理なんだか」

「ちょっと違うけど魔力的な要素で洗浄する」


 スファーリアがトライアングルを鳴らすと空中と貸していた楽器が消える。

 

「お兄様~!? 鉢植えはありますか?」


 絆は少し大きな声を出して縁を呼んだ。


「ん? 今まさにフレビィレンスが作業中だよ」

「私が用意するから待っててね!」


 フレビィレンスは何時の間にか軍手とシャベルを装備して土いじりをしていた。

 人数分の鉢植えも近くに置いてある、縁が出したのだろう。

 縁と陣英は絆達が居る場所へと移動する。


「陣英、ジャスティスジャッジメントに付いて教えてくれ」

「腐れ外道集団に成り下がった傭兵達だ、昔はしっかりしてたらしいがな」

「俺は今日初めて聞いたんだが」

「少し前までは上手く立ち回りをしていたようだ、が、新人教育がなってないのかしっぽを残すようになってな」

「手駒はどんなのかわかってるのか?」

「異世界の人間達だ」

「異世界?」

「アイツから聞いた情報だが、この世界に呼ばれる人間に共通点に『科学は発展していても魔法とかが無い世界』だ」

「それが? なんで?」

「簡単さ、異世界での剣と魔法の世界に魅力を感じるからだな」

「そんないいもんかね?」

「力を持って無い奴から見れば魅力的なんだろ? そして危険性を知らない」

「なるほどな」


 縁は呆れたようにため息をした。


「お兄様、私からも一つ」

「なんだ?」

「今日私にちょっかいかけたのも異世界人です」

「兄さんとのやり取りを聞いてたらそんな感じだったな」

「私の考察です魅力的な広告でも出してるのかと、詐欺ですけども」

「魅力的な広告?」

「ええ、信仰心の為に小説やテレビゲームのような感覚でこちらに呼ぶのですわ」

「どういう事だ?」

「……なるほど、よく出来てるわ」


 縁が首を傾げているとスファーリアがドスの効いた声を出す。


「スファーリアさん?」

「縁君簡単よ? この世界に呼び出して『君は選ばれた勇者だ』とか言っておだてればいいんだよ」

「それでいい気になるのか?」

「いい気になるような考えをしている人間を選別してるんでしょ」

「なるほどな」

「どちらにしてもそのジャスティスジャッジメントとか頭の悪い異世界人は絶滅するに限る」

「言えた立場じゃないけど穏便にね? 学校の先生なんだから」

「ふっ……学校から絶滅許可を貰ってるから大丈夫」

「どんな許可なんだか」

「あらあら? お兄様のガールフレンドはクレイジーな方なのですわね?」


 絆は場の空気を変えるように楽しそうな声でそう言った。


「それはお互い様、縁君の妹がファッションセンスが良くてビックリした」

「……お兄様は常にジャージですからね」

「……恥ずかしいって訳じゃないけど、ね」

「おいおい別にいいだろ?」


 縁のジャージ姿に皆の視線が集まる。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん! お花を鉢植えに移したよ!」


 助け舟のようにフレビィレンスが声を上げた。

 全員フレビィレンスの所へ行きそれぞれお礼を言って鉢植えを持つ。


「んじゃ、ミッション完了って事で俺は帰るぜ」

「ありがとうな陣英」

「またな縁、みんなもな」


 陣英は今までほったらかしされていた長方形の通信機から出ている白いモヤモヤに飛び込んだ。

 そのモヤモヤは陣英が通り終わると消えて、縁は通信機を拾って鞄にしまう。


「俺達も帰ろうか」

「そうだね」

「お兄様、私はフレビィレンスを送っていきますわ、何かあったら困りますし」

「俺もエスコートするぜ? 女性二人は危ないだろ?」

「よろしくお願いいたしますわ、お兄ちゃん」

「兄さんと絆が居るなら大丈夫だな」

「みんなお疲れ様、またね」

「お姉ちゃんバイバーイ!」


 フレビィレンスは元気に両手を振り、スファーリアは答えるように手を振った後にトライアングルを叩いて、その甲高い音と共にスッと消えていった。


「またな」

「お兄ちゃんもバイバーイ!」


 再び手を振るフレビィレンスに縁も軽く手を上げて答えた後に白い光に包まれて消える。

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