第三話 太陽の花を採取 後編 その4

「『他人から与えられた能力を全て封印』って装備品だよ、任意で発動出来るんだよ」


 リッシュは左手の二の腕に装備した腕輪を右手で指差した。


「自分や他者にも効果がある代物だが、抜け道はある『努力して得た力』や『装備品』とかな」


 リッシュは右手の二の腕に装備している腕輪を、見せびらかすように前に出した。


「こいつは『装備品を任意で取り替え』する事が出来る腕輪だ」


 今度は右手の指輪を見せた、五本指にそれぞれ指輪がある。


「装備品の性能を偽る、なんてのもあるぜ?」


 リッシュはドヤ顔をしている。


「ま、そんな説明いらねーか」


 リッシュは唖然としているヤマトへと歩み寄る。


「くっ……くるな!」


 ヤマトは怯んでいる。


「いやいや、何言ってんの?」


 リッシュはヤマトを睨んだ。


「挑発した態度だったじゃん? 手の平をくるくるするな」


「黙れ!」


 ヤマトはリッシュに向かって槍で突いた!


「は?」


 リッシュはヤマトの突きをかわして、膝蹴りをした。


「ぐっ!」


 ヤマトはお腹を押さえて倒れた。


「いやいやいや、待ってくれよ、この程度で縁や絆と戦おうとしたのか?」


 リッシュは深いため息をした。


「神と本気でやりあうなら、実力足りなすぎじゃねーか?勇者様一行よ」


 リッシュはしゃがみ、ヤマトの顔を見た。


「でよ、さっきからベラベラと俺が喋ってる時に何かしらの対策は考えたか?」


 リッシュは立ち上がり、スバルフに歩いて近寄っていく。


「そんな事すら考えられないってさ、天狗に成り過ぎじゃね?」


 リッシュは苦笑いした。


「どうした? 対策はないのか?」


 リッシュは、ガタガタと震えているスバルフの前で足を止めた。


「そんなハズがあるか、俺は最強なんだ……」


 スバルフは自分の手を見ているが、目の焦点が定まっていない。


「うるせぇ」


 リッシュは足払いをした、簡単にすっころんだスバルフ。


「いた……いたい……」


 すっころんで腰を打ったスバルフは涙目で腰をさすっている。


「叢雲だったか? お前からは『武術の努力』を感じるが、その程度でおっさんに勝てると思わない事だ」


 リッシュは右手を掲げた、光に包まれて現れた刀、それを取った、面倒くさそうにリッシュは叢雲へと歩いていく。


「可哀想だから教えてやってんだよ、どれだけ哀れかな」


「お前に教えてもらう必要は無い」


 叢雲は剣を抜いた。


「また質問いいか?コレで最後だからよ」


 リッシュは叢雲が持っている、剣の攻撃範囲外で足を止めた。


「まずお前らさ、奴隷を買うってどういう神経してんだ?」


 リッシュは深いため息をした。


「あ、何で知ってるの? とかふざけた事をほざくなよ?」


 リッシュは殺意を解放する、左手の薬指には先程使った指輪が装備されていた。

 オーラ等は見えないが、リッシュの雰囲気や周りの空気が一変した。


「で、女性の奴隷を買って対等に扱った、優しくしてそれを『恋愛』と思っているのが、頭可笑しいってんだよ」


 リッシュは威嚇するように喋っている。


「ハーレム作るのは勝手だけどよ、てめぇらの倫理観はどうなってんだ?」


 リッシュは叢雲を睨んだ。


「魔物を殺すのも、ためらいなく殺したよな? 元の世界で殺しもしたことないのにな? 可笑しいと思わないのか?」


 リッシュはニヤニヤとしている。


「ちなみに俺はお前らを殺さないからな? ダラダラとこの意味の無い戦闘もどきを楽しみましょうや」


 叢雲は剣を構えたまま動かない。


「これこれ、弱い者いじめはそこまでにしなさい」


 突如、叢雲付近の空間がねじ曲がる、どす黒い霧と共に老人が現れた。


「あ? テメェは?」


 リッシュは現れた老人を品定めするように見た。


「……なるほど、こいつらに力を与えた神様か?」


「そうじゃよ? ワシがこやつらに力を与えた神様じゃよ」


 頭ツルツルでニコニコ顔の老人は杖をついていて、浴衣を着ている。


「神様? なんでここに?」


「お主達を助けにきたんじゃよ」


 老人は杖を地面にコツンと突く、叢雲達は一瞬でその場から消えた。


「ホッホッホ、ワシもこれで失礼するぞい」


 老人はニヤリと笑った。


 次の瞬間


 パン!


 と、いう音が響いた。



 老人の杖が、音を立てて地面に転がった。

 リッシュは刀を抜いていて、矛先は老人の胸に向いている、居合いで攻撃したのだろう。

 だが、老人は合掌するように白刃取りをしていた。



「これは神技の中でも、名前が無い基本の技」


 老人はキリッとした表情で、リッシュを睨んでいる。


「つまり、お主の居合いはその程度という事だ」


「それはどうかな?」


 リッシュは鼻で笑った、老人の頬からスッと血が垂れてくる。


「俺の刀は止めれても、剣圧は止めれなかったようだな?」


「小僧、神に逆らうか?」


 老人は、目つきと声をいかつくした。


「隷属を司る神様がよ、転生者使って何しようとしてんだ?」


「ワシの正体を……?」


 老人はリッシュの左手の薬指を見た。


「『説明と解説の神の加護』を受けているのか」


「俺が直接『加護』を貰った訳じゃないからよ、不完全だがな」


 老人は納得したように頷いた。


「なるほど、ヤマト達の『器』を見切ったのか、思想や生き様を理解したと」


「喧嘩売る相手が違いすぎだな?」


「なるほどの」


 老人はニヤリと笑った。


「信仰心のためじゃよ」


 老人は白刃取りを止めた、それと同時に距離をとった。


「あ? 信仰心だぁ?」


 リッシュは刀を鞘に納め、相手の隙を待っている。


「神の力は信仰心で変わるものじゃ、ここまで言えば解るじゃろ?」


 老人は杖を拾った。


「なるほどな、転生者を信者にして自分の力にしてるのか」


「最近の若者は欲張りでの? 転生する時に最強にしてくれと頼むのが多いのじゃ」


「んな話はどうでもいい、俺の知り合いに手出しするなら」


 リッシュは刀を上に放り投げた、投げられた刀はサラサラと砂の様に消えていく。

 変わりに何かがリッシュの側に落ちてきて、地面に突き刺さった。


「バラバラにするぞ?」


 なんと落ちてきたのはチェーンソーだった、チェーンソーには『神殺し一号』と紙が張られている。


「これは参った参った」


 老人はジッとリッシュを見た。


「これは潔く退散じゃ」


 老人は杖を突いた。


「さらばじゃ…フォッフォッフォ」


 老人は黒い霧に囲まれて消えた。

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