第三話 演目 黒幕

「な、何故技が出ないんだ?」

「ああ? 『他人から与えられた能力を全て封印』んて効果の指輪をしてるからだよ」


 ヤマトは半狂乱になりながら槍をみている。

 リッシュは左手の二の腕に装備した腕輪を右手で指差した。


「自分や他者にも効果がある代物だが抜け道はあるぜ? 『努力して得た力』だな、んでこいつは『装備品を任意で取り替え』する事が出来る腕輪だ」


 リッシュは右手の二の腕に装備している腕輪を見せびらかすように前に出した。

 そして指には左手の薬指以外に指輪をしている。


「装備品の性能を偽るなんてのもあるぜ? ま、今から死ぬ奴にそんな説明いらねーか」


 リッシュは唖然としているヤマトへと歩み寄る。


「くっ……くるな!」

「いやいや、何言ってんの?」


 リッシュはヤマトを睨んだ。


「挑発した態度だったじゃん? 手の平をくるくるするな」

「黙れ!」

「は?」

「ぐっ!」

 

 ヤマトはリッシュに向かって素人同然の槍裁きで突いた!

 リッシュは突きをかわし膝蹴りをしてヤマトはお腹を押さえて倒れた。


「いやいやいや待ってくれよ、この程度で縁や絆と戦おうとしたのか? 神と本気でやりあうなら実力足りなすぎじゃねーか? 勇者様一行よ」


 リッシュはしゃがみヤマトの顔を見た。


「縁達は可愛そうな兄妹は可哀想でな? 幼少の頃から色んな奴らと戦争をしていたんだよ、お前達みたいに『不幸の神だから』って理由で攻撃してくる馬鹿共がいたからよ? まあ簡単に言えば……『幼少の時から殺し合い』してる兄妹に『他人から貰った力で最近殺し合い始めた人間』とじゃ経験の差があるよな? ん?」


 ヤマトはリッシュの言葉に何も言えずに俯き震えだした。

 言い返すにも力が無いヤマトには何も出来ない。


「でよ、さっきからベラベラと俺が喋ってる時に他のお仲間は何かしらの対策は考えたか?」


 リッシュは立ち上がり、スバルフに歩いて近寄っていく。


「冷めた」

「そんなハズがあるか、俺は最強なんだ……最強の魔法使い……」

 

 リッシュはガタガタと震えているスバルフの前で足を止めた。

 スバルフは自分の手を見ているが目の焦点が定まっていない。


「うるせぇ」

「いた……いたい……」


 リッシュは足払いをして簡単にすっころんだスバルフ。

 すっころんで腰を打ったスバルフは涙目で腰をさすっている。


「叢雲だったか? その程度でおっさんに勝てると思わない事だ」


 リッシュは右手を掲げると光に包まれて現れた刀が現れてそれを取った、面倒くさそうにリッシュは叢雲へと歩いていく。


「可哀想だから死ぬ前に教えてやってんだよ、どれだけ哀れかな」

「お前に教えてもらう必要は無い」

「ほう? お前だけはこの場を生きようと考えてるな」

「黙れ」


 叢雲は剣を抜いた。


「また質問いいか? どーしてもお前達に関して飲み込めない出来事を指輪の力で知ってな? コレで最後だからよ」


 リッシュは叢雲が持っている剣の攻撃範囲外で足を止めた。


「まずお前らさ奴隷を買うってどういう神経してんだ? 何で知ってるの? とかふざけた事をほざくなよ? で、女性の奴隷を買って対等に扱い優しくしてそれを『恋愛』と思っているのがさ、頭可笑しいってんだよ」


 威嚇するように喋り殺意を解放したかの様に雰囲気や周りの空気が一変した。


「ま、ハーレム作るのは勝手だけどよ、俺が聞きてぇのは倫理観はどうなってんだ? イキリ散らすわ命は軽く見るわ言ったらきりねーな、自分達でも可笑しいと思わないのか?」


 叢雲はリッシュの言葉に耳を貸さずに剣を構えていた。


「まあいいや、じゃ……死ね」


 リッシュは持っている刀を抜こうとし、叢雲は剣を構えたまま動かない。


「これこれ、弱い者いじめはそこまでにしなさい」


 突如叢雲付近の空間がねじ曲がりどす黒い霧と共に老人が現れた。


「あ? テメェは?」


 リッシュは現れた老人を品定めするように見た。


「……なるほど、こいつらに力を与えた神様か?」

「そうじゃよ? ワシがこやつらに力を与えた神様じゃよ」


 頭ツルツルでニコニコ顔の老人は杖をついていて、浴衣を着ている。


「神様? なんでここに?」

「お主達を助けにきたんじゃよ」


 老人は杖を地面にコツンと突くと叢雲達は一瞬でその場から消えた。


「ホッホッホ、ワシもこれで失礼するぞい」


 老人はニヤリと笑うと次の瞬間パン! という音が響いた。

 老人の杖が音を立てて地面に転がった。

 リッシュは刀を抜いていて矛先は老人の胸付近に届いている、居合いで攻撃したのだろう。

 だが老人は合掌するように白刃取りをしていた。


「神にただの斬撃が通じるとでも?」

「それはどうかな?」

 

 老人はキリッとした表情で睨む。

 リッシュは鼻で笑っていると老人の頬からスッと血が垂れてきた。


「俺の刀は止めれても剣圧は止めれなかったようだな?」

「小僧、神に逆らうか?」


 老人は目を見開きと声をいかつくした。


「隷属を司る神様がよ、他の世界の住人使って何しようとしてんだ?」

「ワシの正体を……? なるほど貴様は『説明と解説の神の加護』を受けているのか」

「相方の力だ」

「するとヤマト達の『器』を見切ったのか? 思想や生き様を理解したと」

「喧嘩売る相手が違いすぎだな?」

「なるほどの……信仰心のためじゃよ」

「あ? 信仰心だぁ?」

「神の力は信仰心で変わるものじゃ、ここまで言えば解るじゃろ?」

 

 老人は白刃取りを止めてそれと同時に距離をとり、落ちている杖を右手に引き寄せた。

 リッシュは刀を鞘に納め相手の隙を待っている。


「なるほどな、異世界人を信者にして自分の力にしてるのか」

「最近の若者は欲張りでの? 転生する時に最強にしてくれと頼むのが多いのじゃ」

「んな話はどうでもいい、俺の知り合いに手出しするなら」


 リッシュは刀を上に放り投げると刀はサラサラと砂の様に消えていく。

 変わりに空から何かがリッシュの側に落ちてきて地面に突き刺さった。


「バラバラにするぞ?」


 なんと落ちてきたのはチェーンソーだった。

 チェーンソーには『神殺し一号』と紙が張られている。


「これは参った参った潔く退散じゃな、さらばじゃ…フォッフォッフォ」


 老人は杖を突くと黒い霧に囲まれて消えた。

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