第三話 太陽の花を採取 前編 その6

「縁さん、いらっしゃいませ」


 酒場のマスターが話しかけきた。


「ああ、マスター久しぶり」


「縁さん、またいきなりですが…」


「厄介事か?」


 縁の目つきが変わる。


「何か裏家業みたいなやり取りだね」


「裏家業じゃないから」


 縁はスファーリアの方を見た。


「で、どうしたのマスター」


「太陽の花の採取の依頼がありまして、その採取の護衛をお願いできますか?」


「太陽の花か、洞窟で生息していて、花開く時に強い太陽光が必要な花だな」


「へーそんな花があるんだ」


 スファーリアは縁を見ている。


「んでマスター、依頼主は?」


「そこのテーブルに居ます」



 マスターは手の平で方向を示し、縁達はその方向を見た。

 そこには小さいロボットと制服姿の女性が居る。

 そして、赤いドレスと赤い髪に頭に小さいこうもりの羽を生やした少女がいた。

 その少女は優雅にオレンジジュースをワイングラスで飲んでいる。



「とりあえず話を聞いてみるよ、マスター」


「何時も悪いね縁さん」


 マスターはクールに笑った。


「そのうち俺の神社にお賽銭でも入れてくれ」



 縁はそう言うと依頼主のテーブルへと移動する、スファーリアは縁について行く。

 赤い髪の少女は縁に気付いた。



「お、貴方がマスターが言ってた兎さんかな?」


「マスターも人が悪いな、俺が請け負うの前提で話してるし」


「おや? 断りかい?」


 少女はワイングラスをテーブルに置いた。


「いや手伝うよ、太陽の花は珍しいしな」


「人数が増えたから報酬は…」


「俺は報酬はいらないよ」


 縁は即答した。


「私も何もいらない」


 スファーリアも即答だ。


「ただより高いものは無いってお母様が言ってた!」


少女はピシッと縁を指差した!


「私はこれでも一応教員だからね、報酬貰う手続きが面倒くさいからいらないわ」


 スファーリアは軽くため息をした、目がその手続きの面倒くささが、わかるような目をしている。


「そっちの女性は理由オッケー把握した!そっちの兎さんはなんで?」


 少女は左手の親指と人差し指で丸を作り、オッケーサイン。

 右手で縁をピシッと指差した!


「いらないからいらないだけだ、金や物より思い出の方が価値があるからだ」


「む? ジャージにウサミミにその言動……貴方の名前は縁か!?」


 何やら縁を知っているようだ、この少女は。


「ああそうだ、名乗り遅れたが縁だ」


「私はスファーリア、よろしくね」


 スファーリアは微笑んだ。


「ここで会ったが百年目……」


 少女は両手の人差し指で縁を指差した。


「待て待て、俺はあんたを知らん、それに百年も生きとらん」


「私も名乗り遅れたようだな!」


 少女は平たい椅子をお立ち台代わりに椅子に立った!


「太陽CDラジカセカモン!」


 少女が右手を掲げるとオレンジ色の小型のCDラジカセが現れた。


「え?何アレ?」


 制服姿の女性はCDラジカセを知らないようだ。


「オイオイあかり! CDラジカセを知らないのか!? CDとカセットテープを再生できて、ラジオすら聴ける画期的な発明を!」


 小型のロボットは制服の女性をあかりと呼んだ。


「小錦……今の時代音楽をデータとして持ち運べるよ?」


「馬鹿野郎! そんなのは知ってるが、CDラジカセの画期的な組み合わせがわからんのか!?」


 小錦と呼ばれたロボットはCDラジカセに付いて身振り手振りして、熱意を語っている。


「小錦、ちょっと古いよ? 最新技術の塊のくせにさ」


「古い技術のおかげで俺が居るんだよ!」


「あーはいはい」


 

 そんな2人の会話に目もくれず、少女はCDラジカセをテーブルに置いた。

 カセットを取り出し、それをCDラジカセにセットする。



「あ、巻き戻ししなきゃ」


 少女はテープの巻き戻しボタンを押す、テープは音を上げて左へ巻かれていく。

 ガシャン!という音と共に巻き戻しのボタンはオフになる。


「くそぅ…懐かしいじゃねぇーか」


 小錦が顔に手を当てて震えていた。


「ミュージックスタート!」


 少女は再生ボタンを押した!

 ガチャンという音と共に音楽が流れ始めた。

 その音楽は特撮でヒーローが名乗り口上を言う時に流れそうな音楽だった。

 少女は右手を天に掲げて、左手は腰にそえる、左手はひっかくような構えだ。

 掲げた右手を手刀の形にして、内回りに素早く半回転させ、ビシッと手の角度は斜めに止め、左手はそのままだ。



「私は太陽の吸血鬼の娘!」



 ビシッと止めた右手を大きく水平に右側に素早く動かし、力こぶを作る。

 それと同時に、ひっかくような形をした左手を右側と同じように水平移動させ、力こぶを作った右手を少し前に出して、左手とクロスさせる。

 左手のひっかく形をした手はまるで右手に噛みつくように食らいついている。

 右手は手刀の形になり大きく振りかぶる、左手はそれと同時にまた腰の位置で握り拳を作る。



 その右手をビシッと前に再び持ってくる。

 更に右手をその位置から払うように右上に持っていく。

 今度は右手が吸血鬼の牙を表すようにひっかくポーズだ。



「フレビィ!」



 ひっかくポーズの右手は物を掴むような手の形となり、握りながら少女の胸の前でビシッと止まる。

 持ってきた右手を右下に払う、右手は真っ直ぐだ。

 左手を大きく右から左へと水平に動かす。

 最後に右手は右側の腰で握り拳を作り、左手は縁達に左手の甲を見せている。



「レンス!」


 少女の名はフレビィレンスというようだ。


「太陽が有る限り私は蘇る!」


 フレビィレンスの左手に太陽にコウモリの翼が生えた模様が現れ、直ぐに消えた。

 CDラジカセから流れる音楽もいい感じに終わった。


「ああ~太陽の吸血鬼の娘さんか」


「誰?」


 スファーリアが首を傾げた。


「太陽光を克服した吸血鬼が居てね、俺はそれの手伝いを昔した、で、目の前の吸血鬼はその娘さんって訳だ」


「なるほど」


 スファーリアは頷いた。


「私の自己紹介が長くなったね、目的地に移動しながら自己紹介よろしくぅ!」


 フレビィレンス親指を立てながらひかり達を見た。

 そして、せっせと太陽のCDラジカセを片付けた。


「時間かけての自己紹介ってのは自覚あったのね」


 スファーリアはジト目でフレビィレンスを見た。


「ヒーローの宿命だな」


 縁はうんうんと頷いた。


「吸血鬼でしょ」



 スファーリアは縁を裏拳で軽くツッコミをした。

 5人は酒場を出る、フレビィレンスを先頭に街も出て舗装された道を進んでいく。

 道中互いに自己紹介をする面々、フレビィレンスは遠足気分で歌を歌っていた。



「太陽~太陽~私は吸血鬼~」


 上機嫌なフレビィレンスである。


「小錦さん一ついいですか?」


 縁は小錦に話しかけた。


「どうした縁、後俺に敬語はいらねーぞ!」


 小錦は親指をグッとしている。


「あ、そう? 何でこの依頼を受けたんだ?」


「俺の潤滑剤のためだな、太陽の花の雫で作っている」


 小錦は関節部分を動かしている、縁が見た限りでは、滑りは悪くないように見えた。


「依頼を受けたって事は天然じゃないとダメなのか?」


「近々大会が有ってな、最高の状態で挑みたいからだ」


「なるほどな」

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