第二話 レアスナタの世界観その5

 シリアスな笑いがそこにあった。


「幻術か、しかし凄いのはあの幻術に運が存在してる事だ」


 縁は興味深そうにセイザの幻術を見ている、縁は赤い雨は当たってはいない。

 何故なら彼は運が良いからだ、雨と言えど隙間が無い訳ではない彼はその隙間が大きい確率を引き当てているだけだ、もちろん常識では考えられない。



「幻術なのだろうがアレはクローンと呼んでいいんじゃないか?」


 縁は後ろを振り返りながらそう言った、縁達の後ろにはセイザが空中に浮いて居た、椅子に座っているかのように優雅にふわりと浮いていた。


「そうですわ縁さん、挨拶をしてませんでしたわね、私はセイザ、傷の魔女の娘です」


 セイザは空中に浮きながら優雅にお辞儀をした。


「ああよろしく、で、茶番はもういいか?」


 縁は呆れた顔をしてセイザを見た、セイザはクスクスと笑っている。


「茶番ではありませんよ? 私を殺すと言ったのですから、頑張っていただかないと」


 東洋はそれを聞いてフフっと笑った。


「ほほう、傷の魔女の娘を殺すと言ったのか?」


 東洋は振り返りセイザを見た、全身鎧で素顔は見えない東洋だが何処か嬉しそうな表情をしていそうだった。


「殺すや倒す、捕らえるだと殺す方がはるかに簡単だ、あの自警団は簡単な事も出来ないのか?」


 東洋は呆れた声を出しながら自警団の方を見ている。


「普通の戦いしか経験していないのでしょ? お相手するのにも飽きてきましたわ」


 セイザはつまらなそうな顔をしてアースカリア達を見た、アースカリアは喜びの雄叫びをあげていた。


「あやつらの神様がどれだけ凄いのか見せてもらおう」



 東洋はアースカリアの方を向いて、両手を大きく広げ大きく息を吸う。

 それを見て縁達はそれぞれ耳をふさいだ。

 縁は鞄から梱包された耳栓を取り出した、梱包された袋には神様用耳栓と書かれいた、袋から取り出して耳に耳栓をつけた。

 リステイナはコミカルなアニメや漫画でよくあるオーバーリアクションをしながらしゃがんで両手で耳を塞いだ。



 セイザは縁達みたく耳を塞がず、椅子に座りながら優雅に紅茶を飲み始め、先程と同じように結界を張っているようだ、透明の結界が赤い雨を弾いている。

 弾いた時に透明な膜のようなものが浮かび上がる、透明なのだが濃い透明のような気がする、濃い透明はニュアンスの問題だ。



「スゥー」


 東洋が身体を大きく見せるように息を大きく吸った。


「いよー!」

 


 爆発音に近い音を東洋は手を叩いて衝撃波を生み出した。

 手を叩いたのは一回だけ、動作は一本締めのようだ。

 東洋を中心に衝撃波が一瞬にして当たりに広がる、目視出来るほどの衝撃波が水辺に一滴水滴を垂らしたように波紋が広がっていく。

 衝撃波と言ったが強風などではない、東洋の近くにいた縁達は吹き飛んでもないし自警団も吹き飛んでいない。



 東洋を中心に植物が息吹を復活させる、空も東洋を中心に晴れ晴れとした青空になる。

 神々しく徐々にではなく、手を叩いて物の数秒で変化が起きた、まさに一瞬で当たりの景色は元の姿に戻ったのだ。

 目に見えた波紋の正体は音だった、その音が辺りの景色を元の姿に戻したのだ、縁達はと言うと。



「流石は神様用の耳栓だな、安物でも最低限の防音効果はあるようだな、使い捨てで衛生的ってやつだな」


 縁はそういうと耳栓を取り外して、耳栓を見た。

 この神様御用達のリーズナブルな耳栓は神々に愛されて200年の商品らしい。

 初代社長は悪い魔王だった、勇者のパーティーが音系の攻撃を主体とするパーティーだったらしく、それを防ぐために作ったらしい。



 なんだかんだあって和解し、音を専門に様々な道具を生産、販売する会社を立ち上げたようだ。

 縁が使っている耳栓は言わば殺し合いの中で生まれた産物である、和解はしたが魔王と勇者は互いに有る意味で殺し合いをしていたのだ。

 戦争はあらゆる物の開発を加速させるという、この耳栓もその産物、つまりは争いから生まれたこの耳栓は戦闘用の耳栓なのである。


「うちのカジノの景品にいいかもしれないな、使い捨て安くて効果がいいときたもんだ」


 縁は満足そうに耳栓を見ているがこの耳栓、神様御用達である。

 神様が使う物、そして戦闘用なのでリーズナブルと言ってもお高い、一軒家が建ってしまうかもしれないのは秘密。



リステイナはというと。


「うぉぉぉぉぉ!? 吹き飛ばされちまうぜ!」


 リステイナは突風から顔を守るように両手を顔の前でクロスさせて、片目で東洋の方を見ている。

 もちろんそんな風は起こってはいない、ちっちゃいリステイナ数人がリステイナに向かって大きなうちわで風を起こしているだけだ。

 先程も言ったが東洋の一本締めのような技で誰も吹き飛ばされてない。

 簡単に言えばリステイナの悪ふざけであり、本気で悪ふざけをしているようだ。


「流石は世界を敵に回した東洋! ドッペルゲンガーの俺には浄化系は弱点、だが! このくらいで浄化されては闇の一族としてやってられんわ!」


 ちっちゃいリステイナ達は一生懸命に大きなうちわでリステイナを扇いでいて、リステイナのマントなどが風に揺られる。


「足を踏ん張り、腰を入れて、お前の浄化攻撃を耐えきって見せるぜ!」


 リステイナはまだまだ自演を続けるようだ。


「だーくばりぁー!」



 リステイナが棒読みでそういい両手を突き出した!

 すると黒い膜のような物体がリステイナを包む、リステイナは自分の影に手を突っ込んだ、水面に手を入れたように揺れるリステイナの影。 

 リステイナはそこからラジカセを取り出した、そのラジカセは一言で表すならばラジカセの影だ。



 影なのだがボタンやラジオのアンテナ等ちゃんと付いている、リステイナはカセットテープの再生ボタンを押した。

 ラジカセから音楽が流れ始める、言うなれば合体ロボットの解説をする時に使われるような音楽だ。



「説明しよう! だーくばりぁーとは闇の結界であり、この結界は聖なる力から闇の住人を守ってくれるのだ!」


 気合いの入った解説を始めるリステイナ、この茶番はまだまだ長引きそうだ。

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