漫画とアニメを例にとる

 かっこよいアバン、お手本のようなアバンの例を出して考えてみます。

 ここで映画のタイトルをあげることができれば素敵なのですが、残念ながら私はあまり映画を見ないので不可能です。


 そんなわけで大勢の方がご存知であろう、漫画作品をあげてみます。――その名前は『ワンピース』……。

 私は空島あたりでついていけなくなりましたが、ここで語りたいのはアバンタイトルについてなので、まあ大丈夫でしょう。このまま押し切ります。



 原作漫画のアバンタイトルにあたるのは第一話の冒頭、見開きのタイトルページ前にある一ページになるでしょう。


 かつてワンピースなる財宝を手に入れた海賊・ゴールドロージャーの処刑のシーン。

 不適に笑いながら「この世のすべてにそこに置いてきた」と語るゴールドロジャー。

 ページをめくるとゴールドロジャーなる男は処刑され「世はまさに大海賊時代」という、この作品を直接知らない人でもきっと耳にしたことがある有名なフレーズによるナレーションがはさまり、そして作品の顔といえる見開きのカラー扉絵が読者の目に飛び込む仕様になっています。まさに、ドン! ってやつです。


 そして数ページはさんで通常の白黒ページになり、小さなどこかの村の酒場でルフィなる男の子が海賊になりたいとゴネるところから本編が始まるわけですね。


 始まってこの数ページで、「ああ、このルフィとかいう男の子がそのうち海賊になって、いずれこのワンピースたらいう財宝を手に入れる物語な」ということがよくわかります。



 漫画雑誌で連載漫画を追う楽しみを知っている方なら、第一話のカラーページ、巻頭カラーの扉絵、そこから展開される白黒ページでの本編の内容、これがいかに大事であるかはくどくど説明しなくてもよくご存知かと思われます。

 ここで「お、なんか面白そうな漫画が始まったな。続きが楽しみだな」と気持ちをアゲるのは漫画を読む楽しみの一つでありましょう。

 逆にここで心が掴まれないと、その雑誌の次号がでる来週なり来月までの期間を思ってうんざりしたりしませんか?

 

 第一話の一ページのカラー、その後の見開きカラー扉、いわゆる「ツカミ」これが非常に大事なわけです。本編の出来が良ければ挽回もできますが、とはいえツカミが上手く決まった方が有利に働くの必至でしょう。



 さて、アニメを楽しむ方なら漫画各話の扉絵がアニメ番組のオープニングテーマに相当することに思い至ることでしょう。

 そしてアニメーションでのオープニングテーマがその作品の看板であり華である非常な重要な要素であることも、くどくど説明せずとも自明の理であると思われます。


 ワンピースだと、各話のまさにアバンで毎回毎回ゴールドロジャーの故事来歴が語られ、その締めにルフィの「海賊王に、俺はなる!」という台詞が挿入され、テーマ曲のイントロが流れる仕様となっています。

 それさえ見ていれば、その時やっているエピソードはわからなくても「とにかくこの四白眼の少年が海賊王たらいう存在目指して伝説の秘宝を手にするために冒険するような話なんだな」という基本情報は初見でもわかるはずです。その内容に心惹かれ、オープニングも気に入れば、ある日突然ワンピースを偶然みた人も次週からチャンネルを合わすようになるかもしれません。



 ――そんなわけで、『ワンピース』を例にとって説明してみました。


 

 なんで急に『ワンピース』の話なんて始めるねん? となった方は挙手ねがいます。すみません。

 つまり、ここで語ったことをぐっと縮めると、「ツカミは大事!」ということになりますね。


 そんなんお前がいわんでもダチョウ倶楽部が数十年言い続けとるやんけ、となった方もいらっしゃるでしょう。すみませんね。

 

 もうちょい補足します。


「小説におけるツカミ――特にアニメーションやゲームなど二次元媒体の親和性の強い作品のプロローグ・前書き・序章はアバンタイトルほぼ同義である。ここをゆめゆめおろそかにしてはならぬ」


 そういうことになるかと思います。


 だけど小説は絵も映像も音楽も(今のところ)使えないぞ? 漫画やアニメみたいに一目で心をわしづかみにするようなキャッチーなアバンを用意するのは難しいぞ? と、なりますね。


 そこが各々の工夫のしどころであり、小説を書く醍醐味というものではあるまいか? とは思いますが、自分なりに考えた「こうすればうまく書けるかもよ?」「見栄えがいいかもよ?」というアイディアを述べてみたいと思います。

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