残念だったアバンタイトル(意識する切っ掛け)
アマチュアが書く小説とアバンタイトル(プロローグ)で、初めて違和感を覚えたときのことを書かせていただきます。
数年前、SNS経由でとある方がなろうにて小説を公開したから読んで欲しいと宣伝されているのを見かけました。そしてなんの気なしに読みにゆき、なんとも言えない読み心地を味わうこととなったのでした――。
以下、簡単に説明いたします。
小説の内容は、「心に傷を負った少女がある日突然異能力に目覚める。そして自分と同じような異能の力を持つ少年と出会い、なんやかんやして己の心の傷を克服するノベルゲーム風ダークファンタジー」といった趣の物語だったはずです。
アバンにあたる序章、第一章、第二章……と続いていたように思います。
さて序章を読み始めました。
なにやら小さな少女の目線で意地悪な同級生にいじめられているようなシーンが、故意にあやふやに語られます。
強い悲しみと怒りと絶望を感じている幼い少女の心象が「はい、これはかつて起こったこと、そして登場人物の誰かが見ている夢の中ですよ」という文体で語られ、序章は終了します。そして第一章へ続きました。
――ほうほう、わざわざこうやってアバンで意味ありげに冒頭にもってくるのだから、これは物語のキーとなる風景なわけだな? この小説の悪玉が体験したトラウマでこの経験をもとにこの世界を破壊にもたらすことを決めたとかが定番かな……?
と、読み手の心境はこうなりますね。
ところが、第一章の序盤を読み始めて私はコケそうになりました。思い出せる範囲で再現してみます。
『「――ッ! ……ゆ、夢……?」
〇子はベッドの上で目を覚ました。
寝間着が寝汗で体に張り付き、胸は早鐘のように鼓動を刻む。
どうしてあの、忌まわしい時間のことを思い出してしまったのだろう。
今まで忘れようとしていたのに――?
夢の中の光景、それは数年前に〇子の心を破壊した屈辱の体験だった。』
ええー! わざわざ序章で意味ありげにもったいぶって語った癖に主人公の少女が見ていた夢⁉
しかも小学生時代にいじめられていた時の記憶ー⁉ 謎でもなんでもない!
なんじゃそりゃ! もったいぶって語った癖に全然大したことないな! しかもなんですぐバラす⁉ 序章でぶん投げた謎はもっと引っ張らなきゃダメだろ!
――とまあ、序章プラス第一章冒頭でこんな風にズコー! となったワケです。
もう少し読んだ展開で、少女がこの夢をみたのが謎の能力に覚醒する予兆であり、かつ少女の過去の説明にもあたるわけで不可欠な情報であることが分かります。主人公の動機や人となりを説明をする、読者がその物語を体験するには最低限必要な情報なわけです。
しかし、はっきりいって、序章で意味ありげに語るものではありません。
「謎めいた夢」を語るパート、そして「不吉な夢を見て飛び起きる主人公、そして夢はかつていじめられていた時の記憶。あえて忘れようとしていた記憶がなぜ突然蘇ったのか」を語るパートはどう考えたって同じ章にまとめるべきだろう。なんで、わざわざ序章って形にしたかなぁ、あーあぁ……。
さて、ここまでお読みくださった方に伺います。
「うんうん、その夢を序章におくのはあり得ないね。でも自分ならこうするな……」
だったでしょうか。それとも、
「ええ? どうしてその夢を序章に置いちゃだめなの?」
だったでしょうか。
前者の方には、以降の章で語る内容は不要だと思います。ここでバックしてご執筆に戻られるか、そのまま暇つぶしにご活用くださるか、ご自由に。私としてはこのまま暇つぶしにご利用くださると嬉しいです。
後者の方でしたら、これから語る内容がひょっとしたらお役に立てるかもしれません。しばしお付き合いを。
――もしかしたら、
「つうか、お前の説明まわりくどくてわけわかんねえよ。スッと説明しろや、スッと」
という方もいらっしゃいましたでしょうか。すみません、精進いたします。
ともあれ、以降の章には「どうしてその夢を序章に持ってきちゃいけないの?」について、私なりに説明してみます。
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