第38話
僕の左指はキーボードを的確に叩き、右手は弧を描くようにマウスを動かす。
ヘッドセットからは仲間の声が聞こえる。視線がディスプレイの隅々を何度も往復し、声帯はマイクに向って的確に声を発した。
あれから一時間半。
本来ボスを含めて三時間以上かかるダンジョンを僕らは高速で駆け抜け、目の前にはボスのゴルゴンがその巨軀を広げて立っている。
髪は全て毒蛇。瞳は赤く、額に第三の目が付いている。手には禍々しい気を放つ魔道杖を持っていた。
ゴルゴンが動き出すそのタイミングを読み切り、アヤセがスキルを発動させる。
「魔障壁、稼働!」
屋敷の壁に撃ち込まれた大きな弾が赤い線で繋がれ、次に線で囲まれた箇所が透明な壁となった。
そこにゴルゴンの魔術が放たれる。魔術は壁に反射され、ゴルゴンに帰っていった。
直撃。自らの攻撃を受け、怯むゴルゴンに僕とリュウが畳み掛ける。
ゴルゴンの髪で蠢く蛇がリュウを襲った。
僕はその間に飛び込み、盾と剣で蛇をはじき飛ばしていく。
ゴルゴンの弱点である胸の宝石に向けて、真っ直ぐな道が出来た。
「今だ!」
「おう!」
リュウがスキルと発動させる。黄金の十字槍にバチバチと雷撃が纏われ、リュウはそれをゴルゴンの胸に投げ込んだ。
ゼウスの雷光。
高い音と共に光速の雷がゴルゴンを貫いた。しかし、胸の宝石からは僅かにずれ、ゴルゴンはまだ生きていた。
リュウの槍は向こう側の壁に刺さっている。そこへゼウスの雷光の効果でリュウが瞬間移動した。壁を地面に見立てて槍を引き抜く寸前、リュウが叫ぶ。
「ヒラリ!」
「うん!」
ヒラリがリュウに向けて魔術を使った。光りがリュウを包む。
リトラクティブライト。それは被使用者のスキルを回復させ、連続使用を可能にする魔術だ。
リュウの槍に再び雷が帯びる。槍を引き抜くリュウは壁を蹴って飛んだ。赤いマントをはためかせながら、空中で狙いを定める。
「当たれええええええぇぇぇぇぇッ!」
声をあげ、リュウは力強く投擲した。槍は見事にゴルゴンの背中を貫き、胸の宝石を砕いた。
断末魔を上げ、のたうち回るゴルゴンはじきに倒れ、そして消えた。
「っしゃあっ!」とリュウが吠えた。
アヤセとヒラリも嬉しそうに「やったー」と声を合わせる。
僕はほっとして胸を撫で下ろす。
ついさっきまで沈んでいたのが嘘みたいだった。
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