第39話

 あの後、僕が叫んでから一瞬間を開けて、三人が同時に笑い出した。

「ヒロトが言い出すとは思わなかったよ。くそ、俺が言おうとしてたのになあ」

 リュウが悔しがった。

 アヤセは笑った。

「当たり前でしょ。まだまだ取り戻せるわよ! 少なくともあいつらには勝たないとね。だからヒラリ、あまり気にしないで。あたし達でなんとかするから!」

「・・・・・・うん。ありがと」

 笑いかけるアヤセに、ヒラリは小さいながら嬉しそうな返事をした。

 みんな思ったより元気だ。もしかして、僕が一番落ち込んでいたのかもしれない。

 そう思うとちょっと恥ずかしかった。でもそれより何倍も嬉しくて、僕は少し涙ぐむ。

「みんな・・・・・・」

「おいおい」とリュウが僕の声を聞いて苦笑した。「まだ早いって。ヒロトはリーダーだろ。しっかりしろよ」

「うん・・・・・・そうだね。ごめん」

 僕は涙を拭い、笑った。みんなも笑った。

 ヒラリの控えめな笑い声が聞けてよかった。

 それから僕らは町でダンジョン用の装備とアイテムを揃え、リベンジへと向った。

 僕の捨て身の救助が僅かながらでも役に立ったのか、経験値を失わずに済んだ三人の活躍でスピーディーにクリアしていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る