第27話

 そんな気持ちも、家に帰り、ゲーム画面を見ると少し落ち着いてきた。

 さっきトイレに起きてきた姉に会った時、「何にやけてるの?」と怪訝な顔をされたのもあるけど。

 それでも僕はご機嫌だった。気付くとうみのさんの事を思い出している。

 このままいけば、友達になれたり、その先も・・・・・・なんて妄想が膨らんだ。

 自分でもびっくりするほど、僕は浮かれていた。リアルでこんな気持ちになるなんて、久しぶりだ。

 このままだとまずいと、僕は何度か深呼吸をし、マウスを握った。

 休憩が終わり、ゴトーの元へ行くと既に装備の強化が終わっていた。

 鍛冶には失敗と成功と大成功があり、更に細かく数値が変わってくる。失敗はほぼない。レベルを上げれば成功しかしなくなる。

 けど、大成功を出すのは大変だ。レベルは勿論、スキルや知識、そしてアイテムが必要になる。どれか一つでも欠けるとまず出ない。

 にも関わらず、ゴトーの作った装備は全てが大成功を収めていた。今回は強化なので、外見は変わらないが、ステータスを見てみると大幅に上昇している。

 これでかなりダンジョン攻略は楽になるはずだ。ゴトーが自信ありげに尋ねる。

>どうだ? ボーナスは貰えそうか?

>さすがだよ。他で頼むとこうはいかない。

 実際酷い職人だと、失敗しても人のせいにする奴もいるくらいだ。

 僕はゴトーに次も頼むと二割増しの報酬を渡した。レベル上げをしていた時に、思ったよりアイテムが手に入ったからだ。

 最新のアイテムは高く売れる。それも時間が経てば安くなっていくけど。

>毎度あり。これからもどうかごひいきに。

 ゴトーは嬉しそうに報酬を受け取った。

 僕達が次を急ごうとした時、またチャットが動いた。

>そういえばお前ら、最近またチーターがBANされたらしいぜ。知ってるか?

>いや、知らないけど別に珍しくないじゃん。

 リュウが素早くチャットにタイプする。

 実際チーター、つまり不正行為をする輩はよくいる。PCゲームでいない方がおかしいくらいだ。ただSF0はMMOだし、運営も割と頑張ってるらしいので、あまり気にはならない。

>まあな。けど、今はキャンペーンがあるだろ? 金が貰えるって事で、色々やる奴が出てきたんだよ。無敵になるとか、どんな相手でも一撃で倒せるとか、モンスターを隔離するとかな。

>けどBANされてるんだろ? 運営もチートは絶対に許さないって言ってるし。俺達にはあんま関係ないよ。

>そうか。ならいいが。俺はルールを破る奴を許せないんだ。もし見かけたら言ってくれ。鍛冶師ギルドで情報を回して、装備を作れなくしてやる。

 それを見て僕達は笑った。

 確かにそうなれば色々と厳しい。欲しい装備を手に入れる為に、素材、金に加え、鍛冶師レベルとスキルまで必要になる。

 まあ、チーターはそれすら違法で手に入れるかもしれないけど。

>分かったよ。じゃあ、行ってきます。

>おう。頑張ってこい。まあ、ほどほどにな。

 ゴトーは手を振り、僕達はギルドをあとにした。

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