第24話

 部屋を出て、ギルドから出た僕らは市場にいた。

 食べ物に装備、アクセサリーにアイテムなどたくさんの物が売られている。

 アップデートからすぐなので人が多く盛り上がっていた。

 ここでは掲示板で依頼なども出来る。アイテムを買いますとか、一緒にギルドを創りませんかとか、レアアイテムの交換など様々な事が書かれている掲示板には人が群がっている。

 たまに高価な物が一緒にダンジョンを攻略しただけで貰えたりするから僕もよく使っていた。他の三人が準備をしている間、僕は掲示板を読んでいた。

 今回の目的はキャンペーンの情報についてだ。同時攻略を書き込んだりする人がいるかもしれない。そう思って僕は人混みをかき分けて掲示板の前にやって来た。

 掲示板をクリックすると画面が切り替わり、たくさんのタブがずらっと並んでいた。

 しばらく読んでみたが、僕が欲しかった有益な情報はありそうにない。

 しかし、違和感を持つ依頼を一つ見付けた。僕は首を傾げる。

『キャンペーン優勝確定! 一緒にプレイ出来る人を探しています。詳しくはテンネンまで』

 優勝確定? みんな睡眠時間を削ってプレイしている中、そんなに簡単な攻略方法があるんだろうか? 

 攻略方法については僕らも随分話し合った。

 レベル上げを捨て、雑魚モンスターを無視し、ボスだけを攻略し続ける。

 でもその考えは最初のボス、ブラウニーユニコーンとの戦いで不可能だと悟った。単純に体力が多く、攻撃力が高いユニコーンは弱点を突くとかしている間にやられてしまうのだ。

 もしかしたら独自の攻略方法が見つかる可能性はあるけど、それを探すより普通にレベルを上げた方が早いと思う。

 今後のダンジョンの攻略も含め、地道にやるのが一番だと僕達は結論づけた。そしてそれは他の有名ギルドも同じなようで、レイチェルの配信を見た時も裏技とか使わずに真っ当な攻略をしていた。

 しかしこのテンネンとかいう人は優勝確定だと宣言している。

 怪しいけど、何かバグでも見付けたのかもしれない。しばらくその依頼を読んでいると、後ろからリュウが話しかけてきた。

「なんかあった?」

 僕の肩に手を置き、掲示板を覗くリュウに僕はテンネンの依頼を見せた。

 依頼を読んだリュウはふ~んと呟く。

「こりゃ、詐欺だな」

「詐欺?」

「そう。攻略情報売りますって言って金を集めるんだよ。で、とんずらするわけ。キャンペーンの攻略情報はみんな喉から手が出る程欲しいからな。ダメ元で金払う奴がいてもおかしくないじゃん。ゲーム内通貨でリアルの賞金がゲットできたらおいしすぎるだろ?」

 なるほど。確かにそうだ。僕にとってはリアルのお金もゲームのお金も同じくらい大事だけど、ほとんど人にとってはリアルのお金の方が大事に決まってる。

 それを逆手に取った詐欺が横行してもあまり不思議じゃない。

 元々ゲーム内通貨をだまし取る詐欺師もこの町には結構いる。レアアイテムを渡すと言って、お金だけ貰いログアウトするのだ。

 それを避ける為に掲示板は同時トレード機能があるんだけど、騙される人も後を絶たない。

 嫌われ者の詐欺師だけど、彼らはこのゲームでそれを選択し、演じきっている。

 これも楽しみ方の一つではあった。やり過ぎるとアカウントを消されるけど。

「どうせすぐに通報されて消されるよ。それよりなんもないなら休憩しようぜ。準備も整ったし、まだ時間まで40分もある」

「そうだね。アヤセとヒラリはどうする?」

 僕がボイスチャットで尋ねると、他の場所にいた二人が返事をする。

「そうね。じゃあ40分後にゴトーさんのとこで」

「はーい。ちょっと寝るね。起きなかったらアプリで連絡してください」

 そう言って二人はログアウトし、リュウも「飯食ってくる」といなくなった。

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