第22話
五頭火山のボス、ボルケーノオルカは強敵だった。
マグマの海を泳ぎ、溶岩を吐いてくる巨大なシャチ。更にマグマに潜る度にターゲットが切れるので、その度にロックオン、つまり敵をクリックしないといけない。
素早い動きに、どこから来るか分からない攻撃から味方を守るのは骨が折れる。
ここは五頭火山最大の山、ダロスヴィー山の頂。
中心にはマグマの池が沸き立っている。それをぐるっと黒い岩石の陸地が囲み、僕らはそこに立っていた。
最初は手こずったが、それでも少しずつ攻略法が見えてきた。潜っては泳ぐ巨大なオルカ。潜られては攻撃が出来ない為、時間差で発動する魔法やスキルを使うのだ。
「アヤセ! もうすぐ潜るよ!」
最前線でオルカの行動パターンを観察していた僕は既に動きを見切っていた。
それを後ろのアヤセに伝える。
「分かってる。ポイズングレネード、装填・・・・・・!」
アヤセはスキルを発動させ、特殊な弾丸をボウガンへ入れ、オルカに狙いを付けた。
オルカが少し仰け反り、口に岩石が見える。僕は皆の前に立ち、攻撃に備える。
勢いよく吐かれる巨大な岩石。タイミングを合わせ、その攻撃を盾で防ぎ、スキル『鉄壁』を発動。
後ろへの攻撃を防ぎ、尚かつ自分の受けるダメージを瞬間的に軽減する。受けたダメージもヒラリが瞬時に回復魔法をかけてくれた。
「今だ!」と僕は叫んだ。
オルカが息を吸うように一度大きくマグマから顔を出す。そこにアヤセが弾丸を撃ち込んだ。
「当たれ!」
どんっと音がして発射された弾丸は見事にオルカの額に命中。しかしまだダメージはない。
そこからオルカはマグマへと潜る。潜ってから数秒後、爆発音が聞こえ、紫がかった霧みたいな毒のテクスチャーがマグマから少しだけ見えた。
同時に「ギュワアァァ!」と悲鳴を上げてオルカがマグマから飛び出てくる。落下し、僕らのいる地面で飛び跳ねるオルカ。
それを待ってましたとリュウが待ち構えていた。
右手を横に広げ、槍の中心を持つリュウ。赤いマントと金色の髪が風に揺れる。
「トリシューラ」
スキル『トリシューラ』は冷気を纏った槍を持ち、敵の頭上に跳躍。そしてそのまま敵を貫く技だ。属性がついている為、相性がよければ大ダメージとなる。
「凍てつけ!」
リュウは叫び、オルカに槍を突き刺した。巨大な氷のエフェクトがいくつも花の様に美しく咲いた。
大ダメージを知らせる大きく派手なヒット音が気持ちよく響く。
オルカは一度体を起こそうとするが、最後には力尽きてその場で動かなくなった。
ファンファーレが鳴り、僕達に勝利を知らせた。そこでようやく思い出した様に大きく息を吐き、小さく吸った。
ボイスチャットでみんなが喜びの声を上げる。
「よし倒した! ったく、やっとだよ」
「あたしのお陰でかなり早く終わったんだから文句言わない」
「回復忙しかったけど楽しかったねー」
「・・・・・・大変だった」
僕以外は割と楽しかったらしい。新しいボスと戦う時、大抵タンクは立ち回りが分からない為に右往左往する。今回はそれが顕著だった。
それでもキャンペーンが終わったら練習したいボスだった。やる事が多いのは大変だけど、それがナイトの醍醐味でもあるからだ。行動パターンだって次に戦う時は変わっているかもしれない。
バトルに集中出来たお陰で僕の気持ちは上向いていた。ゲームはすごいなと思いながら、少しの疲労感と満足感を感じた。
やっぱりゲームは楽しい。そう再確認した僕は少し嬉しくなった。
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