第16話
レベルが上がると随分とダンジョンに対する印象は変わった。
モンスターの攻撃は上がった防御力で軽減され、ヒラリの回復が間に合うようになった。
そうなると視界が開けてくる。いつも初めてのダンジョンに入るのはワクワクした。でも今回は早くクリアしないとと急いで、その結果全滅しかけている。
正直あまり楽しめていなかった。それも少しずついつも通りに戻ってきた。
運営としては急ぎすぎて楽しめないってのをさせない為に難易度を上げたのかもしれない。
キャンペーンは大事だが、彼らも長い時間をかけて作ったコンテンツをただ消費されるのはあまり心地よくないんだろう。
僕はゲームを作った経験はないけど、仮に作ったとして、簡単にクリアされたら多分あまり嬉しくない。
僕は盾でモンスターの攻撃を防ぎながら、相手のパターンを観察していた。
自分を強化してから戦うモンスター。
最初から殴ってくるモンスター。
仲間と連動するモンスター。
仲間を呼ぶモンスター。
パターンだけでも様々だ。
出てくるモンスターのデザインも新しい。木のモンスター。花のモンスター。リスみたいなモンスター。犬みたいなモンスター。魚のモンスター。タマネギみたいなモンスター。キノコのモンスター。恐竜みたいなモンスター・・・・・・。
既存の色違いだったりもあるけど、それでも初めて見るモンスターがいると、ボイスチャットは賑わった。
「うわ! 毒吐いた!」
「いい加減、運営は野菜モンスターやめろよ。苦手なんだよ・・・・・・」
「ヒラリ見て見て! あのモンスター可愛いくない?」
「ほんとだー。ぬいぐるみでないかなー?」
新しいモンスターは挙動が読めない為、ちょっとしたピンチが訪れたりもしたが、それでも僕らは培ってきたチームワークで解決していった。
そもそもこのパーティーはバランスが良い。
タンクである僕のナイトがヘイトを集め、敵を惹き付け味方を守る。
その間、接近戦で高火力が出るランサーのリュウが相手体力をザクザク削っていく。
アヤセは様々な銃弾、魔法を駆使して相手を状態異常にしたり、リュウの攻撃力を上げつつ、隙を見て攻撃。
そしてヒーラー、魔術師のヒラリが回復と防御力アップの魔法、状態異常の解除を担当する。
エデンは僕が考えた理想のパーティー像とぴったり一致していた。
しかし、同時にそれぞれが持つ役割が明確化しているせいで、一人でも欠けるとあっという間に負けてしまうという短所もある。体力が多いジョブがナイトである僕しかいないのだ。
もっと火力を下げて、耐久力を重視すれば安定感は増す。その分攻略スピードは遅くなるが、それもSF0のセオリーだ。
この世界最大のギルド、ルーラーもナイトとヒーラーは僕らのエデンと同じだが、攻撃一辺倒のランサーの代わりにバランスの良いセイバーを。器用貧乏のガンナーの代わりに火力も出て、敵の防御力を下げられる魔道士を入れている。
どっちが正解とか不正解とかは思わないけど、効率だけを考えれば好きなジョブを使うより、仲間に合わせた方が良いに決まっている。だけど僕らは敢えてそれをやらなかった。
ゲームは楽しむもの。
それがエデンのモットーだった。当たり前だけど、長く続けるとそれが出来なくなったりする。
それに楽しみ方も人それぞれだ。ストイックに、真剣にやる。それも僕は結構好きだった。でもそれについて行けない人がいるのも確かだ。
軽い気持ちで初めたSF0でガチガチのプレイを強要され続ければ、嫌になって辞めてしまう人もいる。何事もバランスが大事なんだ。
それが僕がSF0から学んだ事だった。
そして僕らは迷いの森を迷いながらも、最深部へとやって来た。
今までのパターンならボスがいるはずだ。回復や強化で準備を整えてから、僕は前へ進んだ。
「よし。じゃあ、頑張ろう」
剣と盾を持ち、少し緊張しながら、僕は皆を守る為に先頭を歩いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます