第5話

 何か音が鳴っている。

 なんだったっけ? 十秒ほど考えて僕ははっとした。SF0のアップデートだ。

 今の僕には何よりも大事な事が今から起る。

 スマホを見ると八時四十五分。アラームをセットしたのは八時三十分だから、十五分間も鳴っていたらしい。

 僕はアラームを切って、起き上がった。顔を手の甲で拭く。汗が凄かった。

 喉も渇く。近くに置いてあったペットボトルに入った麦茶で喉を潤す。もう随分ぬるくなっている。

 そして乾いたタオルで顔を拭いた。目を擦りながら、机の前に行き、パソコンをスリープから復帰させる。同時に部屋の電気もリモコンで付けた。

 パソコンの中でファンが回るぶうんという音がして、画面にデスクトップが表示される。

 僕はすぐにスターダストのアイコンをダブルクリックした。ウインドウが出て、起動中の文字とLOADINGのアニメーションがぐるぐる動いた。

 その間僕は髪を掻き上げ、机の上に置いてあったビスケットを一枚食べ、また麦茶を飲んだ。

 そしてログイン画面が出てきた。

 ズボンで手を拭き、念のために麦茶の入ったペットボトルをキーボードから遠ざける。

 パスワードを入力すれば僕は谷口宏人ではなく、ヒロトとなった。

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