シニガミ

 四月一日は嘘を吐いて、皆を喜ばせる時間帯らしい。されど私には偽りを垂れ流す気力も無ければ、閻魔の舌抜きに遭遇する『地獄』も無い。私が残された孤独の道は誰もが赦されぬ舞台上で、生命を讃美する天使の囁きも雑音だ。故に私は真実を覆い尽くすヴェールを剥げず、ダオロスの輪郭を凝視する勇気も知れぬ。痴れた存在の愚行こそが羨ましく、自らの鼓動が臆病者の呟きに聞こえ――ああ。私に蛮勇を。物語を良き『スタート』に導く太鼓の乱打を。誰でも好い。神でも好いから教え給え。ポオの詩を流し読みするが如く冒涜的な、邪なる己を解放する『機会』が欲しいのだ。昨日の騒ぎに乗れず破滅的な自慰行為に耽る、私の脳味噌に衝撃を与えるが最善。我が隣人は悪意と呼ばれる美人! 惚れた誉められた蔑まれたの反芻を脳天まで味わい尽くさねば、私は此れ以上の進化退化を咀嚼出来ぬ。助けてほしいのだ。私と称される『この』肉の袋を、カタチに入れ込む、嵌め込む『もの』が新たに欲しいのだ。

 それで。僕に相談したい事柄は、君の、君自身の為の『奈落』なのかい――友が語る。否。騙り始めた。何せ此れは私の妄想で、暴走で、孤独な人間に人間など要らないのだ。故に私は如何返せば好い。頷くべきか。首を横に振るべきか。目の前の肉の袋に刃を突き立て、心臓を何度も何度も啜れば好いのか。答えは貴様自身が、友と記す塊に委ね――全く。もしや君は僕の肉を嘘だと吐くのかい。袋は在るのだろうね――存在するとも。私は嘔吐する癖が在るのだ。言葉とは濁った、黄色の酸味だと理解して終え。糞っ垂れの友、私の愛すべき脳髄が――ああ。落ち着いて。僕は君の味方だ。いつだってそうだろう――黙れ。黙れ。私は貴様の如き台詞、幾等でも聞いたのだ。傾聴する気力など殺戮された。ああ。私には貴様が死の神に視得る。私の進んだ孤独を嘲笑う、虚空からの使者に視得る。ドウセ貴様の存在もなのだ。ならば精神を曝け出す必要など……ええい。貴様。仮面を外せ。私の貌のように真っ蒼だ。色白だ――シニガミだなんて、酷い君だなぁ。僕は君の友達だろう。だったら――畜生が。誰が死するべき存在だ。私は自らの人生を否定しない。否定するのは世界だけで充分だ。死ぬべきは貴様なのだ。刃を構え――四月二日。視界が晴れる。何処かの都市で笛吹きが笑う。俺は確か……そう。劇を観る為に歩み始めたのだ。黄衣の……。

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腐敗せよ朦朧 愛創造 @souzou_Love31535

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