第1話~異世界召喚~
視界を塗りつぶした光。一瞬の浮遊感。足が再び地面をとらせる感覚。色を取り戻した視界に映った光景は、祭壇の上から見た人達の姿だった。人達は一人を除いて全員が頭にフード、手には杖みたいなのを身に付けていた。呆けたまま、状況を把握しきれず、混乱している俺たちの前に、唯一フードも杖も持っていない人が出てくる。
「遠い世界からよくお越しくださいました。混乱されていると思いますが、まずは話を聞いてもらいたい。」
「………」
沈黙を了承と受け取ったのか、場所が場所なので移動しようといい、返事も聞かずに後ろを向いて歩き出してしまった。付いていくしかない。混乱したままだったが、一人、また一人と先を行く背中を追っていった。
王宮の一室に何度目かの溜め息が響く。溜め息の主は勇だ。原因は付いていった先で聞かされた話だ。要約するとこうなる。
まず、この世界は地球とは別の世界、つまり、俺達がいた世界とは違う世界だそうだ。この世界は科学は全く発展しておらず、代わりに魔法が存在する。そして勇達がここに呼ばれた理由は、簡単に言えば、戦争に負けたくないかららしい。この世界には大きく分けて、三つの人種がいる。人族、亜人族、魔人族の三種だ。この内の人族、魔人族はなん千年も前から戦争を続けてきていた。その間、両者の力は互角だった。しかし最近、魔人族に動きがあった。強力な先導者が現れたのだ。今までの魔人は、魔物を操ることができるのものの、数は二、三体位で、操ることに抵抗されることもあった。しかし、その先導者は魔物の強さは関係なく、抵抗させることなく魔物を操ることができるらしい。それも万や億ではすまない数の魔物を。そこで各国の重鎮達が集まり、会議が開かれ、結果、ここ、レミルト王国に優秀な魔術師が集められ、古代魔法で俺達を召喚、現在に至るというわけである。内容を思い出して再び溜め息をついた勇は、改めて周りを見て呟く。
「いい部屋だよな~」
そう、現在“召喚者”は王様に休むように言われ、一人一部屋準備してもらった部屋で休んでいるのである。
流石は王宮。部屋の装飾が絶妙な雰囲気を造り出している。本棚もあり、中にはこの世界のことが細かく書かれているらしい本が置かれている。
(あぁ、読んでいいって言われたな…少しでも…知識つけとかないと…)
しかし身体は言うことを聞かない。疲労と混乱のせいで、もう倒れそうである。
-ドサッ………
ベッドに倒れこむ音を最後に勇は眠りについた。
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