第4話「僕はもう、部屋荒らしの犯人が誰かわかった」
「いたずらなんじゃないのか?」
彼女が一度帰宅した後。
午後五時。彼女の
「君の目には彼女がそういう人間に映ったのかい?」
「……いや、そういう奴には見えない。いたずらなんて出来る
あれは真逆だ。『おとなしい』や『人見知り』を超えて『
それを聞くと、黒川はカラカラと乾いた笑いをする。俺の冗談が面白いと思ったらしい。そして、それと同時に、自分達の状況があまり良くないことも
大井青子のストーカーは「
「難しい依頼だね」
「ああ、だが、難しいからやらないってわけにはいかないだろ。
これからどうするんだ? ストーカーを捕まえようにも何一つ手かがりがない。今日の六時から彼女のアパートの近くで
ああ、いや「男」と断定するのは危険だな。性別すらわからないのだから。
「ははあ? さすがの我が助手も
こういう時はテレビでも見ようじゃないか」
「誰が助手だバカ。お前は俺の借金の
「ええ……。ひどいなあ」
そう言いながらも、黒川は顔色一つ変えていない。彼はリモコンを手に取りテレビをつける。ちょうど夕方のニュースが流れていた。内容は、例の通り魔殺人事件だ。大井青子が警察にうまく頼れない原因だった。
「……まだ捕まらないのか。
俺は
次のニュースは、東京の
「ひょっとしたら。この事件の犯人と、青子さんのストーキング野郎は同じ人物かもしれない」
何言ってんだこいつ。
「何言ってんだこいつ」
思ったと同時に声が出てしまった。しかし、彼にはどうやらそこへ
「ええと、そう思った理由は何だ?」
「いいかい、青子さんのストーカーは手かがりすら
「そうだな」
「それで、このニュースの連続殺人犯も、手かがりすら
「まあ……そうだな」
捜査状況を知らないので手かがりすら掴めていない状況かどうかは話からないが、黒川の意見に反対するつもりはない。今の警察の様子を見たら誰だってそう言うだろう。俺だってそう言う。
「だから犯人は魔法使いでさ、姿とか消せる——」
なるほど、目から
「待て、待て、待ってくれって。
もしかして、僕が本気で魔法使いを信じていると思っているのかい?」
「違うのかよ」
「違うでしょ。魔法使いなんて
お前の
と答えてやりたかったが、そこはぐっと抑えた。
「さっきのはほんの冗談だよ。
だが、ここだけの話、僕はもう、部屋荒らしの犯人が誰かわかった」
「本当かよ」
「本当さ」
「誰だ?」
「それは今伝えるべき段階に無い。というべきだろうか」
「……お前は最悪だな」
たとえばそう、家族でクイズ番組を見ている時に、みんなで答えはこれだ、あれだ、って盛り上がっているとする。そして、とうとうその答えが発表されて「ああー、これだったかー」みたいな笑いが起こっている時、ずっと
「もちろん、真実が判明する前には明かすつもりだよ。
クイズ番組で答えが発表された後に『俺、実はこれだと思ったんだよね』って言うような空気の読めない人みたいなことはしないつもりさ。
ただね。今、君に僕の考えを話したとしても、君は混乱するだけなんだよ」
こいつ、俺の心でも読んだのか? 少し驚かされた。しかし、わざわざ相手にするほどでもない。「はいはい」と言って俺は軽く
事務所を
——僕はもう、部屋荒らしの犯人が誰かわかった
「まさか。ありえない」
黒川の言葉に俺が反論を呟くとベッドに横になって
何一つ手かがりが無い状態から、犯人なんてわかるはずがない。
わかるはずがないのだ。
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