第3話「ストーカーは刺激しない方がいいんだ」
依頼者は
例えば、
では依頼人に直接会えば? 依頼人である彼女を見た感想は、口悪く言えば量産型の大学生。モノトーンを
制服やスーツ、流行のファッションスタイルは、他人を
しかし、ストーカーに対する精神的疲労のせいだろうか。彼女の様子を見るとその性格は「大人しめ」というよりも「
ちらりと、俺は黒川の方を見やると、彼は書類と本人を見比べて「ふむふむ」だの「なるほどねぇ」などと
「さて、大井青子さんですね。よろしくお願いします。私は
そして、自分の隣に座る彼は
「ああ、はい。……よろしくお願いします」
彼女は少し
「……
さて、ではこちらからいくつか確認と質問をさせていただきます。
答えたくない質問がございましたら、答えなくて結構です」
「はい」
「では早速ですが、依頼内容について確認します。
大井さんはストーカーに悩んでらっしゃる。ということですね?」
「はい」
「具体的には?」
「一人でアパートの前、必ず夜のことなんですけれど。
後ろからこっそりと、誰かが私の後ろを
「他にも?」
「はい、ほかにも私が
「複数回、ですね。しかし、ストーカーの実態がわからない。
だから警察は動けない、という状況でしょうか?」
俺がそうたずねると、大井青子は首を横に振った後、
「ええ、手かがりもなく。
それに、ほら、あの連日。ニュースでやっている殺人事件がありますよね。
あれのせいで、パトロールの強化ももしかしたら……って言われてしまっていて」
「……なるほど」
あまり大きな声では言えないが、実のところ。警察は防犯のエリートではない。防犯に関する知識は
さらに、「連日ニュースを騒がしている事件」とは、都内で発生している通り魔殺人事件のこと。詳しくはここで語らない。しかし、最初の殺人から一ヶ月近く経過しているも、現在まで捜査に
事件には解決の
「部屋が荒らされた、とのことですが。
そうですね、具体的に盗まれたものとかはありますか?」
「いえ、特に。何も……」
それを聞いた俺と黒川は目を合わせる。
「それは……とても
黒川はそう呟く。自分も彼の意見に同意する。
部屋に侵入しておいて、物を散らかすだけ散らかして立ち去ったのだろうか?
それは違うだろう。何か別の
「それでは最近、誰から
そう言った心当たりはありますか?」
「わかりません……無いと思うのですが」
ストーカーの在り方は大まかに二種類ある。一つは恋愛や好意などの、過度なプラスの感情に
では、彼女に
断定はできないが、前者のタイプではないだろうか。
そんなことを考えていると、今度は黒川が「
「少し、眼を見させてもらっていいかな。青子さん。
ちょうど、眼科に行く時のようにさ。そうそう、そんな感じ」
黒川は大井青子の
というか……何をしてんだ、コイツは。
「……何をしてんだ、コイツは」
心で思った時、
「うん、最初会った時から思っていたけど、白目が赤い。軽く充血もしている。
「そりゃあそうだろ……じゃなくて、そうでしょう。
彼女と同じ状況にいたら、誰だって眠れなくなりますよ?」
危なかった。ちょっと口調が
「いや、私も起きなきゃとは思っているんですけど——」
「え、眠っているってことかい?」
黒川は目を丸くして驚くと、彼女の顔は
そのあとも同じ調子でいくつかの質問を行ったが、これ以上ストーカーの犯人像につながるような情報は一つもなかった。
そこで、俺達は今後の
「部屋荒らしが起こったのは深夜とのことですよね。早速ですが、今晩から一、二週間ほど大井さんのアパートで見張りを行います。ですから、日が落ちてからの外出は
「わかりました」
「それからあと何点か、注意してほしいことがあります。
大井さんの身の安全のためです」
そう言って俺は、名刺入れから俺と黒川の名刺を出した。
そこには電話番号とメールアドレスが
「ストーカーに一度、部屋を侵入されている、ということは
しかし俺達は、彼女の部屋に行ってその様子を調べる必要がある。
それについては、掃除屋に
「もし、再び部屋が荒らされるようなことがあった場合。
大井さんは名刺の番号に電話を掛けてください。清掃業者に
大井青子は頷いてそれに答えた。
最後に、家に帰ったら誰かに電話して、「お金が
ストーカー対策で
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