第2話「黒川の前向きな性格は、見習いたいと思うぜ」
東京に建つビルの一室。
まだ朝が早いこともあって窓の外では
黒川の手によって
「なあ、白崎くん。
これは我が黒川探偵事務所の記念すべき一件目の依頼なわけだが」
そう、この
「なるほど。ストーカー対策ね、なるほど……」
それは探偵の基本的な仕事の一つだった。
警察は緊急性の高い事件じゃなければ
果たして、そのストーカーと思わしき
黒川が
彼の目指す探偵という人物は(とは言っても、俺は活字を読むのが得意ではないから、もしかしたら違うかもしれないが)そういう仕事はしない。
黒川の理想と現実。それはかなり
誰だって、乗った電車の行き先が目的地と異なることに気づけば心は動く。
だが、黒川の表情からは上に並べられたどの感情も感じさせない。
ならば、俺は?
ふと俺は自分の手に持ったコーヒーカップの
俺は探偵の仕事で満足できるだろうか?
自分のしたいことってなんだろう?
……まさか、二十五歳にもなってこんなことを
過去の自分は何かに頼ることについて、過ぎたところがあったのかもしれない。警察関係の
一方、俺の目の前にいる男。黒川英一は自分とは
彼は
「これがお前のやりたかった仕事かよ?」
俺は少し
「僕の理想はシャーロック・ホームズさ。
いや、違うな。正直のところ、僕は
だけど、それが叶わないなら、叶わないで別に構わない。変身願望を持った
「事件の謎を解くのは刑事の仕事だろ。
華麗に謎を解きたいならばそれを目指せば良かったじゃないか」
「ははあ。なるほどそうかもしれない。探偵に飽きたら刑事になることにするよ」
黒川英一はいつもヘラヘラしている。彼と知り合って、一年近く
「ストーカー対策なんて依頼、受けたくないって思っているか?」
「何でさ」
黒川は冗談だろ? と言うような調子でそう答える。
「聞いてくれ、これは
僕は人の悩みとか不幸とか、そういうものの深刻度は比較できないと思っている」
急に
「つまり、僕は今テレビを賑わせている『連続通り魔事件』に
「それは理想だろ。物事には優先度がある」
「ああ、理想さ。僕は常に理想ばかり見ている」
この章をまとめると、黒川英一という男はちゃらんぽらんで、形から入りたがる、中身の
こいつには、俺の持っていない、もしくは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます