コルコバード
雨の日はボサノバに限る
今日も俺は店にいる
俺はジャズ屋のマスター
重い扉が開いた。
「マスター 毎度!元気〜!」
向かいのエジプト料理屋の大将やわ
この時間に決まって挨拶に来る
ええのか 悪いのか よーわからん
【ボチボチや】
と言うと
「そうか!俺は最悪やで、
故郷のお袋は心配性で毎日、電話してくる、
娘は娘でバイオリンを弾いてるが音をはずしてこっちはイライラ
嫁は嫁で売り上げのことばかり聞いてくる、
煩いやつばっかりやで!
マスター今日も頑張ろな!」
【お前が一番煩いわ】
呟いてしまった
バタンと扉が閉まって又 静寂に戻る。
俺は静寂が好きだ。
全てに浸れる。
音に
酒に
空気に
この静寂があるから
まだ俺は正気を保れている。
皆 なんであんなに元気なんやろ?
そういえば
今日の歌い手も元気がある女の子だ。
どこから出てくるのか
いつも元気100%
その元気が俺を疲れさせるんやけどな
憂いも ワビサビも母親の胎内に忘れてきたんちゃうかな?と思うほどやわ
でも俺は貶せへんし褒めもせえへんよ
人前で歌うという気持ちを持って歌っている人は間違いなくプライドが高い
そのプライドはその人を支えている
だから そのプライドを折るようなことは絶対に言わないようにしている。
だって俺が全てではなく
俺があかんと思った人が売れていった事も
結構あるんよ
俺の判断が全てじゃないのだ。
でも
俺は俺の定規を信じている。
だから
その人のCDは買わない
俺には響かんから
音楽は不思議
どこで売れるか
どこで化けるか わからない
自分を信じたものを信じ切った人が
最後 夢を掴むんかなー?と
ふと思う
こんな
商売してたら
人の侘び寂びがよく見える。
さあ
今日もボチボチ店あけよか
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