キャンディ

皆んな 自分が主人公


俺はジャズ屋の店主

今日も店を開けている


ミュージシャンはお金はないけどとにかくモテる。楽器ができるということがそれだけの魅力なんかな?と思ってしまうほど

さほど男前でもないのにやたらとモテるベーシスト、今日のピアノトリオのベースもこのモテ男だ。確かに色気のある音を出す。指が綺麗だと女性は言うが、俺にはわからない。

モテるにはモテる奴らの悩みがあると聞くが

その手の悩みも抱えているみたいだ。

前回のライブの時もそうだ。

ファーストステージが終わって休憩に入った時に女の同士の言い合いが始まった。

「アンタはこの人の何を知ってるの?私は全てを知っているのよ!貴女の出る幕ではないの!」

「えー

全て?涼君 貴女の全てを知っているって言ってるけど、この女と寝たの?どうなん?」


寝てないよ マッサージしてもらってただけやで


この言葉でライブ場は炎上した


どこで泊まった?

いつ?

私の方が先だ

何買ってもらった?

何食べに行った?

好きだと何回言ってもらった?

何回ライブ来ている?

私の方が多い!

涼君 決めて!

どちらかに決めて!

どっちをとるの?


と言う言葉と同時にセカンドステージが始まり女性二人の怒りは音楽に隠れてしまった。

ベースの涼君だけ

ファーストステージより心なしか音が小さく聴こえたのは俺だけなんやろか?


結局 ライブはめちゃめちゃになった。

他のお客さんも愛想尽かして違う店に行ったみたいだ。


遊んでもいいけど揉めたらあかん

全て台無し

遊びにもセンスが必要やわ


涼君

これからどないするんやろ?

しっかりここの火消しをしないとこの業界で生きていけんでー


俺の横でアルバイト志願の奴が

「ご馳走さま」と

小声で言った。

何?

当たらずも遠からずの言葉やんと感心した。

涼君の明日に光があるようにと願ってバーボンを一口飲んだ。酸味が今日はある。


俺はジャズ屋の店主

今日はもめました。

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