マイワン アンド オンリーワン

春眠暁を覚えず


俺はジャズ屋の親父だ

今日も店を開けている



「マスター!マスター!」

夢の中で誰かが叫ぶ!

ドン!と言う音で眠りから戻った。

「誰???」

焦点が合わないので誰がいるのかわからない。

朧げに焦点が合ってきた。髪の毛が多い、女かな?徐々にピントが合ってきた。

あれ?まさかな?そんなはずはない。

古ぼけたレンズの焦点が合った。


腰が椅子から浮いてしまった。

「どないしたん?」

別れた女房だった。

「ビールちょうだい!」

棘が出た言い方で、

「目の下にくまができてるで!大丈夫なん?」

言葉は優しいがトゲトゲしい。


うーん 最近あんまり寝られへんねん!

疲れてるんやろうけど、疲れ過ぎかな?

それよりなんなん?

急に、ビックリしたわ!

電話してくれたら良いやん!


お金はないで〜


女房は

タバコの煙を天井に吹きかけながら

「わかってるわー、いつになったら払ってくれるの?」

「あてにしてないけど、たまには誠意を見せてほしいもんやわ」と誰宛てに言ってるのかわからないように言った。

新しい人とはうまくいってるんやろ?と聞くと

「ぼちぼちかな?お金に困ってたからお金ある人を選んだけどお金を追ってる人はお金にも追いかけられてるからゆとりがないわ!アンタの方がゆとりある生活してると思うで」

「あーもうちょっとアンタに生活力があったらわかれへんかったのになぁ」

悪いなー!

俺はこれしかできひんし、人と付き合うのも下手やし、お金にも縁がないし、人を幸せにはできひん人間なんやわ 自分の事すら満足にできひんもんな〜

「でもアンタ 一番大事なもんあるやん」



ジリジリーとベルが耳の芯が痛いほど鳴り

乱暴に起こされた。

うーん?

なんや夢やったんかいな?

「ごめんな〜」


えっー

アンタ 来てたんかいな!

修行志願のおっさんがカウンターに座っていた。

起こしてくれたらいいのに?というと

「ありがとう」と

なんでやねん 言葉間違ってるやろ!


あー

難儀やわ

又今日もこのおっさんと二人かー!

許してほしいわ


もう一度女房に会いたい

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