Not only Bourgeoisie But also Fantasy!

@Nanpou

序幕 各自の正義

 オレは叫ぶ。喉が裂けてもいい、一切合切あとのことは何も考えず、とにかく赤毛の青年に俺の意図を伝えたかった。


“そこにいてはいけない。おまえは死んでしまうのだ”と。

 ただっ広い荒野にて、声は通るはずであった。

 だが、おれたちの対峙するアイツは、金髪の気障きざな野郎は不気味な笑みを浮かべるのみである。 


 …瞬時に悟った。

 ヤツがまた何かしたのだと。


 いったい何度目だろうか。

 いったいヤツはどこまでおれたちを侮辱すれば気が済むのだろうか。

 まったく……これだから頭の良いヤツは嫌いなんだ。

 いつもおれたちを手のひらで転がし、面白がり、そして嘲るように侮辱する。

 

 ーーーいや、だがこれが現実なのだ。これが予想していたことなのだ。

 オレはもはや、考える前に身体が動いた。

 その彼を、頼りになった親友というべき兄貴分の彼を、オレは突き飛ばした。



 その瞬間、超速球でオレの身にバカでかい虚無とも言えるエネルギーが降り注ぐ。


 彼は目を見開いた。そして信じられないような顔をするやいなや、哀しみのかおにすぐさま変化する。

 


「ーーーあとは頼んだよ」


 そう、オレは言い残して。 

 





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