85話 乱戦
「はっ! 普通のヤツとは違うみたいだがたった3人で俺達を相手しようってのか!」
「正直自信があるわけじゃないんだけどな、ただこうしないとアルフヘイムにとっては痛手になっちまう」
「貧乏くじってか? すぐ楽にさせてやるぜ!」
「それは難しいと思うよ、やらなきゃいけない事はたくさんあるしね!」
「なっ!?」
10人だろうか、それ以上? 数を把握するだけの余裕は流石に無いが俺たちは多数のプレイヤーに囲まれていた。
何人かは俺達を無視するプレイヤーもいたが、俺たちがプレイヤーであるという事に気付いた者の大半は俺達を排除するべく群がってきていた。
しかし正直なところ彼らのレベルは大した事のないもののようであった、そこまでハイレベルになった気はないのだが、それでも普通のプレイヤーよりも俺達のレベリング意識は他プレイヤーのものよりも十分に高いものだったらしい。
「コイツらっ……つええ!?」
「銃持ったヤツを狙え!」
「ダメだ! 何だよこの武器! 銃にも剣にもなるってのか!?」
一撃で、とは流石にいかないが10回も攻撃を当てる必要なく次々とプレイヤー達が戦闘不能へと陥っていく。
こちらは周囲の味方はパーティーの為に思い切り暴れられるが、向こうはそうではない、パーティーメンバーでなければフレンドリーファイアが発生し味方にもダメージを与えてしまう為に思うように動けないのだ。
「パワースラッシュ!」
「甘いッ!」
戦技に対してはカウンターが刺さる、こちらのステータスに加えて相手の威力も高いが為にカウンターを決められればそれだけで相手のHPを大きく削る事が出来るのだ。
「背中がガラ空きだぜ! グァッ!?」
「そっちこそね、銃持ち相手に背中を見せるのはナンセンスだよ!」
「助かりました、流石はサラさんですね」
「いやあ、それほどでも」
サラはレーヴァテインを変形させながら器用に戦っている、銃で敵の攻撃を弾くと同時に剣へと変形させ、斬撃を浴びせると同時に再び銃へと変形させて距離を取った相手へ追撃と、ゲームでされればキレられてもおかしくは無さそうなくらいに綺麗に戦っている。
多少ダメージを負う事はあるが、回復魔法で十分間に合う上に適度にダメージを受けるおかげで俺の神器解放もついに使用可能となっていた。
「仕方ないか……みんな! 一回下がって!」
「アレをするのか!? カロル!」
「うん、この3人相手だと使いどころでしょ!」
カロルと呼ばれた少女は自信満々と言った様子で他のプレイヤーを一度退かせていた、大技の範囲魔法か、考えたくは無いが神器解放を使ってくる可能性も十分にあり得る。
「いくよ! エウリュアレー!」
「エウリュアレー? 聞いたことある名前だけど……何だったかな」
「ミネルヴァは知ってるのか?」
「聞いたことある程度にはね」
「ゴルゴーン三姉妹の1人でしょ、その怪物にした張本人がアテナ」
どうにも妹が怪物にされた事をアテナに抗議したところ、アテナがキレてエウリュアレーとステンノーをも怪物にしてしまったという逸話があるのだそうだ。
抗議の仕方に問題があったのかもしれないが、怪物に変えてしまうと言うのはまたどうなのだろうか、神の倫理観と言うものはイマイチ理解出来ないな。
「エリスさん、どうします? 神器解放は使えますが……」
「いや、ここで使ったらバート達とやり合う時に泣きを見る、無理やりでも耐えるぞ!」
カロルは強く光を纏ったかと思うと長い白い髪に白い布を纏った姿へと変わっており、その手には細身の少しだけ刀身の反った片刃の剣が握りしめられていた。
「いくよ!」
彼女は強く地面を蹴り、俺へと一気に跳びかかってきた。
「っぶねえ!」
「やるね、ただこんなもんじゃないよ!」
突撃の勢いを乗せた突きを体を逸らせて回避する、そのまま連続で繰り出される剣戟を寸でのところで回避しながらどうにか攻撃を凌ぐ。
「今ッ!」
「マジかよっ!?」
髪が不意に1匹の蛇へと変わり、俺へと噛みつこうとその体躯を真っすぐと俺へと突き出してきた。
無理な体勢であり、普通ならば回避できないが俺は蛇へと突っ込むように絶対回避を発動させてどうにかこの窮地を切り抜ける。
「今当たったと思うんだけどなあ!」
「当たっててもおかしくはなかったさ!」
僅かな隙に槍で攻撃を加える、神器解放によって底上げされた彼女のステータスは今の俺以上に高い、正直まともにやり合えば戦闘不能にまで一気に削られてもおかしくはない。
「ッ……鬱陶しい!!」
「仲間を守るのは当然でしょ? というわけでもう1発!」
「このっ!!」
「っと、私もいる事を忘れないでくださいね!」
サラの銃撃、そしてカオリの魔法がカロルへと命中し、少しだけ動きが鈍った。
「エウリュアレー! あの2人からした方がいいんじゃないの?」
「これ多分……エリスが狙われてるの私のせいっぽい?」
「可能性としては結構ありそうだよな」
カロルとエウリュアレーの間で上手く連携が取れていないのか徐々にカロルの口調からイラつきが見え始めた。
「あ」
「タイムアップみたいだな、もう少し相棒と息が合ってたらヤバかった……ここで勝負アリだ!」
カロルから白い布、白い髪が無くなり通常の装備へと見た目が変化していく、神器解放の時間切れだ。
俺は槍を構えてカロルへと思い切り踏み込みつつ突きを放つ、戦技の方が火力は出せるがあえて使わない事で相手の行動に多少は合わせる事が可能だ。
「きゃあっ!?」
俺の槍がカロルの防御を突き崩し、その体を思い切り貫いた……となればよかったのだが、俺の槍に伝わって来たのは槍を横から何かに弾かれたかのような感触、カロルの前には1人の男が立っていた。
「おいおい、女の子に本気の一撃ってのは可愛そうじゃないか?」
「バート、女の子相手に本気の神器解放したヤツのセリフじゃないと思うけどな」
「いくら可愛くても敵だからな、カロル、コイツらは俺達に任せろ」
「バートさん……ありがとう!」
彼女を守ったのはバートだ、クリフとカリーナもやや後方でこちらの様子を見ているようだったが、その手には武器が握りしめられていた。
「バート、リベンジマッチは受け付けてるか?」
「おいおい、戦争中にそんな呑気な事言うか? ま……負けたまんまってのも心苦しいだろうしな」
カオリがその言葉にピクリと反応する、武器がカチャカチャと音を立てているあたり挑発に乗ってしまったと見ていいだろう。
「カオリ、クールにな」
「分かっていますよ、次は負けません」
「俺達もしようか、この前の続き」
それぞれが前回と同じ相手と向き合い、構えをとった。
周囲からはプレイヤーもNPCも退避したようで戦場とは思えない静けさが俺達を包み込んだ。
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