83話 初動
「今回の作戦の最終確認だ! とは言っても難しい作戦ではない、敵を殲滅するだけだ!」
俺達はミズガルズの領土である広大な平原で衝突のその時を待っていた。
アルフヘイムのスパイによるとミズガルズ軍も俺達がここで攻勢に出るという事には気付いているらしく、正面からの激突という形となる。
遠くにはミズガルズ軍の姿もかなり小さいが見て取れる、今はお互いに動きを読み合っているといったところだろうか。
「とりあえずバート達と当たるまでは神器解放はナシだな」
「出来れば相手の神器解放が溜まる前に速攻したいんだけどなあ」
「それは難しいでしょう、最初の衝突で見つけられなければ相手も神器解放を使用できるまでは乱戦に参加しているでしょうし」
「考えられるのは初っ端からやり合うか、しばらく戦闘が続いてからやり合うかってところだろうな、常に不意打ちには注意した方が良さそうだ」
俺はレーヴァテインを槍へと変形させて準備運動がてら素振りを行う。
槍を使う事に特にこだわりは無いが、どうせならミネルヴァが神話で使っていたとされる槍の方が何となく勝てそうな気がしたから、というものだ。
サラはライフル、カオリはロングソードとの二刀流という普段と同じような形でいくようだ。
「人間の侵略の手から国を守れるのは俺達だけだ! この国を守るためにも全力で戦え! ただし勝てない勝負はするな! 無理だと思ったら撤退し、援軍を要請しろ! 以上!」
「気合入ってんなあ」
「そういうもんだよ、私たちは特別だけど彼らは普通なんだしね」
「普通、とは言ってもそれでも精鋭ですけれどね……そろそろ攻撃開始といったところでしょうか」
アルフヘイム軍のNPC達、そして一部プレイヤー達は雄叫びを上げて自らを鼓舞している。
中には俺達のように若干冷めているようなメンツもいたが、それでも武器を握る手には力が入っているのが見て取れた。
「突撃!!」
「「「おおおおぉぉっ!!」」」
シーグルの号令と共に騎兵、魔導ボード部隊を先頭に一気にミズガルズ軍へと向かって平原を駆ける。
相手も同じように前進を開始し、すぐさまプレイヤーや実力のあるNPCの魔法行使による大きな爆発音が平原に鳴り響いた。
「HPとMPの管理には気をつけろよ! 特にサラ!」
「分かってるって! その為のナイフだよ!」
ふと見てみるとサラは器用にも片手にライフル、片手にナイフという少々見た目的には無理のある装備をしていたが、走りながらもライフルを乱射している辺り問題は無いのだろう。
「バートさん達の姿は見えませんね、今は敵の撃破に専念します!」
「おう! カオリのカバーをしながら俺達も暴れるぞ!」
この中で一番熱が入りやすいのはカオリだ、となればカオリを軸にして俺たちがカバーしながら動くというのが一番安全で確実な戦い方だろう。
「こいつらっ……アルフヘイムの加護持ちッ!?」
「生憎手加減する余裕は無いんだ、ごめんね?」
サラのナイフが流れるような動きで敵兵の急所を確実に切り裂き、そして突き刺される。
あまり急所という概念は無いのだが、単純に高ステータスである事に加え連撃という事もあって兵士は膝をついて光となって消えていく。
俺達の周囲の敵兵士はその殆どが光となって消えている、中にはほぼ全身の耐久値を削られながらも生きている兵士もいるにはいるが、それが更に相手の戦意を削ぐには十分な物であった。
「神器解放は使えそうか?」
「私はもうそろそろかな、カオリは?」
「私はもう使えますよ、ただ少しMPを使いすぎたかもしれないのでもう少し戦いたいところです……エリスさんはどうです?」
「まだもう少しかかりそうなところだ、出来ればどこかで稼ぎたいところだ」
カオリは序盤に範囲魔法を中心とした高範囲殲滅の戦い方をしていた為に神器解放のための力は既に溜まっているようだ。
サラはライフルで狙撃している為に自然と数が稼げていたようだが、俺はカオリと違って魔法をケチったおかげで神器解放まではしばらくかかりそうであった。
「しかしどうにも……楽に敵を倒せるな」
「そういえば……プレイヤーと会った? 味方のじゃなくて敵のね」
「そういえばNPCばかりでしたね、これだけの戦場ですし既に1人か2人は当たってもいいと思うのですが」
見回してみるがミズガルズ軍の中にハッキリと実力の読めない兵はいない、全員能力看破でレベルまで見られるという事は全てがNPCであるという事だ。
「エリス、もし戦争ゲームだったらどう攻める?」
「こういう状況であれば……強い兵だけの部隊を作って敵将まで一点突破ってところか」
「そんなメチャクチャな事をするんですか?」
「でも悪い手では無いと思うよ、リーダーの存在っていうのは結構大きいんだ、リーダーがやられるだけでも士気は大きく落ちる……そして倒した側の士気は大きく上昇する、そんなもんだよ」
考えたくは無いがバート達だけではなく他プレイヤーも加わった集団というのはNPCからすれば鬼の集団だ、普通のNPCでは足止めすら出来ずに屠られるのがオチだろう。
「一応戻ってみるか、杞憂ならいいんだがな」
俺達はシーグルがいる本丸へと一度様子を見に戻る為、戦線から一時離脱する事となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます