第13話 チュートリアル終了?

「無事に戻って来たか!」


「ちょっと苦労したけどな、こっちは大丈夫だったか?」


「あぁ、おかげでな、ホラ、報酬だ!」


 村に戻り隊長の所へと行くと厚い歓迎を受けた、報酬は5万zと非常に高額なものだった。

 同時にレベルが俺も上がったようで11レベルとなった。


「もしよかったらだがお前ら、訓練を積んで正式に衛兵にならないか? 2人のような実力があればすぐに認めてもらえるだろう」


「考えておくよ、俺はどちらかと言えば自由な方が好きなもんでね」


「紹介状を渡しておこう、もしもその気になったらそれをヴァルディアにある騎士団の本部へ行くといい」


「騎士団かぁ、カッコいいね!」


「本当にありがとうな、これでこの村も安泰だ!」


 隊長の元を離れる、思わぬ巨額報酬は嬉しいものだ。

 どうやらサラは他人と話す際は女の子になりきっているようだ、正直言って女の子らしくされると女の子にしか見えないから困るのだが……意味が分からないかもしれないがそうとしか言えないのだ、許して欲しい。


「いやぁ、すげぇな……5万z!」


「ほんと、素に戻るとこれだもんなぁ」


 金属鎧を纏った銃を撃つ中身が野郎の美少女、属性モリモリってやつだ。


「これもお前のおかげだ! お礼に彼女になってやるよ!」


「やめてくれ気持ち悪い」


「美少女だぞ? 気持ち悪くはねえだろ」


「見た目はな、中身もしっかり女の子なら考えてやるよ……しっかしこれ、もしかしてチュートリアルだったりしてな」


 敵の強さの上がり具合、報酬金額、そしてレベルの上がり方、どれもバランスがいいように思えたのだ、ギルドにいきなり向かわずに村で感覚を掴むというのが狙いだったのかもしれない。


「ったく、ゲームっぽい世界ではあるけどコイツは現実なんだろ? お前の頭は役に立つがたまに廃人みたいだぞ?」


「マジか、注意するよ」


 ゲーム的な要素が強いせいで現実なのかゲームなのか時々見失っていないかと言われれば否定はできない、実際絶対回避のスキルはゲームであろうと試した結果の産物だ。

 これが現実であるという事はミネルヴァからも説明されたが、ゲームで出来た事を再現出来る事が多いというのは十分に俺の認識を狂わせるものであったようだ。


「ま、お前がそういう思考にハマったら俺が引っ張り出してやるよ」


「現実的な思考の出来るヤツがいて助かったよ」


「俺はお前と違ってマトモだからな」


「違いねぇ」


 最終的には勝ち残ればいいんだ、難しく考えたところで仕方ない。


「さて、とりあえず打ち上げといくか! 今後の方針も決めたいしな」


「おう! 肉食おうぜ肉!」


「予算は1万zまでだ、残った金は旅の為の食糧費と装備代にするんだぞ!」


「そう考えると先に必要なモン買った方が良さそうだな」


「じゃ、先に装備更新といくか」


 サラは銃を新調し、更に防具をより良い物へと交換し、俺はヒーターシールドを売却し、より耐久性の高いヒーターシールドへと交換した、防具も胸と腕以外の部位を良品質のレザーアーマーへと交換した。


「幾ら残った?」


「1万zだけだ」


「サラはそんなに残ったのか」


「エリスは幾ら残ったんだ? 飯が食えねえって事もないだろ」


「5000zだ」


 2人とも綺麗に散財していた、打ち上げしようにもパンに肉を挟むくらいがいいところだろう。

 いつものようにパンを購入し、一緒にソーセージを購入し、家へと戻る。


「なんていうか、金ってのはいつもすぐに無くなっちまうな」


「肉厚なステーキにかぶりつきたいもんだな」


「その為にはもっと強くなって稼がなきゃ!」


「案外この世界は食費を稼ぐのも大変ですからね、日々の鍛錬は裏切らないはずです」


「そういえば筋トレって意味あんのか?」


「どうだっけ?」


「そうですね……意味が無いとは言いませんがレベルを上げた方がいいですね、時間に余裕のある時にする程度でいいと思いますよ」


 狩りにもいけない、しかし待つには暇、そんな時にする程度でいいのだそうだ、もしも狩りに行けるのであればそちらに行った方が伸びがいいそうだ。


「じゃ、次はこの後どうするか……だな」


「ギルドに行くなら……どこだったか」


「ナルビアですね、ここから近いのは」


「隊長が言っていたヴァルディアってのはどの辺だ……?」


「ねぇ、地図使わないの?」


「「「あ」」」


 ミネルヴァの何気ない一言に全員が反応した。

 探してみるとアイテム欄に世界地図があった、どうせ何も持っていないだろうとロクに確認していなかったのが仇となったか。


「ミネルヴァは賢いな、流石は知性の神」


「えぇ、そこに気付くとはやはり天才ですね」


「まじカッケェわ、パネェぜ」


「それほどでも!」


 見た所世界は3つの大陸から形成されているようだ、世界地図の大部分を占める大陸が1つ、南東の方にあるそれなりの大きさの大陸が1つ、北西の方にやや小さめの大陸が1つだ。所々に島も見受けられる。


「今私たちがいるのがココ!」


 ミネルヴァが世界地図の上に魔法でピンを刺す、そしてナルビアとヴァルディアにもピンが刺される。

 ナルビアは世界地図という事もあってほぼ同じ位置に突き刺さっており、ヴァルディアはほんの少しだけ離れた場所に刺さっていた。


「あー……近辺の地図でも買ってくるわ」


「おう……そうだな」


 冷静に考えればわかっていた事だがどうにも感覚が狂っているようだ、ゲームで言うようなワールドマップではないのだ、世界はもっと広い、そんな中でそう遠くない場所へのピンなど同じ場所に突き刺さっておかしくはない。

 というかミネルヴァも何故自信満々にピンを刺したのだろうか、全員どこか抜けているのかもしれない。

 

 近辺の地図はすぐに手に入った、1枚100z程度のもので大した出費にはならないのが救いだ。

 サラの分も購入し家へと戻る。


「さて、とりあえず……見た所だとヴァルディアまでは結構あるみたいだな」


「だな、歩きでもナルビアまでは1日もかからなさそうだ」


「ちなみにギルドだけどヴァルディアにもあったはずだよ! だから一気にヴァルディアまで行っちゃうのも手かもね!」


「移動手段に馬車もありますしね、お金はかかりますがそれを利用するという手もありますよ」


 結構便利なようだ、ただ馬車とは言ってもファストトラベルのようなものではなくあくまで歩かなくていいというだけのものだ。

 いずれは雑用魔法辺りにテレポートも使えるようになると願いたい。


「個人的にはヴァルディアを見てみたいな、ギルドもそこにあるなら騎士団と冒険者の両方を見られるわけだしな」


「俺はそれでいいぜ、早速明日出るか?」


「あぁ、燻っていても飯代で金が消えちまうしな……これで決まりだな」


 明日俺たちはこの村を出る事となった、もう味わえないかもしれないこのベッドの温もりを今の内に感じておこうと布団に包った。

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