第3話 初の戦闘
俺は雑貨屋でポーションを、防具屋で防具を購入し所持金を大幅に減らしていた、最初5000zあった所持金は今ではもう既に500zしか残っていなかった。
途中雑貨屋や食材屋などで値段を見た所1zは1円という感覚でいいようだ、そう考えるとこの剣は1000円って安すぎやしないかね?
「ま、深い事は考えちゃダメだよ」
「そういうツッコミは野暮ってか」
ミネルヴァとの会話は念じるだけで可能だが俺は他に人がいない時は口に出して会話するようにしている、話し相手がいるというのは退屈しないものだ。
「しっかし結構ベラベラ喋ってるけど大丈夫なのか?」
「うん、私たちもプレイヤーみたいなものだからね、エリスよりも仕様は知ってるけどそれは絶対じゃない、だから私の言う事が間違ってる事もあるから気を付けてね!」
「マジか」
あくまで先輩プレイヤーのようなものなのだろう。
「次、どうする? ギルドに入ってもいいし、軍に入隊してもいいし……」
「そうだな、まずはフリーランスで活動しよう、丁度依頼もあるみたいだしな」
村の掲示板に目をやるとスライムの討伐依頼が貼ってあった。
この世界で分かっている金の稼ぎ方はいくつかある。
・律儀にどこかの店で働く(バイトや従軍もこれに該当する)
・冒険者となり仕事をこなす(ギルドに入るかどうかは任意、ギルドについては詳しい事を知らない為現状保留)
・略奪する
この3点だろう、折角のゲームで前世のような生活をするのは勿体ない、俺は掲示板のスライムの討伐依頼を剥がす。
すると紙が文字通り消滅した、それと同時に視界の端に【スライムの討伐依頼】という項目が映りこむ。
「あー……そういえばだけど、この、UIって表示変更とかできるのか?」
「情報の事? 出来るよ? どうしたいのかイメージしてくれるかな」
手を下からかざすとモニターのようなものが出現するというのをイメージする。
ミネルヴァはしばらく静かにしていたがすぐに語り掛けてきた。
「こうかな? また変更したくなったら教えてね!」
俺が手をかざすとクエストの内容が表示された、依頼者の家はここからそう遠くはないようで報酬はスライム1匹に対して20zと非常に安い金額だった。
「安ッ……」
「スライムだしね、行く?」
「いや、ちょっと試したい事もあるしな」
俺は依頼者の家へと向かう、仕事内容はスライムの討伐とだけ書いてある、数の指定が無いのだ。
情報も殆ど無いようでスライムならばどこでもいいのかも気になるところだ。
依頼者の家の前に50代ほどの男性が立っている、彼が恐らく彼が依頼者だろう。
「どうも」
「あぁエリスか、こんなところに来るなんて珍しいな」
「ちょっと聞きたい事があってね、この依頼を見てきたんだけど……」
そう言いつつも依頼書は消滅してしまったのだ、これでは依頼書を見せるというアクションが行えるのか怪しい。
「大丈夫、依頼ファイルから取り出せるよ」
「これか……これなんだけどさ」
意識すると依頼ファイルがすぐに見つかった、何とも便利な世界でアイテムの出し入れは意識するだけで可能なようだ。依頼は受けると同時に自動的に依頼ファイルに保存され、破棄するともとあった場所に戻るようだ。
「スライム討伐してくれるのか? それはありがたい、畑を荒らされて困っているんだよ」
「その畑の場所ってどこらへんかな、あと何匹倒せばいいかも書いてないし……」
もしも大量にいるのであれば数匹狩っただけでは満足してはもらえず報酬がナシという可能性も否定はできない、というか狩った数って自己申告でいいのだろうか。
「そこは心配しなくて大丈夫、きちんと依頼書の方に数が勝手に記載されるから適当に狩ってても数がわからないって事にはならないよ!」
ミネルヴァが説明してくれた、ある程度脳死プレイしても大丈夫そうだ。
「おぉ、それは悪かった、ちょっと貸してくれ」
男性が依頼書を手に取る、何かを書き足しているようでしばらくすると依頼書を俺へと返してきた。
「これで頼む、受けてくれるか?」
内容は変更されており、村付近のスライム討伐、最低討伐要求数は10匹、そして10匹ごとに100zの追加報酬があるそうだ。
1匹20zが最低10匹で200z……さらに追加報酬で最低報酬金額は300zといったところか。
「了解、行ってくるよ!」
「頼んだぞ!」
俺は村を出てスライムを探しに行く、村を出て少し歩くとアッサリとスライムを見つけることが出来た。
弱点看破のおかげかスライムの弱点が頭の中に自然と浮かび上がってくる、炎と電気による攻撃が弱点のようだ。
バスターソードを抜き構える。
「斬っても問題ないのか?」
「うん! やっつけちゃえ!」
ミネルヴァが拳を突き出してテンションを高めているのが目に浮かぶ気がした。
「はぁっ!!」
俺はバスターソードをスライムへと向かって振り下ろした、確かに切り裂いたような気がしたが、スライムは切断される事なくボムッと地面を転がり光となって消えていった。
「倒したのか……?」
「確認してみなよ、依頼書!」
依頼のデータを確認するとどうやら討伐した事になったようだ。
「確かに切ったと思ったんだけどな……」
「そういえば言ってなかったっけ、剣で切ろうと弓で射られようと自分にダメージが来るかはHP次第、極端な話思いっきり両断されてもHPが減っていなければ血もでないし斬られたところもなんともないよ」
ゲームでよくある思いっきり切りまくっても相手に傷一つつかない現象だろうか、しかしそれでは部位を狙うメリットが無いという事になってしまう。
「四肢がもげたりはしないけど動かせなくなったりはするよ」
どうやら部位ごとにも耐久値が存在するらしく、ダメージとしては反映されるようで部位を狙うメリットはあるようだ。
「出血はしないのか?」
「出血の状態異常を受ければするよ、状態異常は色々あるからその都度でいいかな?」
俺は剣を握りしめて次のスライムを狙う、どうやらスライムは攻撃的な魔物ではないようで一撃で沈められれば一方的に蹂躙できるようだ。
「魔法も使ってみるか……【
手から電撃が走りスライムへと命中する、弱点を突いているおかげかまたしても一撃で屠ることが出来た。
「詠唱は無いんだな」
「基本はそうだね、でも一部の魔法には詠唱があるから気を付けてね!」
どうやら行使する事はどの魔法も無詠唱で可能なのだそうだ、しかし一部の魔法は詠唱する事によってその効果を高める事が出来るらしい。
俺は何匹かのスライムを倒したところで体に違和感を感じた、不快なものではなくむしろ気持ちいいもので消耗していた魔力が回復するのを感じる。
「おめでとう! 初めてのレベルアップだね!」
「ありがとう、やっぱりMPが回復してるな……」
「HPも回復するよ! まぁ今回はダメージを受けてなかったみたいだけど」
全体的にステータスが向上していた、その中でも攻撃力と防御力を中心とした近接戦闘向きのステータスの伸びがいい。
戦闘の感覚に慣れるためにも多めにスライムを狩る、その数は30匹、リスポーン速度よりも俺が狩る方が早いのか後半は探すのに時間がかかったというものだ。
どうやらアイテムをドロップするようで光となって消えたスライムが稀にポーションやスライムボールというスライム特有の素材をドロップしていた。
俺は一度村へと戻りスライム討伐報酬を受け取りに戻った。
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