ゲームのような世界

第2話 ゲームスタート

 世界には魔力が溢れている、魔力は雨となり川と海を作り出し、さらに魔力は動物や植物を作ったと言われている。

 その中でも人族と言われるもの達は魔力を使った"魔法"を生み出した。

 魔法は魔力を操りまさに奇跡を意図的に起す事を可能とした技、人は魔法を操り急速的に文明を発達させる事となった。


 しかし、平穏な時代は急に終わりを告げる。

 人々は魔法を"力"として行使し始めたのだ、まさに力が物を言う時代が訪れてしまったのだ。

 神はそれを見兼ねたのだろうか、丁度その頃世界各地で"魔物"の存在が確認され始めた。


 魔物は争う人々を襲い、文明を破壊した。

 人族が滅亡の危機に瀕したその時、彼らを救ったのは皮肉にも"魔法による力"だった、人々は団結して魔物を退けどうにかこの危機を乗り切った。


 それから長い時が過ぎ――――




「今のがオープニング?」


「ちょっと、そんな事言わないの!!」


 前世でゲームをプレイをクリックした時のようにまた意識がカットされていたようだ、気が付く少し前に映像とこの世界の成り立ちのようなものが頭の中に流れ込んできていた。


「魔力が動物や植物をって……つまり俺たちも魔力の塊なのか?」


「その通り、一応細胞だとかはあるけどぜーんぶ魔力、前世での常識は殆ど通用しないって思ってくれていいよ!」


 光の玉が俺の周囲をフヨフヨと飛んでいる、恐らくはミネルヴァだろう。


 俺は木造の部屋にいるようでタンスには服や簡単な本などが入っていた。


「ここは?」


「エリスの家、両親はいるけど……いないって認識で大丈夫だよ」


「長めの旅行とか?」


「んー、そんな感じかな、あと私との会話は別にいちいち口にしなくても大丈夫だよ」


「(あーあー、聞こえる?)」


「OKOK、何かわからなかったりしたらそれで聞いてね!」


 どうやらミネルヴァの姿は俺以外には見えないらしい。

 俺はエリス、14歳で両親は不在。友人は何人かいるらしく普通の少年といった感じなのだそうだ。


「さて、ステータスだけど何となく意識したらわかるよ、自分のHPにMP、使える魔法だとかね」


「どれ……」


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 レベル:1


 名前:エリス 称号:新米 種族:人間 加護:ミネルヴァ


 スキル:【主人公適正】【記憶相続】【弱点看破】


 魔法・剣技:《中級剣術》《中級槍術》《初級攻撃魔法》《中級防御補助魔法》《中級攻撃補助魔法》《雑用魔法》

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 HPやMP、攻撃力や防御力、身軽さなどのステータスもあったがそこは割愛する、レベル1と言うには正直かなり充実しているような印象を受ける。


「攻撃魔法だけ初級なのか……」


「そうみたい、でも修行だとか鍛錬だとかしたら一番伸びるかもしれないし悲観する事は無いよ!」


「いや、でも他は初手スタートで中級使えるって普通に強いんじゃないか……?」


 普通ゲームで使える魔法だとかは少ない、データの容量だとかもあるだろうがそれでも小さな火球を飛ばしたり氷の粒を飛ばしたりといった程度のものが普通だろう。

 それにそれ以外はいきなり中級というのはいかがなものか。


「待てよ……?」


 試しに中級攻撃補助魔法の中の1つを確認する、【フレイムウェポン】読んで字のごとく炎を武器に付与する魔法らしい、下級に【ファイアウェポン】も存在しており前者の方が消費魔力が大きいが攻撃力の上昇幅が大きいようだ。

 ここで気付きたくない事実に気づいてしまう。


「MP足りへんやんけ!!!」


「まぁ……そこはほら、頑張ろう?」


 思わず関西弁が飛び出してしまった、剣術や槍術も必殺技のようなものは全て筋力、技量が足りていない、しかし相手に与えられるダメージの補正は働くようで完全に腐ってしまっているという事は無いようだ。


「そういや武器はどこに? 見た所無いようだけど。」


「そりゃ買ってないからね、ちなみに持ち物だけどあんまり気にしなくていいよ」


「ゲーム同じみのどこにしまってるんだよ現象があるとか?」


「流石、鋭いね!」


 魔力の素晴らしい力によって一定量までならため込めるらしい、何とも便利な世界のようだ。


「最初の所持金は5000ゼニス!これで好きな武器を買ってもいいし、何も買わずに魔法で旅に出ても構わないよ!」


「そういえば自由なんだったな……するつもりはないけどこのままここで暮らすっていうのは?」


「勿論アリだよ? どんな風に生きていくかはエリス……いや、プレイヤー次第だからね、ただ注意して欲しい事があるの」


「なんだ?」


「これはゲームみたいだと思うだろうけど……ちゃんとした1つの世界、死ぬ時は死ぬって事だよ」


 ミネルヴァの声が少し低くなる、それと同時に何か悪寒のようなものを感じたのはきっと気のせいではないのだろう。

 実際俺は死んでしまったというのはほぼ事実だろう、夢だとしても覚めない夢というのは怖い、それに今生きている実感があるというのが何よりも一番ゲームではないという事を本能的に感じさせる。


「どうして記憶相続が固定じゃなかったか……わかる?」


「いや?」


「この世界に没頭できるようにする為だよ、勿論それがアドバンテージになるかどうかはその人次第、ちなみにスタート時点……今では差は無いよ、あくまでこういう生活をしてたんだ、っていう普通の記憶が穴埋めに入るだけだしね」


 それをしているプレイヤーがいる可能性は十分にあるという事だろう、何人のプレイヤーがいるのかはわからないが気は下手に抜かない方がいいだろう。


「ミネルヴァのオススメはあるのか?」


「そうだね、ギルドに登録とかしてみたらどうかな、お約束ってやつでしょ」


 俺が読んでいた小説サイトの小説は殆どが最初は冒険者ギルドに登録していた、この世界にもそういうものがあるらしく討伐を生業とするのであればこれが一番安定するのだそうだ。


「ま、とりあえず外にでも出るか」


「さぁ!冒険の始まりだ!!!」


 ミネルヴァは元気いっぱいだ、この世界についてはまだまだ分からない所が多い、本当はしっかりと仕様を理解してから外に出たかったがあんまり質問攻めにするのもミネルヴァに悪い。


 外に出ると爽やかな風が頬を撫でる、今の服装は簡単なシャツにズボン、防御力はどちらも1らしい。


「とりあえず武器屋でも探すか」


「あっちだよ!」


 村の地面はアスファルトで舗装されているわけではなく土が剥き出しのものだ、ほとんどの家が木造建築で俺の家も木造の一戸建てのようだ。


「ゲーム……か」


「どうしたの?」


 どこかしらに宝箱が配置されているかもしれない、そんな期待が俺の中に広がる。


「宝箱とあるのか? こう、街だとか誰かの家の隅っこにポンって置いてあるような」


「あるよ、でも開けるならダンジョンの物だけにした方がいいと思うよ? ま、エリスの自由だけどね」


 武器屋へと向かいつつ様々な思考をする。

 俺はどちらかと言うとこういうファンタジー要素の強いゲームはしていなかったのだ、ここで気になるのは"フレーム回避"が存在するのかどうかだ。


 そんな事を考えつつ武器屋へと到着する、屈強そうな小さな男が金槌を手に剣を打っている。


「(え、小人族か何か?)」


「ドワーフだよ、金属が好きな種族でそのせいなのか鍛冶職人になる事の多い種族」


「へぇ……」


「っと、お客さんかい? おいペス!!仕事だ!!」


「はぁい!!」


 金槌を打つ手を止めずに声をかけられた、彼が叫ぶと奥からまた小さな女の子が現れた、彼の娘だろうか?


「彼女もドワーフだよ、彼らは夫婦」


「ほへぇ……」


「っと、君は確かエリスだったね? うちで武器を買ってくれるの?」


 ペスと呼ばれた彼女は俺の事を知っているようだった、俺が答える間もなく武器のラインナップを紹介し始める。


「マジ……?」


 並べられた物は剣や斧、槍に弓とファンタジーな物が多かったが意外な事に銃までもがそのラインナップの中に存在した。

 それはあって当然というように取り出され、俺は若干困惑していた。


「(銃って……めっちゃ強くね? バランスとか大丈夫か?)」


「ん、大丈夫大丈夫!」


 ミネルヴァは全然気にしていないようだった、それぞれの武器を意識して見てみると武器ステータスが表示された。


 見た所どれも同じような攻撃力だった、銃が飛びぬけて強いというわけでもないようで単発火力で言えば弓の方が高く、ライフルは弓と似たような物、ピストルは火力は低いが連射力で威力を補うようだ。


「ってなると……コレにするよ。」


「ありがとー!」


 俺が選んだのはバスターソードだ、片手でも使える両手剣だ。

 槍と迷ったがスキルのおかげでどちらでも性能に差はあまり無いように思えた為好みで選んだ。


 視界の右上の方に5000Zという数字が表示され、すぐに-1000と表記が出現する、どうやら買い物での引き算を勝手に行ってくれたようだ。


「ありがとな」


「また来てね!」


 俺はバスターソードを腰に帯剣し店を出た、次に買うべきは防具だろう。


「防具屋はどこに?」


「あっちだよー!」


 ミネルヴァの案内で俺は防具屋へと足を向けた。

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