転生した世界はまさにゲームのような世界だった。
てんねんはまち
序章
第1話 主人公死す
俺は須藤 正弘! 典型的なニートの22歳!!
意気揚々と自己紹介したはいいが俺はそんな陽気なキャラじゃない、どちらかと言えば、いや、圧倒的に陰キャだろう。
日々ゲーム三昧でFPSに音ゲー、レースに弾幕、そしてTRPGにMMO……一通りのジャンルは触った気がする、どれもメチャクチャ上手いというわけでもなく、だからと言って下手だと思った事も無い。
バイトをしていた時期もあったがどれも長くは続かずにすぐにやめてしまった、そのせいで働こうにもこの近辺で既に触っていないバイトは無いと言っても過言ではない。
「はー……ゲームみたいなファンタジーな世界にでも生まれてりゃな」
閉じ切った部屋に俺の呟く声が空しく響く、基本的に俺がプレイするゲームはPvEのものが多い、PvEとは敵が人の操作するものではなくCPUが敵を操作するようなゲームの事を言う。
PvEが好きな理由は単純に神経をそれほど使わなくてもいいからだ、物によってはPvEでも神経を使うものはあるがそれはそれで好きだった。
もしも俺がある程度しっかりとした人間であればちゃんと働きもしたのだろう、実際世の中には仕事をキチンとしつつ課金したりゲームを買ったりとするべき事をして娯楽を得ている人が殆どだろう。
しかし俺は働きもせずに美味いものを食って欲しいと思ったゲームを買う事が出来る、それは何故かって?
不慮の事故で両親が死んだのだ、それで遺産やら保険やらで大金が俺の口座に入ったわけだ。
ちなみに俺はその事故でグレてしまっただとかそういうタイプではない、元から性根が腐っていたのだ。
いつからだろうか、小学生時代はここまで腐ってはいなかった、中学? 高校か? それとも中退した大学だろうか、高校の頃は怠け癖はあったがやる事はちゃんとしていた、となれば大学時代だろう。
そんなくだらない事を考えつつゲームや動画の販売アプリ「スチャーム」を漁る。
そんな中1つのゲームが興味を引く、その名は【Reincarnation】日本語に訳すと【転生】らしい。
ファンタジー世界を舞台に主人公が冒険をするというよくあるようなものだ、オープンワールドなのか主人公のとれる行動は非常に多いようで従軍して国に仕えたり、どこにも属さずフリーランスとして生活するも良し、直接明記されているわけではないが、世界を滅ぼす魔王にもなれそうな事が紹介文に書かれている。
ゲームをダウンロード、そしてインストールする。
最近の暇つぶしに小説投稿サイト【ヘイ! 小説読もうぜ!】を読み漁る、今小説を書くのがブームなのか様々な作品が投稿されている、面白い作品が多数あり意外に暇つぶしになるものだ。
ふとインストールの状況を確認すると既に完了となっていた。
「早速プレイしてみっか」
俺はプレイのボタンをクリックする。
気が付けばそこは真っ暗な世界だった、夢の中かと思い腕を抓ってみる。
「イッテェ!!!」
痛覚はあるようだ、俺はどうなったんだ?
俺はゲームをプレイしようとしてクリックした所までは覚えている、拉致されたのか? ここには光は全くないようだが何故か自分の体はハッキリと視認することが出来る。
服装は俺が先ほどまで着ていたものと同じだ、意味が分からず混乱していると声が響いた。
「ようこそ! ユラシオンへ!」
「――ッ!?」
心臓が飛び出そうになる、いきなりわけのわからない状況で声がしたのだ、どこから響いた声なのかもわからないのだ。
「名前は何て呼べばいい?」
「誰だお前は!! そもそもここは一体どこなんだ!!? 説明しやがれ!!」
「まぁまぁ落ち着いて……私は……そう、ミネルヴァとでも呼んでもらえばいいかな」
ミネルヴァ、そう名乗った女性が自分の前方にスッと姿を現す。
その姿はまさに美少女と呼ばれるに相応しく、神々しさを放っていた。
美しすぎて恐怖を感じるような不気味さがある、その恐怖がこの空間によるものなのか本当に彼女に恐怖しているのかはわからない。
「何がどうなって……」
「はぁ……とりあえず説明するよ」
彼女は説明を始めた、結論から言えば俺は死んだらしい。
どうにも俺の見つけたあのゲームは新しい世界の住人を増やす為のものだったらしい、一定の条件を満たしたものにその選択をする権利が与えられ、俺はその選択でYESを選んだのだそうだ。
「それで俺の人生終わらさせられたのか……もっとちゃんと説明だとか」
「生きてたってつまんなかったでしょ?」
割って入って来たミネルヴァの言葉を否定出来なかった、今こうして死んでしまったのだと理解しているからか思考がハッキリとしてくる。
恐らくキチンと説明を受けていれば俺はこの選択を蹴った、しかしそれはコレを嘘だと決めつけてのもの、いや、死ぬのがただ怖いだけという理由だ。
「ポジティブに考えれば人生の転機ってわけか……」
「そっそー!理解が早くて助かるよ!」
ミネルヴァは手を叩いて微笑む、少なくとも彼女はタダ者ではないのは確かだ。
「んで、名前はどうする?」
「名前?」
「今から君がスタートする世界はそうだね、君のしていたゲームの世界に非常に近い、ゲームを始める時に名前を決めるでしょ?」
「あぁ……適当でもいいのか?」
「いいけど、俺の名前は【あああああ】だとか名乗るの? 一応元から世界にいる人間なら違和感なく対応してはくれるけどオススメはしないね。」
多分よくSNSサイトで見る名前を変な名前にして遊ぶ事が実際に出来るのだろう。
しかし、もしも他のプレイヤー……転生者から見られれば可哀想な目で見られるだろう、そいつは勘弁願いたいというものだ。
「名前はどんなのが多いんだ? アレックスだとかジョンみたいな西洋風?」
「そうだね、多いのはそういう名前だと思う、でも君のいた国をモチーフにした場所もあるから和名でも違和感はないと思うよ」
少なくとも紹介文を見た限りでは"何でも出来る"と見ても良さそうなものだった、となればプレイヤーキルだって起こりえるだろう。
「ま、気にしなくて大丈夫だよ、どうせみんなレベルが上がってくればイヤでも目立っちゃうしね」
「浮かばないな、ミネルヴァにつけてもらっていいか?」
「えぇ……じゃあエリス、いい?」
「OK、他に決めるものは?」
「えっと、ステータス割り振りに初期スキル、自分の容姿に……」
思っていた以上にゲームだ、ステータスはやや知力寄りのバランス配分、初期スキルは【
「さてエリス、ユラシオンへ行く準備は出来た?」
「ユラシオンって何なんだ?」
「今から行く世界の名前だよ、ちなみにプレイヤーはみんな同じスタート……つまりは産まれる瞬間は一緒、差が出たら不公平だからね」
「ちなみにステータスの伸びとかは?」
「それは運と……どの神が相棒か次第だね、エリスの場合は私」
「その姿でついてくるのか?」
「流石にそれは出来ないよ、私は小さい妖精にでもなろうかな、光の玉に羽が生えた感じで」
やはり彼女は神らしい、ミネルヴァという名前をどこかで聞いたことがあるが俺にはイマイチピンとは来なかった。
神は加護を与えたり助言をする程度の干渉は可能だが、直接戦闘に参加したりするのはルール違反になるそうだ。
「ま、詳しい事は向こうでね」
「わかった」
どうせゲームをプレイしようとしたのだ、これもゲームなのであれば全力で遊んでやろう。
俺は覚悟を決めてゲームスタートを待った。
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