第25話 姉属性
鞘華が頭を抱えてしゃがみ込んでいる中で、どうすれば上手く解決出来るか考えていた。
リーンはヒロインなので連れて行かなければならない。
しかし、俺に惚れているという事で鞘華は反対している。
俺のスキルで惚れてない事には出来るが、それだとゲームクリアが出来ない。
鞘華の言う通りプログラム解除をした方がいいのだろうか?
一旦プログラムを解除して、今よりも状況が悪化するようなら元に戻すという手もある。
それ以前に、サーシャは大丈夫で、何故リーンはダメなのだろう。
ヒロインだからと言う理由でサーシャがokなら、リーンも大丈夫な筈だ。
俺に惚れているという点でも同じことが言えるだろう。
俺ではサーシャとリーンの線引きが分からない為、鞘華に聞くことにした。
「鞘華、同じヒロインなのにどうしてリーンはダメなんだ?」
「……リーンって私達より年上よね?」
「過去の話からするに年上だと思う」
「私達が居る世界って、エッチなゲームの中よね?」
「そうだな」
「それじゃあ正樹がリーンに取られちゃうじゃない!」
「ちょっと待て! どうしてそうなるんだ?」
「正樹、年上のお姉さん好きでしょう?」
「えっと……」
「監視カメラで見てたんだから! いつもお姉さんキャラから攻略してたの知ってるもん!」
「やっぱり見てたのか!」
「それに、ここがエッチなゲームの中だし、年上のお姉さんに迫られたら正樹がそっちを好きになっちゃうかもしれないじゃない!」
俺がゲームをプレイしていた所を見ていたのは驚いたが、鞘華がリーンを拒んでいた理由が分かった。
俺の好きな年上お姉さんであるリーンに、俺が惚れてしまうんじゃないかという心配。或いは嫉妬なのだろう。
鞘華の言った通り、お姉さんキャラは大好きで、いつも姉キャラから攻略していた。
しかし、それはゲームでの話だ。
理想と現実での好みは別である。
それを鞘華に理解して貰おうと、鞘華に諭す様に話す。
「確かに俺はお姉さんキャラが好きだ。でもそれはあくまでゲームでの話だ」
「ここはゲームの中よ!」
「そうだな。でも所詮ゲームなんだよ。二次元と三次元は別だ。ゲームでお姉さんキャラが好きだからと言って、現実でもそうとは限らないだろ?」
「それはそうだけど……でも、エッチな事を正樹がされるのは嫌!」
「だったら俺にエッチな事が出来ない様にプログラムを弄ればいい。サーシャみたいに俺への気持ちだけ残しておけばクリアにも影響はでないだろう」
「それでも……ううん。そうね、試しにやってみましょ」
リーンに俺にエッチな事が出来ない様にした後、それが不自然に思われない様にもプログラムを弄った。
プログラムを弄った事でリーンに何か影響が出ていないか確認する。
「リーン、何か変わった事は無いか?」
「変わった事ですか? 特に無いよ?」
「そうか、変な事聞いて悪かったな」
一応鞘華にも確認する。
サーシャの時に、変化に気づいたのは鞘華だからな。
「鞘華の目から見てどうだ?」
「ん~、何だか口調おかしくない? それに雰囲気も変わった気がする」
俺には雰囲気の変化は今の所感じられないが、鞘華が指摘するのだから変わっているのかもしれない。
「サーシャはリーンの事で何か気づいた事とかあるか?」
「マサキ様に対する言葉遣いがややフランクになったと思います」
サーシャも変化に気づいたみたいだ。
二人が気づいた変化が良い方向に向かっていればいいのだが。
「どうだ? リーンとは上手くやれそうか?」
「わかんない。ちょっとリーンと話させて」
そう言って鞘華はリーンに話しかける。
「正樹の事は今でも好きなのよね?」
「ええ、好きよ」
「正樹と、その、エッチな事したいと思う?」
鞘華がとんでもない事をストレートに聞いた!
しかし、リーンはその質問に対して少し微笑みながら
「ふふ。マサキ様は好きだけど、弟の様に感じてるからそんな事しないわ」
「っ!? 本当に?」
「ええ、本当よ。だからサヤカちゃんが心配する事はないわ」
「さ、さやかちゃん?」
「あれ? ダメだったかしら?」
リーンの言葉を聞いて、鞘華はぐるりと首を回し、俺を見てくる。
サーシャの言った通りフランクになってるな。
こちらを向いた鞘華が問いかけてくる。
「ねぇ、なんか性格変わってない?」
「プログラムを弄った影響かもしれない。でも、これで鞘華は安心だろ?」
「それはそうなんだけど……」
今回は俺から見ても変化しているのが分かる。
なんというか、ふんわりした雰囲気になっている。
それに俺の事を弟の様に感じてるとも言っているしな。
これでは俺の好きな姉キャラじゃないか!
さっきまでのリーンも妖艶な感じの年上お姉さんだったが、俺としてはこちらの方が好みである。
鞘華には口が裂けても言えないけど。
決してやましい事があるからではなく、鞘華を心配しての事だ。
ここで俺が、こっちの方が好みなんだ。等といえば、話が振り出しに戻ってしまう。なので、敢えて言わないのだ。
俺と鞘華がコソコソ話していると、リーンが話かけてきた。
「お話は終わったかな?」
「あ、ああ。鞘華は今の状態のリーンはどうだ? 一緒に旅できそうか?」
「えっと、大丈夫……だと思う」
「よかったぁ。これからよろしくね、サヤカちゃん!」
「え、ええ。よろしく」
これで一件落着かと思いきや、サーシャが不満を漏らした。
「リーンはフランクに接しすぎなのではないですか? サヤカ様の事をサヤカちゃんなどと呼んでいますし」
「鞘華が嫌がってる訳でもないし、いいんじゃないか?」
「ですがサヤカ様は第一婦人ですので、やはりサヤカ様と呼ぶべきです」
俺とサーシャが話していると、リーンが話しかけてきた。
「どうかしたの?」
「いや、ちょっとな」
「貴女の事を話していたのです。馴れ馴れしく接しすぎだと」
「馴れ馴れしいかな? どう思う? マサキ様」
「俺は別にいいと思ってるよ」
「そうだよね~」
「貴女はマサキ様に買われたのですよ? マサキ様は勿論ですが、第一婦人であるサヤカ様にも敬わなければなりません。サヤカちゃんとは何ですか!」
「そうね、私はマサキ様に買われたわ。でも同時に自由に生きろとも言われているの。だから私はマサキ様に着いて行くし、奥さんであるサヤカちゃんやサーシャちゃんとも仲良くしたいと思ってるの。私は妻ではないからサーシャちゃんの言っている序列の範囲外だから仲良くして欲しいな」
「確かに範囲外ですが……」
きっと奴隷時代から主人を敬う様に躾けられたのだろう。序列に関してもそうに違いない。現にサーシャは鞘華にライバル意識を持っているが、鞘華の事はサヤカ様と呼んでいる。
リーンがちゃん付けで呼ぶからといって敬っていないかというとそうでもない。
鞘華やサーシャはちゃん付けで呼ぶが、俺にはマサキ様と呼んでいる。
序列とは関係ないリーンは鞘華とサーシャは同性の友人の様に思っているのかもしれないが、俺に対してはきちんと主人として敬っているのだ。
「なぁサーシャ。一応俺には様付けで呼んでる訳だし、それで納得できないかな?」
「分かりました。マサキ様がそう仰るのでしたら我慢します。ですが……」
サーシャは一旦言葉を切り、リーンに向き直り
「私の事はサーシャと呼び捨てで呼んでもらいます」
「うん。よろしくね、サーシャ」
やっと鞘華とサーシャの了解を得られた。
俺達が口論している間に、太陽はもう真上に差し掛かっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます