第16話 プログラム解除

「そうね、これからゲームクリアまで一緒に居なきゃならないんだしプログラムで動いてるなんて嫌だわ」

「なら、早速試してみるか」


 そう結論付けて鞘華と一緒に部屋をでる。

 部屋を出ると部屋に入る前と変わらず扉の前に立っていた。


「お話はお済ですか?」


 その言葉は俺に言った物なのか鞘華に言った物なのかは分からないが俺が答える。


「待たせて悪いな」

「いいえ、問題ありません」

「試したい事があるからそこに立ってて貰えるか?」

「かしこまりました」


 プログラムを解除すると言ってもどの程度解除すればいいのだろう?

 最悪の場合、サーシャを攻略出来なくなってゲームクリア出来なくなる。


 プログラムでの強制行動を排除して自我を持たせてみるか。

 そう結論付けて俺はスキルを使った。


 今回はスキルがキャンセルされる感覚がなかったので成功しただろう。

 見た感じだと余り変化はみられないがプログラムの影響は無いはずだ。


「どうだ? 何か変わった感じはあるか?」

「はい」

「どう変わった?」

「マサキ様の子供が欲しいです!」

「は?」


 あれ? やっぱり失敗していたのかな。

 これじゃスキルを使う前と余り変わらない様な……。


 と、考えていると


「正樹~? これはどういう事かしら?」

「多分成功しなかったんだと思う」

「はぁ? 何言ってるの! 明らかに前と違うでしょ?」

「え? 何処が?」


 何やら不機嫌な鞘華が俺に詰め寄ろうとしたところでサーシャが俺と鞘華の間に割って入って来た。


「待ってください!マサキ様は何も悪くありません」


 以外な言動だった。


 今までも俺が鞘華に詰め寄られる場面は何度かあったが、サーシャは今までそれをただ傍観しているだけだった。

 それが今は俺達の間に割って入り、俺の弁護までしている。


 もしかしてスキルは成功していたのか?


「ちょっとどいてくれるかしら?」

「嫌です」

「正樹は私の夫なの。邪魔しないでくれる?」

「私だってマサキ様の妻です」

「でも第二婦人でしょ? 一番は私なんだから正樹を渡しなさい」

「確かに第二婦人ではありますが、愛に順番なんて関係ありません!」


 え? なにこの修羅場

 っていうかサーシャこんな子だっけ?


「私はマサキ様を愛してるんです! 例えサヤカ様でも譲れません」


 そう言って俺に抱き着いてきた。


「マサキ様、私は貴方が好きです。一生付いて行きます」


 そう言い、胸を押し付けながら潤んだ瞳で見つめてくる。

 こんな攻められ方をしたら男なんてイチコロだろう。


 俺以外ならな。


「ありがとう、サーシャ。でも俺は鞘華が好きなんだ」


 フラグをサバ折りする言葉だった。

 俺の言葉を聞いた鞘華は

「正樹……」


 と、瞳に涙を溜めながら呟いていた。

 サーシャも俺の言葉は聞こえたはずだが


「構いません、それでも私の気持ちは変わりませんので」


 あれ?


「元々一夫多妻制なのでマサキ様はそのままでいいと思います。私は私の気持ちを貫きます!」


 普通ならフラグバキバキのはずなんだけど、余計やる気になってしまっている。


 ハッ!?


 自我を持たせた事によって今まである程度抑えられていた感情が表に出てきてしまっているのでは?

 しかし、そこまでのフラグを立てた覚えが無いんだけどなぁ。


 俺が考え事している間も鞘華とサーシャは何やら言い合いしていたらしいが、俺がストップをかける。


「ちょっと待ってくれ!」

「何よ正樹」

「はい!」


 二人同時にこちらに向き直る。

 鞘華は不機嫌オーラ出まくってるし、サーシャは俺の言う事は聞いてくれているが


 なんだこのプレッシャーは!


「サーシャに聞きたい事があるんだけど」

「なんですか?」

「なんでそこまで俺の事す、好きなんだ?」


 どうしてそこまで俺の事好きなの? なんて聞く日が来ようとは。


「マサキ様が奴隷から解放してくださったからです。それにその後も私を一人の人間と扱ってくれまた。今まで他人にここまで優しくされたのは初めてです。だから私は一生マサキ様に付き添おうと思いまた」


 サーシャの言葉をきいてある程度納得できる部分があった。


 このゲームのヒロインは皆奴隷である。

 攻略するには奴隷であるヒロインを買わなければならない。


 恐らくこのタイミングからフラグやイベントを経てラブラブになるのだろう。

 しかし、先ほど俺のスキルによってプログラムされていたフラグやイベントが一気に無くなった。


 そして自我を持たせた事で本来フラグ回収する事でしかラブラブになれなかったのが、最初の奴隷を 買った時のフラグ回収だけで済んでしまったのかもしれない。


「鞘華と少し話したいから少し待っててもらえるか?」

「ちょっとだけですよ?」


 渋々といった感じで応じてくれた。

「話って何よ?」


 未だに不機嫌オーラが出ている鞘華に俺の考えを伝えた。


「それが本当だとしたらプログラム解除しない方がよかったのかも」

「いや、プログラム解除しておいてよかったよ」

「そんなにラブラブになりたかったんだ?」

「違くて、解除しなければイベントやフラグ回収する事になってたんだから」

「別にいいじゃない、地道にイベントクリアすれば」

「これはエロゲーだ。エロゲーのイベントはエッチするって事なんだよ」

「えっ!?」

「それらをやらなくて済んだのはラッキーと捉えるべきなんじゃないか?」

「そ、それはそうだけど、私にマサキ様は譲らない! とか言ってきたのよ?」

「俺は鞘華が好きだとはっきり伝えたし、しばらく我慢してくれないか?」


 鞘華は黙って考え込んでしまった。

 しかし、鞘華にばかり我慢させるのは良くない。


「鞘華がどうしても嫌ならスキルで感情を無くす事もできるけど」

「それは駄目!」


 鞘華が強く否定した。


「感情を無くしたらただの人形みたいになっちゃうじゃない」

「でもこのままでいいのか?」

「ん~、考えたんだけど、私前に言ったじゃない? 今以上に私に惚れさせるって。だからどんなライバルでも私負けないわ。だからこのままでいいわよ」


 やっぱり鞘華は強くて優しい


「それじゃ、サーシャと仲直りだな」

「別にケンカしてた訳じゃないけどね」


 サーシャへの対応も決まり二人でサーシャに向き直る。


「待たせて悪い」

「いいえ、大丈夫です」

「鞘華から話があるみたいだから聞いてくれ」

「はい」


 そう言ってサーシャは鞘華の方を見る。

 鞘華は一歩前に出てサーシャと向かい合い


「同じ男の人を好きになった同士仲良くやりましょ」


 サーシャはキョトンとしている。

 だが鞘華は尚も続ける。


「ただし、抜け駆けは無し! 正々堂々勝負よサーシャ!」


 鞘華の宣戦布告を受けたサーシャクスリと笑い


「わかりました。その勝負受けて立ちます」


 よかった、これで修羅場は回避できた。

 と、思った瞬間サーシャがとんでもない発現をした。


「ですが、昨夜はサヤカ様がマサキ様に抱かれたのですよね?」

「へぁ!?」


 驚きすぎて変な声を出す鞘華


「な、何言ってるの? 私たちはまだそんな関係じゃ……」

「先ほど裸で出てきましたし、何より足取りが普段と違います。破瓜の痛みがまだ残っているのでは?」

「まだ痛いのか ?気づいてやれなくてごめん」

「正樹まで! もう誤魔化せないじゃない」

「あ、悪い」


 昨夜はやっぱり無理してたんだな。

 大丈夫だからって言葉を鵜呑みにし過ぎた。


 次からはもっと優しくしよう。


「バレてるみたいだから認めるわ。私は正樹に抱かれたの。正樹の意思でね」

「やはりそうでしたか。抱く抱かないはマサキ様が決める事なので文句はありませんが……」


 一端そこで言葉を区切り、俺の方を向く


「私もいつか抱いてくださいね?」


 満面の笑顔でプレッシャーをかけてきた。

 こうして騒がしい朝が終わった。

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