第18話 別れ・・・告白

 俺は図書室の前にたどり着き、息を整えた。

 ドアの前に立ち、生唾を飲みこみ、意を決して扉を開けた。



 すると、図書室の窓から外を眺めている杏南を発見する。

 杏南は扉の音に気づき、こちらへ振り返った。


「俊太…」

「っよ…」

「何?あんた何しに来たの??」

「何って。会いにきたに決まってんだろ」

「は、はぁ?意味わかんない、大体ねあんたの顔なんて見たくないって前にも言ってh」

「たいちから手紙を渡された。それで、ここに来た。」

「…手紙読んだの??」

「ああ…」

「そっか…」


 しばしの沈黙が流れ、俺は心と決めた。


「なあ、杏南…俺は」

「ああ、待って!今好きとかアメリカに行くなとか言われても私困るし、私の決心は変わらないから。」

「杏南…」

「私が決心固いの知ってるでしょ?」

「…ああ」


 そうだ、杏南は昔から決めたことはずっと曲げずに貫き通してきた奴だった。たとえ幼馴染の俺が何を言っても、彼女は言うことを聞かないだろう。

 俺は、杏南の覚悟を感じ取り、杏南が立っている窓の方へと向かった。

 俺が杏南の方へ向かい、お互いに何となく窓から夕陽を眺め、たそがれた。


 校舎から見える夕焼けは、外に見える雑木林の上からいつものように沈もうとしている。だが、いつもの夕焼けよりも、より一層綺麗に見え、何か込み上げてくるものがあった。

 すると、杏南フフっと笑い、息を吐いた。

「ほんとに、俊太とはいろんなことがあったよね。」

「そうだ…な」


「悪ふざけしたり、一緒に遊んだり、時には喧嘩したり…ほんとに楽しかったなぁ~」


 そんなことを、杏南は窓の外のどこか遠くの方を眺めながら懐かしんでいた。


『キーンコーンカーンコーン』


 すると、下校時刻が近づいている予鈴のチャイムが鳴った。


「あ、もうこんな時間!私もう行かないと…」

 杏南は時計と確認して、俺の方を見た、ついにお別れの時だった。俺はただただ杏南をした唇を噛みながら見つめることしか出来なかった。


「何その辛気臭い顔、やめてよ。あんたらしくない。」

「それは、だって…」

「私を見送るときは笑顔で見送って、いつもそうだったでしょ?♪」


 そうだ、喧嘩をしたときでも、最後にはいつも仲直りして、最後は笑顔で挨拶を交わして帰る。それが俺と杏南だ。


「うん、わかった」


 俺はコクリと頷いて杏南に向かい合った。


「気を付けて行ってこいよ。」

「うん。」

「体には気を付けるんだぞ!」

「わかってる。」

「ときどきはこっちに連絡するんだぞ」

「お前はお母さんかっつーの(笑)」

「へへ。」



 少しの沈黙の後、杏南が意を決したかのように息を吐いた。


「じゃあ、行くね。」

「おう。」


 杏南ドアのほうへ歩き出す。


(どうしよう、杏南が行ってしまう。俺はこのままでいいのか??)


 すると杏南の足が止まった。そしてこちらを振かえった。


「最後に一言!」

「あ、ぁぁ」

「俊太…好きだよ…」

「?!」


 杏南は素直な今の気持ちをとびっきりの笑顔で俺に言ってくれた、俺もそれに声えなくてはならない。目から零れ落ちそうなものを手で拭い。めいいっぱいの笑顔で返した。


「俺も、好きだ!」


 すると、杏南はニッコリと笑って涙をこらえながら、


「ありがと♪バイバイ」


 と言って旅立っていった。


 俺は杏南の姿が見えなくなるまで、ずっと目に焼き付けるようにその後姿を眺め、そして、ドアがバタンと閉まり、見えなくなった。

 そして、これが俺にとって杏南の姿を見る最後になってしまった…

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