第17話 手紙・・・あの場所で

 俺は杏南からの手紙を握りしめ、食堂を後にした。

 杏奈からの手紙の内容をもう一度頭の中でフラッシュバックさせていた。



 ◇



『俊太へ、こんな感じで俊太に手紙書くなんて、なんか恥ずかしいね。

 でも、どうしても伝えたいことだし、あんたすぐ人の言ったこと忘れるから書くね。

 俊太、あんたと一緒に過ごした日々はほんと楽しかった。数えきれないくらいバカなことたくさんしてきて、迷惑もたくさんかけて、最後にはふざけた俊太が私にちょっかい出してきて、私が怒ってばっかりだったけど、そんな毎日が本当に楽しかった。

 だから、最後に一つだけ、今まで言えなかったことを書くね…

















               好き


















 えへっ、やっぱり手紙でも照れちゃうな…

 この手紙をあんたが読むときには、もう会えないとは思うけど…でも、もう1回だけでも会いたかたなぁ~。

 もし…もし会えるなら…最後の日の放課後、で待ってるね♪

                      

 杏南より』



「あのバカ」


 俺は顔がやけどしそうなほどに熱かった。おそらく、頬は真っ赤に染まっているのだろう。



 そんなことを思いながら、俺はを目指して走り続けるのだった。



「といって、つい教室に来たのはいいものの、ってどこだ?」


 俺はについて全く見当が付いていなかった。何も考えずに気が付けば教室で一人佇んでいた。

 辺りを見渡すが杏南はいなかった。おそらくここではないのであろう。

 俺は再び教室を後にして、廊下に出た。

 すると、廊下で顔見知りを発見した。


「あ!ゆうか部長」


 ゆうか部長を見つけ、俺は部長の前まで慌てて駆けていく。


「あ、俊太君。どうしたのそんなに慌てて。」

「はぁはぁ、杏南を、杏南を見ませんでしたか?」


 ゆうか部長は、顎に指を置きながら考えると、何かを思い出したかのように俺の方を見つめた。


「ああ、杏南ちゃんなら、さっき向こうの方ですれ違ったよ。」


 ゆうか部長は校舎の反対側の方を指さした。


「ありがとうございます」



 ◇



 俊太君は私がそう言うと、その情報を聞き、一言礼を言ってすぐに走りだしてしまった。


「あ、ちょっと」


 必死に走りだしていく俊太君を見て、私は思わずニコッと微笑んで姿が見えなくなるまで見送るのだった。



 ◇



「イタイイタイイタイイタイ。わかったから!勘弁してくれ栗!」

 俺はあの後、栗という追ってから逃げながら変装を剥がし、いつもの橋本慶太の姿に戻り、最終的に教室の前で栗に捕まった。今は栗に羽交い絞めを食らっていた。すると、その横を猛スピードで駆け抜けていく少年が一人いた。俺はその少年の姿を見て思わず声を発した。


「あ!…」

「ん?」


 俺が声を発すると、栗はなんだ?と言ったような感じで首を傾げて走り去っていく少年を見つめていた。


「がんばれよ、俊太。」

「わけわかんねぇことを言ってんじゃねぇ!!」

「イタタアァァァ!!ギブギブギブ!!」


 こうして俺は栗に反省するまで羽交い絞めをされ続けたのであった。



 ◇


 俺はゆうか部長に言われた方へと到着した、しかしどこを探し回っても杏南の姿はなかった。

 すると、階段の方から降りてくるみかやんに遭遇した。


「みかやん!」

「俊太君!」

「はぁはぁ、杏南…杏南知らない??」

「杏南?あぁ、さっきまで一緒にいたんだけど、最後に一人で行きたいところがあるっていって図書室の方に行っちゃった。」


 俺が尋ねると、みかやんから有力情報を手に入れることが出来た。


「わかった、ありがとう!」


 俺はみかやんに一言お礼を言うと、歯を食いしばりながら図書室への階段を登っていった。


 みかやんの方から「…頑張ってね、俊太くん」という声が聞こえたような気がしたが、俺は振り返ることはせず、ただひたすらに図書室への道を急いだのであった。

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