第12話 図書室での決意
「ねぇ。」
「ん?」
HRが終わったとある日の放課後、帰り支度をしていると、杏南に声を掛けられた。
「ちょっと寄り道していかない?」
杏南は少し神妙な面持ちで俺に言ってきた。
「まあ、別にいいけど…」
俺は机から立ちあがり、何も言わずに歩いていってしまう杏南の後をついていった。
杏南の後をついていくと、夕日が差し込む図書室についた。
図書に室にはほとんど人はおらず、図書委員が受付に一人いるだけで閑散としていた。
「なんだよ、いつもの場所じゃん」
杏南はいつも放課後は図書室でよく読書や勉強をするのが日課であるので、よく俺も放課後に一緒に行っている場所であった。
杏南は振り返るとキョトンとした表情をしながら、
「うん、ダメ…??」
と首を傾げながら言ってきた。
「いや、別にかまわないけど・・・」
俺が首に手を当てて、そっぽを向いていった。
しばらく沈黙が続いた…
俺は、いつもの杏南とは少し違うような気がした。いつもよりも口調が優しいというか、毒舌さがない感じだ。
俺が杏南の様子を不思議そうに伺っていると、杏南は俺の方を真っ直ぐな瞳で見つめ、信じられない一言を口にした。
「俊太、私ね。アメリカに留学する」
「…え?」
図書室の開いていた窓から、風が吹き込んできて、杏南の髪をなびかせた。杏南は覚悟を決めていると言ったような表情で顔色一つ変えずに髪をなびかせながら俺をずっと見つめていた。
俺は、その杏南が言ったことに対して驚きを隠せないのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。