第7話 学内一のイケメン

「おーい!食券買いに行こうぜ!」

「おう、行こう行こう!」


 男子生徒の元気な声が聞こえてくる。


 今日はたいち、杏南、みかやん、ゆいゆいと5人で食堂に昼食を食べに来ていた。

 俺たちは昼食を机に並べ、おしゃべりに興じながら昼休みを満喫していた。


「ねぇ…まだかな…」

「いや、もうすぐ来るはずだわ!」


 食堂は、何故か今日に限って大混雑しており、特に女子生徒が多い気がする。席に座れずに、立ったままソワソワと廊下の方を見ている生徒も多数見受けられた。


「なんか今日は人が多いな…」

「そうかな?いつも通りだと思うけど…」


 俺とたいちがそんなことを話すと、机がガシャンと鳴った。音の方へ顔を向けると、そこにはみかやんが驚いたような表情を浮かべていた。


「何言ってんの?今日はあの方が来るのよ!」

「あの方??」

「あの方??」


 俺たち二人がみかやんに質問をすると、杏南がため息をついた。


「あんたら、ほんとに何も知らないのね」


 杏南は手を左右に広げ、呆れたような仕草を取った。


「校内ナンバー1イケメン、慶太先輩よ!」


 ゆいゆいが目を輝かせながら言い放った。


「慶太先輩?だれ?」

「…」


 俺はポカンとしながら説明を求める。たいちは、俯いて黙りこくってしまった。


「俊太、あんたはもう少し情報を得たほうがいいわよ。橋本慶太先輩、最近TVにも出演している、うちの学校のカリスマアイドルよ!」


 杏南があきれた表情をしつつ、俺に説明してくれた。


「キャー!!♡」


 すると、食堂の入り口の方から女子生徒の黄色い歓声が聞こえた。


「ほら、来たわよ」


 俺が食堂の入り口の方に顔を向けると、そこには、階段を颯爽と降りてくる。爽やかな雰囲気を全面に醸し出した、黒髪パーマのジャニーズ系イケメンだった。

 あのオーラを隠しきれていない感じはまさしく、カリスマアイドルにふさわしい逸材であった。


「へぇーあれが噂のねぇ~」

「…」


 俺が感心したように慶太先輩を眺めていた。たいちくんは、先ほどと同じように間にも発さずに俯いていた。


「あ!慶太先輩だぁー!」


 みかやんは席を立ち、キラキラと目を輝かせながら慶太先輩の方へ向かって言った。


「ちょっと、みかやん~」


 ゆいゆいもそれを見てみやかんを追いかけていった。


 俺は苦笑いを浮かべつつ、再び慶太先輩の方を見る。おでこを見せて、髪型をバッチリと決めて女の子たちににこやかに手を振っている彼を見て何故か俺は不思議と親近感を覚えた。


「あの人どっかで見たことあるような…」

「TVとかで見たんじゃないの?」

「いや、もっと違うようなところで見たような気がするんだよなぁ~」


 俺と杏南が会話をしている間も、たいちはずっと俯いたまま何もしゃべらない。


「ん?おい、たいち、どうした?」

「ん?いや、何でもない」


 手をヒラヒラさせながらたいちはアワアワとしていたが、すぐにまた俯いてしまった。

 俺と杏南は顔を見合わせて「ん?」と首をかしげるのであった。

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