第6話 入部動機

 とある日の放課後。

 俺は昆虫研究部の部室に入り。ゆうか部長の昆虫について語っているのをぼおっとしながら聞いていた。もちろん俺は全くといっていいほど、昆虫に興味がないので適当に相槌を打っていた。


「へぇー」

「俊太君聞いてる。」

「うーん」

「絶対聞いてないよね?」

「いや、だって正直に言ってあんまり興味ないし…」

「じゃあ、なんで昆虫研はいったんの・・・」


 ゆうか部長があきれ顔で、俺に尋ねてきた。


「いやーそれは。。。」


 俺は目線を逸らしながら、入部した経緯を語り始めた。



 ◇



 とある日のお昼休み、教室内にて。


「ぎゃーーごきぶりー!!!!」

「俊太助けてぇー」


 杏南が叫びながら一目散に俺の方へ走って来て、腕を思いっきり掴んだ。

 下を見ると、そこにはこちらへサササっと向かってくる黒い影があった。


「俺だってやだよー」


 そうこうしているうちに黒い影は、一度目の前で止まったかと思うと。羽を伸ばして一気に俺たちの方へ突撃してきた。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「うわぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


 その後、クラスの奴らで協力し、なんとか黒い影を撃退することに成功した。


「はぁ…死ぬかと思った…」

「はぁ…疲れた…」


 俺と杏南は、教室中を叫びながら駆け回ったせいで、ものすごく疲労困憊してしまった。

 ひとまず、後処理が終わるまで教室から購買へと逃げ込んでいた。


「俊太あんたさ、ゴキブリくらい殺せるようになりなさいよね。」

「ご、ごめん…」

「限定メロンパンはいかがですか~」


 今日は売り余っているのか、限定メロンパンを店員がプッシュしていた。


「まず、虫になれなさいよね」

「はい。」


 俺は元々小さいころから虫が苦手で、よく杏南とかにダンゴムシとか投げられて痛い目に合っていた。杏南も小学生高学年くらいから虫が気持ち悪いと思うようになったらしく、それ以来。大の虫嫌いになったのであった。


 そんな昔のことを考えていると、杏南はふと部活紹介の広告が貼ってある掲示板に目を通していた。


「あんたさぁ、これ入りなさいよ。」


 杏南がとある広告に、指を指していた。

 俺は、その広告を見る。


「はぁ?…昆虫研究部???」

「これに入れば昆虫にも慣れるでしょ??」

「え?嫌だよ、だって…」

「はいれ。」

「え?」

「はいれ。」

「メロンパンいかがですか~」


 こうして、杏南の無言の圧力により、俺。藤川俊太は昆虫研究部に入ることになったのであった。



 ◇



「…という感じで気づいたら昆虫研の入部させられてたわけですね」


 やれやれという感じでようやく入部動機をゆうか部長に説明し終えた。


「…俊太君…」

「はい…ひいぃ!!!」


 ゆうか部長はニコっと笑いながらも目は笑っておらず。むしろ、今にも何かが爆発しそうな雰囲気を出していた。


 このあと、部長に昆虫についての魅力を3時間も徹底的に叩き込まれた!

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