第5話 そっちの気がある!?幼馴染の友達
とある日の放課後、俺はゆいゆいに呼び出され、二人で無人の教室に来ていた。
ゆいゆいは真剣な表情で何も言わずに佇み、思い空気が漂っていた。俺は思わず生唾を飲み込んだ。
すると、ゆいゆいがふっと目線を俺に向けた。
「…ゴクリ」
「俊太君!相談があるの。」
「へ?俺に?」
「うん、杏南のことで相談があるの」
「杏南のことで?」
「うん」
真剣な表情を一つ変えずに、淡々とゆいゆいが杏南について相談があると、言ってきた。
「どんな悩み?」
「実は…」
◇
私は教室でいつものように杏南と、みかやんと、喋っていた。
「見てみてこれ!かわいかったから買っちゃった♪」
「うわーかわいい~」
「ねえねえ、杏南も見てみて!」
「うん、かわいいね」
杏南は適当な相槌を打ちながらスマホを無心に操作していた。
「・・・」
「・・・」
私は重くなった凍り付いたような空気を戻そうと、必死に話題を変えた。
「あ、そうそう!今度この辺の近くでお祭りがあるらしいよ!」
「お祭り??行きた~い♪」
「ねぇねぇ、杏南もお祭り行くでしょ?」
「ま、気が向いたら今度ね」
杏南は表情一つ変えずに、先ほどと同じようにスマホを無心に操作しながら、適当な相槌を打った。
「・・・」
「・・・」
◇
「これ、ひどくない!?せっかくみんなで話そうとしてるのに、一人でスマホをずーっとやってるんだよ!?」
「確かに・・・それはひどいな。」
「俊太くん!どうやったら私は杏南の気を引くことができると思う?」
ゆいゆいの言い方に少し引っ掛かりを覚えたが、俺は必死にゆいゆいの相談に応えようと考えた。
「うーん、難しいな…まあでも、杏南がスマホで何してたかは知ってるのか?」
「新しいゲームとか言ってたような・・・」
「それなら、仕方ないでしょ。」
「何で仕方ないの!?」
「いや、まあ、杏南のことだしな、あいつ一つのことに嵌ると周りのこと見えなくなるタイプだから…」
「・・・ぐすん」
ゆいゆいの鼻をすする声が聞こえる。ゆいゆいは顔を俯かせていた。
「???ゆいゆい・・?」
俺がゆいゆいを見ると、ゆいゆいは今にも泣きだしそうな表情になっていた。
「ゆいゆい?!どうしたの?」
「いや、ごめんね…ただ、杏南は私よりもスマホゲームほうが大事なんだなって思うと、悲しくなって涙が…」
「そんなことないよ、杏南だってゆいゆいのことは大事に思ってる」
「でも、杏南は結局私がいるところでゲームを…」
「いや、だからそれは…」
俺が必死になだめようとしていると、俯いていたゆいゆいが急に頭を上げた。
「だって、私知ってるんだからね!杏南が俊太君といるときだけはスマホゲームも何もやらないで仲良く話してること」
突然俺のことを言われ、混乱する。
「え?そうなの?」
「そうよ!俊太君ってホントに鈍感だね…」
「うぅ…」
そうだったのか…おい杏南…頼むから友達を大切にしてやってくれ…
「なんで私より杏南は俊太君のほうがいいんだろう、私のこといっぱい見てほしいのに、私と付き合ってほしいのにどうして振り向いてくれないの??」
「ん!??ちょっと待ってゆいゆい。」
「?」
ゆいゆいは、キョトンとした表情で俺の方を首をかしげながら見つめていた。
「あの~、一応確認だけど、それってどういう意味?」
「え?言葉のままの意味だけど?」
ゆいゆいは、あっけからんとした顔で言って見せたので、俺は思わず生唾を飲みこみ、意を決して尋ねた。
「それって…ゆいゆいが杏南の彼女になりたいってこと??」
「そうよ!」
「…え?…えええ???」
え?どういうこと?ゆいゆいってそっちの気があったの!?
俺が混乱していると、ゆいゆいが口角を上げプルプルと体を震えだす。
「フフフ…ちょうどいい機会だから言っておくわね。私はね俊太君、あなたを杏南から引き離す、そして杏南を私だけのものにする!わかった??」
「…は?」
「いい?これは私からの宣戦布告よ覚えておきなさい!」
「え…ちょっと!」
ゆいゆいは俺に指さして、とんでもない爆弾発言を宣言してその場を去っていってしまったのであった。
教室のドアがバタンと閉められ一人教室に俺は取り残された。
「い、意味わかんないんだけど…」
しかしこの時俺は、これがのちに俊太を苦しめるものとなる、単なる序章であるとは、思ってもいなかった。
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