第3話 救世主


 俺は杏南に脅されて、メロンパンを購買へ買いに来ていた。

「うわー、並んでるなぁー」

 購買部にはお昼ご飯を求めに来た生徒たちでごった返していた。

 週に1回だけ、限定メロンパンを販売しており、今日がその販売日であった。

「限定メロンパンいかがでしょうか?」

「買えるかなぁ…」


 俺は限定メロンパン専門のレジに並んだ。まだ、見た感じは残っているのが見えるのでギリギリかもしれないな…そんなことを思いながら順番を待っていた。


「ありがとうございました~」


 前の人が無事に限定メロンパンを購入して、俊太の番になった。


「すいません、完売しました!」

「え、うそでしょ?」

「本当でーす!」


 メロンパンを販売していた店員さんが申し訳なさそうな声で言ってきた。

 俺はその場でひざまずいた。終わった・・・


「っへ、これも日頃の行いの悪さだなこりゃ…」


(でも。杏南に売り切れてだって言ったら殺される…どうしたらいいんだぁ!)


 俺は膝をつきながら頭を抱えていると、遠くの方に何かが見えた。

 それは、限定メロンパンを大量に買い込んでいる男だった。


 俊太は頭をフル回転させて考えた。

(杏南に怒られる、杏南に叱られる、杏南にメロンパンを渡したい、杏南にメロンパンを食べさせたい、杏南の美味しそうな顔が見たい、杏南の喜んでいる顔が見た、杏南の笑顔が見たい、杏南…)



 ひらめいた!

 俺は顔をバっと開けて目を見開いて、限定メロンパンを大量買いしていた男の人の後を必死に追いかけた。


「すみません!!」

「え?」


 猛スピードでその大量買いをしていたメガネの根暗そうな男の人の元へ近づいていき、声を掛けた。その男の人は何事?と言ったように俺の方へ振り返った。

 俺は勢いそのままに地べたに座り込みスライディング土下座をして見せる。


「その、限定メロンパン僕に一つください!有村…彼女が待っているんです!お金はもちろん払うんで、どーかお願いします!」


 俺は渾身のスライディング土下座を廊下で披露した。

 周りの人がヒソヒソと何か話しているようであったが全くに気ならなかった。


「…」


 すると男は俺の方へしゃがみこんだ


「やめてくれ、頭を上げてくれ。」


 俺は頭を上げた。


「もっていけ」


 すると、男は限定メロンパンを1個袋から取りだして俺に差し出した。


「でも…」

「いいから、持っていけ」

「俺…」

「俺はこの限定メロンパンを毎週買っている、大好きな商品だ、だから信じている、この商品を買うやつに悪い奴はいないってな!」

「…ぁぁりがとうございます!」


 俊太は男の人から限定メロンパンを受け取り、すぐさま立ち上がり深々と頭を下げた。


「本当にありがとうございます。この恩はいずれ必ず返します。」

「いいさ、早くその彼女の元へ行ってやりな」

「はい!」


 そして俺は、杏南の元へ走って行く。


「ふん。がんばれよ、見知らぬ男よ。」


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