第2話 素直になれない
キーンコーンカーンコーン~
午前中の授業が終わり、休み時間になった。すると、たいちの元へみかやんが近づいてきた。
「たいち、ちょっといいかな??」
「ん?どうしたの??」
「いいからちょっと来て!」
みかやんはたいちの腕を掴んで、教室の後ろの方へ引っ張っていった。
あの二人は小学校の頃からの知り合いで何かと仲がいいのだ。
みかやんがたいちに耳を近づけて、何かを話していた。
そんな様子を眺めていると話が終わったのかお互いに距離を離した。
「あ!OK」
「よろしくね♪」
二人は確認するようにアイコンタクトを取り、別れるとたいちが俺の方へ向かってきた。
「ごめん、俊太!俺この後みかやんに頼まれごとされちゃって、昼一緒に食べれそうにないや。すまん!」
「そっか、わかった。」
「じゃあ、行ってくる!」
「おう…」
たいちは机の横に置いてあったリュックを背負う。リュックのひもの部分を両手でつかみながら前かがみになりながら小走りで教室を出ていった。
俺がみかやんの方を見ると、ニコニコとしながらたいちにヒラヒラと手を振っていた。
「…」
俺は苦笑いしながらその様子を眺めていた。おそらく、またみやかんがたいちをパシリに使ったのだろう。たいちは、みかやんに頼み事をされると、喜んですぐに受けてしまう癖があり、今回もみかやんの手の上で踊らされているようだった。
「はぁ…」
思わず哀れみともいえるため息が出てしまう。
「どうしたの?そんなひどい顔して」
突然に声を掛けられ。ビクっと反応して振り返る。すると、そこには杏南が不思議そうな表情を浮かべながら立っていた。
「いや、なんでもないよ」
俺は軽く杏南を受け流して大きく伸びをする。
「さてと、おれも、飯いくかな。」
「で、俊太」
「ん?どうした?」
再び杏南に呼ばれ、振り返る。
「あれ、買ってきてくれた?」
「え?何を?」
「何って、決まってるでしょ!私が朝から頼んでるこのメロンパンよ、買ってきてって頼んだでしょ?」
「………あ!!!」
ぶちっという効果音が聞こえた。杏南は眉間にしわを寄せながら、口角を上げて俺を睨みつけていた。
「!?」
「わかってるわよ、ね…?」
俺は冷や汗をたらたらと掻きながらプルプルと震えている杏南に向かって大きく頭を下げた。
「ごめんなさい、ごめんなさい!!今すぐに買ってきやす!!」
俺はメロンパンを買いに、財布を持ち、一目散に教室を出ていった。
*
俊太は覚えるように教室から走り去っていった。
少し怒っただけなのに、あんなに怯えて買いに行くなんて…もうちょっと私に対しての態度を改めてくれてもいいんじゃないかな、ってまたやっちゃった…
俊太とただお喋りを今のうちにいっぱいしたいだけなのに、どうしても正直になれなくて上から目線の態度を取ってしまう。どうして素直になれないんだろうか。そんなことを思い、はぁ…と頭を抱えながら、私はため息をついた。
「杏南♪」
「杏南♪」
すると、クラスメイトで友達の、みかやんとゆいゆいがニヤニヤとしながら私に声を掛けてきた。
「ん?どうしたの?」
「また俊太君にあんなこと言って~」
「ホントに杏南は素直じゃないよね~♪」
私の内心を見透かしているかのように二人は悪い笑みを浮かべていた。私は、罰が悪くなりフイっとそっぽを向いてしまう。
「ふん…」
「たまには、俊太君にも優しくしてあげたほうがいいんじゃないの?」
ゆいゆいの言うとおりだ、俊太にもたまには優しい態度で接してあげないと、このままじゃダメだ…
俯きながら私は昼休み中ずっと俊太のことを考えなくてはならなかったのだった。
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