第40話 絶体絶命
「で、どうするんだ? こいつの後始末?」
「私が少年の姿をしてる蛇の妖魔を噛み砕くので、和哉くんは体内から出てくるであろう妖力の核を破壊して下さい」
「分かった!」
月白が少年の首を噛み砕こうと、そして、和哉が妖力の核を破壊しようと、互いに準備を整えた時である。
「あははははははっ!」
甲高い少年の笑い声が廊下内に響き渡った。
「本当にこれで僕に勝ったつもりなの? 甘いんだよね〜」
月白に腹這いに組み敷かれている少年の首から上の頭部が右回転し始める。
「ひっ!」
「キャッ!」
その光景に神凪生徒会長と茜が悲鳴を上げる。
少年の頭部はぜんまい仕掛けの人形の様に、ギリギリと音を立てながら回転していき180度回ったところで止まる。丁度背中に顔がある状態となり、組み敷いている月白と目と目が合うこととなった。
「同じ妖魔なのに僕の邪魔をするなんて……ウザいんだよ!」
怪訝そうな顔をする月白に少年が口を開く。
「
少年の目が赤色に染まり、その目から紫色の光が発射され、月白の頭部から順に全身へと照射される。その紫色の光を浴びた部分か月白の身体は石化していった。
「月白!!」
茜の叫び声が空虚に響く。石化した月白はそのまま床にゴロンと倒れた。
「まずいな! みんなひとまず何処かの教室に入ってあの光を浴びないようにしろ!」
和哉の声に応じてみんな近くの教室に逃げ込む。
少年はゆっくりと立ち上がり、両手で180度回った頭部を元に戻した。
「さて、何処に隠れたのかなあ?」
両手を前に突き出し、教室に向けて蛇弾を放つ。蛇弾は廊下と教室を隔てるガラス窓を粉々に破壊し、木造の壁に教室の中がきれいに見ることができる丸い穴を開けた。
「御代志くん、何か良い方法はないですか?」
和哉たちは少年の放つ石化する光に対抗する手立てが無いまま、教室の教壇の後ろに隠れている。
「悪い! 何も思いつかねえ!」
和哉は神凪生徒会長にお手上げとばかりに両手を上げて答えた。
「そう……」
神凪生徒会長は俯き加減に少し考えてから顔を上げた。
「私と茜が囮になって別方向へ飛び出します。妖魔がどちらかに気を取られているうちに、御代志くんは妖魔に近づいて目を潰してくれますか?」
「えっ! 囮って、そんな危険な事! 下手したら石にされてしまうんだぞ!」
「それは百も承知です。それでも、ここでこうやって隠れているよりは少しはマシです」
「しょうがねえな」
神凪生徒会長の意を決した表情に押されて和哉は了解した。
神凪生徒会長の考えた作戦はこうだ。神凪生徒会長は教壇の右から、茜は教壇の左から出て、教室の前側と後ろ側で少年の気をひきつける。その間に和哉と浅葱は、後ろから少年に近づき石化の光を放つ目を潰す。
「では、行きます。3、2、1、GO!」
神凪生徒会長は合図と同時に飛び出し、それに合わせて茜が教壇から飛び出す。和哉が二人が出た後一呼吸置いて飛び出そうと準備をした時だった。
「僕にこんな小賢しい手が通用すると思ったのかな?」
頭上から声が聞こえてくる。見上げると和哉が身を隠している教壇の上に、少年が立って和哉たちのことを見下ろしていた。
「ジ エンドだね」
「くっ!」
少年の目が赤色に染まり紫色の光が和哉たちに伸びていく。
和哉は潔く負けを認め、足を投げ出して座り上半身を教壇に委ね、横に並んで座っている浅葱の手を握って紫色の光が自身に到達するのを待った。
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