第38話 最終形態
「和哉さま!」
その光景を見ていた浅葱が声を上げる。
「大丈夫だ! しかし、飛び道具とはな。妖力の核コアを体内に取り込んだのか」
「お前を真似ただけだよ。でも、今度は外さない!」
再び少年は右手を突き出し蛇弾を発射した。弾は真っ直ぐ、和哉の心臓に目掛けて飛んでくる。それを浅葱が和哉の前にエナジーウォールを張り弾き飛ばす。
「和哉さまは私が守ります!」
浅葱は和哉と少年の間に立ち、鋭い視線で少年を睨みつける。
「ふーん。じゃあ、これならどうかな?」
少年は左右両手のひらを前に突き出し、そこから十数発の蛇弾は発射される。放たれた弾はエナジーウォールに着弾し、エナジーウォールを消滅させた。
そして、エナジーウォールで防ぎきれなかった残りの弾が、浅葱に向かって飛んでくる。
「浅葱! こっちだ!」
和哉は体を半身ずらし、浅葱の手を取り自分の方に引き寄せる。弾は浅葱の居なくなった空間を通り、壁に無数の穴を開けた。
「浅葱! 一旦引いて体制を立て直すぞ!」
「はい! 和哉さま!」
和哉は右手にある金色の銃で、少年の姿をした蛇の妖魔に弾幕を張った。
そして、浅葱の手を引き、廊下を二階に下りる階段のある方向へと走った。
「逃がすか!」
少年は逃げる和哉たちを追いかけながら蛇弾を放つ。放たれた蛇弾は、走っている和哉たちの少し後方の廊下、壁に着弾し次々と穴を開けていく。
「無茶しやがる!」
後方を振り返りながら、和哉は校舎が穴だらけになっていく様を見て嘆息する。
和哉たちが二階に下りる階段にたどり着いたところで、下から登ってくる神凪生徒会たちの姿を踊り場で見つけた。
「御代志くん、妖魔の気配がしたけど……」
神凪生徒会の声を遮るように、和哉は階段の一番上から踊り場に飛び降りる。
「説明はあとだ! とりあえず下の階に逃げろ!」
和哉の声に呼応して神凪生徒会長たちは登ってきた階段を引き返す。そこへ階上にいる少年が蛇弾を放った。
間一髪、和哉たちと神凪生徒会たちの今居た階段の踊り場は、蛇弾によって足の踏み場も無い位に穴だらけになる。
「御代志くん! あの少年はなんなの⁉︎」
「蛇の妖魔の最終形態とでも言うのか。とりあえず、あいつは妖力の核を体内に取り込みやがった」
「何!」
神凪生徒会と一緒にいる月白が声を上げる。
「核を取り込んだだって! 何て事を……」
「どうしたの月白?」
険しい表情を見せる月白に茜が尋ねる。
「体内に取り込まれた妖力の核は体の中で成長して、やがては巨大なエネルギー体となりいずれ暴発する。このまま放って置けば被害は学園内に留まらず、この街の存亡にも関わってくる」
「それはまずいわね。何とか私たちで阻止しないと」
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