第35話 精霊界の女王 アリシア
僕の目の前の風景が一気に広がる。
水晶を敷き詰めて造られている様に清らかで、キラキラ輝いて、ファンタジー映画の宮殿を思わせる部屋に出た。
「お待ちしていました」
部屋の奥の玉座に座る女性が僕たちに声をかける。その女性は金髪で透き通るような白い肌に、青い瞳を持ち豪奢なドレスを身に纏っていた。
「アリシア様、未來くんをお連れしました」
ジョーカーはアリシアの前に出て、片膝をつき恭しく頭を下げる。
「お手数をおかけして申し訳ありませんね。ジョーカー」
アリシアは微笑みながらそう言うと、何が何だか分からずにぼーっと立っている僕に話しかけた。
「貴方が新未來ですか」
「はい」
「私は精霊界の女王アリシア ブランシュです」
ああ、この人が紅緋の言っていたアリシア様か……という事は僕は今精霊界に来ているのか? だとしたらどうして妖魔であるジョーカーがここにいるんだ?
僕の困惑している様子を見て、アリシアは不思議そうに尋ねた。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ、ここは精霊界ですよね」
「そうですよ」
「えっと、どうして妖魔であるジョーカーさんがここにいるのかと思ったんです」
「あぁ、その事ですか」
アリシアは意に介した様子も無く笑顔で答える。
「私とジョーカーとは旧知の仲なのです。まあ、詳しくは申し上げられませんが。それに今回は紅緋を助けて頂いたので、私としては感謝の気持ちでいっぱいです」
「勿体ない御言葉です」
ジョーカーはより一層頭を垂れた。
「どうですか? 少しは納得出来ましたか?」
「は、はい」
アリシアとジョーカーが知り合いだったという事は分かったのだが、ジョーカーに関してはより一層謎が深まったような気がする。
「では、本題に入りましょう」
先程までの笑顔から一転、アリシアは凛とした引き締まった表情で話し始めた。
「紅緋はここ、精霊界にいます。ただ、鏡の呪縛は解いたはずなのですが鏡から出て来ようとしません」
「何故ですか?」
「それは私にも分かりません。それで、貴方に来て頂いたのです」
「それで紅緋のいる鏡は今どこに?」
「こちらの奥の部屋にあります」
そう言って、アリシアは右側にある扉を指し示した。
「この先の部屋には貴方が一人で行って紅緋と話してきて下さい。そして必ず二人でこの扉から出て来て下さい」
「わかりました」
僕は力強く答えて真っ直ぐに扉に向かって歩く。真っ白で飾り気のない扉の、金色のドアノブに手をかけ部屋の中へと入った。
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