第34話 精霊界へ
放課後 私立翡翠高等学園 音楽室
「こういう経緯です」
「で、紅緋は今何処に?」
「私が今からお連れ致します」
ジョーカーはそう言うと、何か呪文を唱えながら音楽室の壁を指でなぞる。なぞられた壁には僕の読むことの出来ない文字が浮かんでは消えていき、その文字は丸い穴を造り上げた。その穴からいろいろな色の光が溢れ出し、帯状となって伸び、音楽室をさまざまな色のペンキをぶち撒けた様に彩った。
「それでは行きますか?」
ジョーカーが先に、僕は後から、壁に出来た丸い穴の中に足を踏み入れた。中は様々な色の光が不規則に飛び交い、まるで車酔いしたかのように気分が悪くなってくる。
「周りを見ずに正面の光源だけを見て歩いて下さい」
「はい」
ジョーカーは僕の様子を察したようで、声をかけてくれる。この気遣いに、僕はこの人は本当は良い人で、敵ではないのではないかと思ってしまう。
「ジョーカーさんは、どうして僕たちの為にこんな事をしてくれるんですか?」
「さーて、どうしてでしょうね。えーと、未來くんが可愛いからじゃあダメですか?」
「はあっ?」
僕はジョーカーの言葉に思わず後ずさった。
「あはははは、冗談ですよ。こんな冗談を言うといろいろな人に殺されそうですね。……殺らせませんけどね」
「じゃあ、何なんですか?」
「そうですねー。未來くんの力に興味があるのですよ」
「力……」
ジョーカーの言う力とは、ジョーカーと戦った時と、この間の僕が紅緋を失って暴走した時の力の事だろう。
「ジョーカーさんは僕の力の事を知っているんですか?」
「さあて、私も詳しくは知らないのですよ。ただ、私の知っている事は未來くんが力を持っている理由と、その力の源となっているのが何かってことだけで……」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
ジョーカーはさらっと言ったが、力を持っている理由と、力の源って、超重要事項じゃないか!
「ジョーカーさん! それを僕に教えて下さい!」
「残念ながら教える事は出来ません。今はまだ敵同士ですからね」
ジョーカーは僕の方に振り向いて、片目を瞑りニヤリと笑う。
「……と、どうやら着いたみたいですね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます