第27話 月白の怒り

「……和哉さま」


 浅葱は未來を抱きしめながら傷ついている和哉の姿を見ながら声にならない声を漏らす。

 和哉の衣服はぼろぼろで、そこから見える皮膚は真っ赤に腫れ上がり、無数の傷から大量の出血をしている。


「浅葱さん! どういう事なの? これは!」


 後方から大きな声が聞こえてきた。

 浅葱が振り返ると、そこに神凪生徒会長たちが来ていた。


「神凪さん! お願いします! 和哉さまたちを助けて下さい……」


 浅葱は神凪生徒会長に駆け寄り、手を握って懇願する。そんな浅葱を落ち着かせるように、神凪生徒会長は微笑みながらゆっくりと話す。


「浅葱さん、落ち着いて、何があったのか話してもらえるかしら?」

「はい」


 浅葱は今ここで起きた出来事を神凪生徒会長たちに説明した。


「そう。そんなことが……」


 神凪生徒会長は沈痛な面持ちでエナジーウォールの中にいる二人を見る。


「それで、漆黒というのは彼女のことか?」


 月白が漆黒の前に立ちはだかり鋭い眼光を放つ。


「貴女はこうなる事を知っていて行ったのですか?」

「そんな事! 私の知ったことでは無い! 私はルールに則って紅緋をジャッジしただけだ!」


「そうですか……ならば、今すぐにここを立ち去りなさい! 私の怒りが抑えられてるうちに!」


 月白は今にも跳びかからんとする自分の身体を抑えるように、ギリギリと音を立てながら歯をくいしばり漆黒を威嚇する。

 その月白の姿に後退りしながらも、意思の強い表情は変えようとはせず。


「わ、分かったわ。でも、私は間違っていない!」


 そう言い残すと漆黒は姿を消していった。

 月白は漆黒の姿を最後まで見届けてから、こちらに向き直り呟く。


「さて、どうするか……」


 青緑色のドーム状のエナジーウォールの中にいる自分を失っている未來と、未來の攻撃により傷だらけになっている和哉を見ながら苦しげに声を絞り出す。


「月白! 今すぐ自らを解放しなさい!」

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