第28話 白虎
茜は大きな声で月白に命じた。
「い、いや、それでは茜の生命の力が……」
月白が茜の命に抗う。
「私のことはいい! それよりも目の前で大切な人たちが苦しみ、傷ついていくのを見るのはもう嫌なの!」
「そうか、そうだったな。分かった。頼む」
ゆっくりと月白は茜の方を見て、優しく哀しく微笑む。その笑みに茜は満面の笑顔で答えた。
「封印せし御身の名、神凪茜の名において我が生の力と引き換えに、今、封印を解いて真の姿を現せ!」
「白虎よ!」
混乱を招いている屋上に、透き通るような澄んだ茜の声が一瞬の静寂を生み出す。
和哉は痛みに耐え、未來を抱きしめながら茜の言葉に驚愕した。
「白虎だって……!」
ドームの外にいる月白は十数倍に大きくなり、全身を青白い炎のようなもので包まれている。そして凛とした顔つきは紛れもなく神獣のものだ。
「少年たち、待たせてすまなかったな」
そう言いながら造作もなく、エナジーウォールで作り出されたドームを壊しながら中に入ってくる。
「和哉、よく未來を助けてくれた。あとは私が引き受けるから君は傷の手当てをしなさい」
「……分かった」
和哉は抱いていた未來の手を緩め、立ち上がろうとしたが、身体に受けた傷のせいでよろけて膝をついてしまった。そんな和哉を浅葱が慌てて助け起こし、神凪生徒会長のところに連れてくる。
和哉が助け出されたのを見届けてから、白虎は未來を自分の青白い炎で包み込んだ。青白い炎は未來の周りに立ち込めていた黒い霧を消し去り、白虎は未來に優しく語りかける。
「未來、目を覚ますんだ。まだ諦めるのは早い。紅緋は生きている」
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