第26話 黒い霧
朝 私立翡翠高等学園 屋上
御代志和哉はまだ目の前で起きた出来事を咀嚼出来ないでいた。
精霊が精霊を殺すなんて……。
そして何より大切な未來が壊れかけている。
未來は紅緋が映っていた鏡の破片の真上で膝を落とし、その破片を両手に握り締める。その握り締めた手からは血が止めどなく流れ、頭をその破片を持った手に当て動物のような叫び声をあげて泣いていた。
「未來!」
呼んでみたが反応が無い。完全に自分を失っているようだ。
そんな未來から黒色をした霧が立ち込める。
その黒色の霧は未來の身体から次から次と出てくる。そして、その霧に触れたものを破壊し始める。屋上の床を引き剥がし粉々にし、その下の鉄骨部分が剥き出しになり、範囲が徐々に広まっていく。
「ちっ、まずいな!」
和哉は未來のところに行き、背中から抱きしめて浅葱に命じる。
「浅葱! エナジーウォールで俺と未來を封印しろ!」
「えっ、でもそれでは和哉さまが……」
「構わない! このままだとここら一帯が未來の力で全て消滅してしまう。それに俺は未來の目を覚まさせなければならない!」
困った顔をした浅葱だったが、意を決して口を開く。
「エナジーウォール!」
青緑色のドームが和哉と未來を包み込んだ。和哉は少し安堵した顔を見せたが、未來の放つ黒い霧は、容赦無く和哉も攻撃した。
「未來! 目を覚ますんだ!」
和哉の制服はぼろぼろになり、鍛え上げられた肉体すら、無数の傷でいっぱいになっている。
でも和哉は諦めてはいなかった。和哉が未來のことを強く抱きしめた時にだけ、少し未來の攻撃が弱くなったからだ。
まだだ! まだ未來を取り戻すことが出来る!
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